【自作小説】来世はネコになりたい(2)
同期とは特に仲良くならなかった僕も、配属された部署の先輩とは仲良くなった。
仲良くなったとはいっても、休日に遊ぶとかそういうことはないのだけど、社内でも同期より部署の先輩と話してるほうが気が楽だ。
そんな僕にも、最近直属の後輩ができた。
ジェネレーションギャップとは言わないまでも、なかなか僕とは価値観が違う後輩でコミュニケーションにはそこそこ苦労している。
「先輩、研修中に講師の人に同期は大切にしなさい、って言われたんですけど、どう思いますか?」
それは僕も研修中に何度も聞いた話だ。
「どうかな、もう少し後になったら他部署の人とかかわることも多くなって大切なのかもしれないけど、今は特に重要性を感じてないね」
僕は歯切れ悪く答えた。実際、自分の気持ちを素直にそのまま言っている。
「そうですかー」
後輩はなぜこの質問をしてきたのかわからないが、返答は適当でその後この話題は続かなかった。
僕も新入社員の研修中に、人事の確か部長さんから同じことを言われたのを覚えている。
その部長さんも当時はあんまり同期の人と仲良くはなかったみたいで、笑いながら同期に言われたことを話していた。
「最近になって同期に、やっとお前が心を開いてくれた、って言われたよ。それからはちょこちょこ一緒に飲みに行ったりしてるんだけど、最初から仲良くしとけば良かったって思うよ。やっぱり同期のほうが話しやすかったり相談しやすかったりすることもあるからさ」
もちろん、僕も頭では理解できる。
他部署の同期のほうが相談しやすいこととかも出てくるだろう。
でも、僕はそんな話を聞いても腰を上げて実際に行動する気は1ミリもなかった。
新入社員の研修最後の日。
同期のみんなで輪になって、一人一人が同期に対してメッセージを送りあった。
3ヶ月生活を共にした同期に感謝を述べる者、部署に配属されてからの生活にエールを送るもの。
みんな、各々が自分の言葉でメッセージを言い合った。
僕はなんて言ったんだっけな。微かに記憶はあるけど、もう詳細を覚えていない。
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