ピンポンの推しキャラ話 -チャイナ編-

名スポーツ漫画「ピンポン」の推しキャラと推しシーンをつらつらと述べる回、第2回になります。前回のアクマ編はこちら ↓

さて、今回フォーカスするキャラクターは中国からの刺客、チャイナです。
名前の通り、彼は中国人のプレイヤーなのですが、母国で卓球界から落ちぶれてしまい、日本の高校へ雇われ選手として島流しにされます。チャイナは日本で自分の実力を示し、再び中国の舞台で返り咲くため、インターハイ優勝を目指します。

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落ちぶれたとは言え、チャイナは卓球が盛んな中国で凌ぎを削ったプレイヤーで、その実力は折り紙付きです。良くも悪くも、彼自身、自分の実力を自覚しているようで、日本の平凡な練習風景を見て「フォークダンスでもしているのか?」と嘲笑い、こんな場所で半年も練習すればプレイが錆びついてしまう、と言い捨てます。

こんな書き方をすると「自分の実力を鼻にかけた、いけすかねぇ野郎やんけ」と思われるかも知れませんが、この直後に、彼の素顔が垣間見えるかっこいいシーンが続きます。

部活での練習を見限ったチャイナは、ランニングに励む部員をよそに、同伴しているコーチと共に校舎の屋上に向かいます。そこで二人は、誰もいないはずの体育館で卓球をプレーしている音を聞きつけます(ちなみにこの時プレーしているのは主人公のペコとスマイルです)。彼らは音だけで二人のプレイヤーのプレイスタイルや実力、戦況までも読み取ります。更にチャイナは「カットマン(スマイル)はわざと負けてるな」と断言し、そのカットマンに興味を持ったチャイナは体育館へ足を運びます。

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このシーンの美しさは(チャイナの魅力とは直接関係ないのですが)実力のある第三者の観点から、ペコとスマイルの実力・戦術・関係性が語られている、という点にあります。チャイナの目線を通して、読者は主人公たちの関係性を窺い知れると同時に、チャイナ自身が、音だけでプレイヤーの実力を判断できる程の強者であることを理解します。そして、その強者であるチャイナが評価している主人公二人も、相応の実力者であることまで伝わってきます。このわざとらしくない解説が、漫画の導入として非常によく描けているな、と感心しました。

またそれだけでなく、この場面でチャイナは「こんなことならもっと早く自分の才能を見限るべきだった」「見苦しい真似してるな、俺は」など、意外にも自虐的なセリフを口にします。先述したように、チャイナは中国で落ちぶれた選手です。卓越した卓球技術を持つと同時に、最初から大きな挫折を経験した状態で、彼の物語は始まっています。前回お話したアクマは凡人として卓球の道に葛藤していましたが、チャイナは天才に一歩届かない秀才として描かれているキャラクターという事が、この段階で薄っすらと読み取れる形になっているのも見逃せません。

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チャイナの自信と不安、そして卓球の技術。彼の様々な要素を一瞬で読者に伝えてくれるこのシーンは、派手さこそないものの、漫画として非常に綺麗なシーンだと感じました。


さて、もう一つの好きなシーンは、それからしばらく話が進んだ後、2回目のインターハイでチャイナとペコが対戦するシーンです。

実は、先ほどの屋上のシーンの後で、チャイナはペコをスコンク(パーフェクト勝ち)で圧倒しています。この頃のチャイナは、自信溢れる発言や相手を挑発するようなセリフを繰り返しており、ペコが話しかけても無視するばかりで、歯牙にもかけないような態度でした。しかし、それから1年経ったこのインターハイでの対戦では、急成長を遂げたペコを前に、チャイナは勉強中の日本語を用いてペコと積極的にコミュニケーションを取ろうとします。

「覚えているか、アナタ」
「私と初めて試合した……アナタ、1点取れない、私から」

1ゲーム目を取られ、風向きの悪い戦況の中、カタコトの日本語でそう語りかけるチャイナ。今の彼には、中国語でしか話さなかった、自信満々のあの頃のようなプレッシャーは感じません。ここでの対戦描写はそう多くはありませんでしたが、ペコのマッチポイントでの最後の一言「清問 風間 同志好(風間によろしく)」だけは中国語で話しかけていたのも、素直な白旗のようで好感が持てました。

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この1年を通して、チャイナは高圧的なワンマンプレイヤーから、どことなく優しさを感じる好青年のように変貌を遂げました。もちろんそれは、彼がたどたどしい日本語で話していることも理由の一つでしょう。しかし、そもそも日本語を学び、相手とコミュニケーションを取ろうとする姿勢自体が、序盤の彼からは考えられないほどの変化なのです。母国語だけを話し、コーチとだけ対話ができればいいという思想の持ち主だったチャイナが、日本語を勉強し、最初は馬鹿にしていたチームメイトにもきちんと卓球を教えるような、真の意味で一人前の選手になったのです。1年ぶりに再会したコーチに対して「信じられないかもしれねぇけど、うちもけっこう強いチームになってきたんだ」と、少し嬉しそうに語り掛けるチャイナの姿は、選手というより、もはや指導者の雰囲気すら感じました。

主人公二人の成長の陰に隠れがちですが、チャイナもこの物語において大きく成長したキャラクターの一人です。作中での登場シーンは決して多くはないですが、試合前後に挟まれるコーチとのやり取り(これもかなり沁みるシーンなので是非読んでみてください)を含め、非常に魅力のあるキャラクターでした。

という訳で、ピンポンの推しキャラの語りはここまでとなります。文章だけでは伝えきれない魅力、そして何より主人公たちの成長が素晴らしい漫画なので、興味を持った方は是非読んでみてくださいね。
※アマプラでアニメと映画は見れます。どちらも非常に素晴らしい出来なので(アニメは未視聴ですがチョベリグらしいです)、こちらもご覧になってください。

◆映画:ピンポン
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◆アニメ:ピンポン
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それでは、最後までお読みいただきありがとうございましたー。


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