アルミ缶の上にあるそれは、爽やかな香りを鼻腔へ届けた。手に取り、橙の小包をひらく。中は沢山の半月が放射状に座り、満ちていた。一つの半月を手でむしり取り、奥歯で薄皮一枚を破けばじくじくと甘酸っぱい汁が溢れてくる。それが過去の苦い記憶を呼び起こすので、私はアルミ缶をあおった。

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