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【自作小説】来世はネコになりたい(6)
西沢と広瀬さんの話をまとめるとだいたいこんな感じ。
会社はBtoBで、社内用スケジュール管理アプリやタスク管理アプリを制作•販売している。
従業員数は30名程度、まだ起業されたばかり。
社外向けの広報動画をつくりたい。
まだ協力すると決めたわけではないが、こちらからも一応質問してみる。
「この広報動画というのは、誰をターゲットにどういう目的で作成したいものですか?」
西沢に敬語を使っているわけではない。
広瀬さんに聞いているつもり。
「そうですね、ターゲットはとにかく広くで。特にやっぱり当社の未来の顧客となってくれそうな方に当社を知っていただきたいと思ってます。あとは、できればリクルートの役割も兼ねられるといいな、とも思ってます」
どうやら西沢は聞き役に徹するらしい。
「それはちょっと詰め込みすぎですね。なるべく動画のターゲットや目的は絞り込めているほうがいいですよ」
一般的にビジネスでいわれているようなことをさらっと言ってみる。
こういう風に頭いい人風に見せるのは昔から得意だ。
「なるほど。では、リクルートの話はとりあえず置いておいて、まずは顧客獲得からですかね」
「わかりました。ちなみに顧客はどのような企業を想定されてますか?」
「そうですね、中小企業であまりスケジュールや業務の管理に人を割けないというお客様をターゲットにしてます」
その後もいくつか細々とした質問をした。
気が付けば、西沢たちが来てからも1時間以上の時間が経っていた。
「今日はこの辺にしときますか」
正直、これ以上休日の時間を削りたくない。
「そうですね、今日はありがとうございました」
「山田、ありがとう」
結局、僕と広瀬さんが動画の内容について話しているときに西沢は一言も話さなかった。
二人がなかなか席を立とうとしないのを見ていて、一応自分が先に席を立つことを待ってくれていると気付いた。
「コーヒー代を」
白々しく、財布を開ける。
「あっ、全然大丈夫です。お構いなく」
広瀬さんがすかさず言ってくれた。
「いえいえ、そんなの悪いですよ」
「いえ、全然気にしないでください。会社の経費にしちゃいます」
「わかりました、ありがとうございます」
僕は財布をしまう。最初から相手がコーヒー代を払ってくれるだろうと予想していたことは全く顔に出してないつもり。
僕が席を立って軽く会釈すると広瀬さんも頭を下げてきた。
「今後ともよろしくお願いします」
あっ、そっか。特に今後どうするかを明言はしなかったけど、ここまで来たら協力する流れだよね。
とりあえず、僕は広瀬さんに笑顔で返しておいた。
僕はつくり笑いとか苦手なんだよ。
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