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【自作小説】来世はネコになりたい(4)

「ニッシーが会いたがってるよ」

昼休憩中にフカシに話しかけられた。

昼休憩はご飯を食べた後は特にすることがないため、自席でスマホのネットニュースを見て過ごしている。

フカシの発した言葉に一瞬、誰と?という疑問が浮かんだが、すぐに自分のことだろうと推測する。

「なんで?」

こっちの疑問は聞いてみないとわからない。

結局西沢が退社するときには飲みにも行かなかったし(そもそも開催されたのかも知らない)、もう社内で会うこともなく数週間が過ぎていた。

「なんかさ、今のニッシーの新しい仕事で相談したいことがあるってLINEが来てさ」

僕は西沢とLINE交換してなかったっけ?と思ったけど、今はそんなことはどうでもいい。

新しい仕事で相談したいことってなんだろう。

他の同期ではダメで、僕に相談したいこと?

そもそも個人でLINEも交換していない仲だ。考えても思いつくはずがない。

「相談ねぇ」

とりあえず適当な返事をする。

今までの人生経験上、こういうのはだいたい話が曖昧に終わって本当に相談することはない。

と思っていたが、考えが甘かった。

「こっちでセッティングするからよろしく〜」

というフカシの言葉に適当に返事をしたのが間違いだった。

あれよあれよと日時と場所が決まり、気付いたら僕は家から車で15分くらいのところにある喫茶店で西沢を待っていた。

待ち合わせ時間の10分前には着いた。
しばし一人で待つ。

10分後に西沢が喫茶店に入ってきた。

西沢が入ってきたときにすぐ気付けるように喫茶店の入口が自然と視界に入る席に座っていた僕は立って軽く手をあげる。

「お〜、山田。久しぶり〜」

西沢のコミュ力高い声質が懐かしい。

一応、僕も久しぶりと言ったけどたぶん聞こえていないだろう。

西沢の隣にもう一人女の人が一緒に入ってきた。

そのまま二人で席まで近づいてくる。

もしや、結婚報告でもするのか?と心の中で一人ボケていた。

「はじめまして、私広瀬ひとみと申します」

「はじめまして、山田翔太です」

「…」

こういう時、どう会話を続ければいいか僕は知らない。

「山田はもうなんか頼んだ?」

西沢が来ていた上着を椅子の背もたれにかけながら話しかけてきた。

「いや、まだ」

とりあえず三人は席に座り、3つホットコーヒーを頼む。

本当はカフェオレとかにしたかったんだけど、一人違うものを頼む勇気がなく、渋々ホットコーヒーで合わせた。

コーヒーがまだ来る前に西沢は話し始めた。

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