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逆行天体のプログレスを考える① 『ハリポタ』作者J. K. ローリングの場合

J. K. ローリングの逆行する水星を考える

世界的ベストセラー『Harry Potter(ハリー・ポッター)』シリーズの作者であるJ. K. Rowling(J・K・ローリング、以下JKR)の出生図が以下である。

J. K. ローリングの出生図。
(1965年7月31日21:10BST、英国Yate=北緯51°32'、西経2°25'生まれ)

 作家に大きな影響を与える水星(☿)が乙女座♍️の0°にある。☿は双子座♊️と♍️の支配星であり、どちらかのサイン(星座)にあると本質的に品位が高くなり、強力である。☿は書くこと、伝えることを本来的に支配する天体であり、作家などの「モノを書く」仕事の人の場合は重視するポイントになる。

 JKRはこの☿が強い人なのだ。ただ彼女の出生図での☿は、ほぼ留(station=地球から見て動きが止まっている)の状態にあったので、すぐに逆行して獅子座♌️に戻る格好となった。

プログレスの水星は2歳から24歳まで逆行

 プログレス(以下P、=出生から1日分の天体の動きを1年と換算して未来を予測する占星術の技法)でも2歳で♌️に戻っており、以後は24歳になる1990年まで逆行が続いた。JKRはが『ハリー・ポッター』(以下ハリポタ)の着想を得たのは1990年の夏だという。Wikiにはこうある。

1990年6月、エクセター大学時代の恋人がマンチェスターに移り住んでいたのでそこに一緒に暮らそうと考えていた。週末を使ってマンチェスターでフラット探しをしたが見つからず、延々と続く英国の田園風景を眺めながら4時間かけてロンドンへ戻る列車に座っていた。自分と同じように寂しげな黒と白のフリーシアン種の牛たちをじっと見つめているうちに、突然アイディアが浮かんできた。何がきっかけだったのかはわからないが、目の前に「ハリーや魔法学校のイメージ」がはっきり浮かんできた。この男の子は自分が何者なのか知らず、魔法学校への入学許可証をもらうまで自分が魔法使いだと知らないという設定がパッとひらめいた。一つのアイディアに夢中になったのは初めてだった。

ウィキペディア(https://bit.ly/3NqKLPF)

 95年に書き上げた原稿を著作権エージェンシーに送ると、エージェンシーは12の出版社に打診したが、原稿が長すぎたためほとんどの出版社から断られた。ただ、8歳の娘に原稿を読ませたところ大興奮したのを見て、ただならぬ可能性を感じた経営者、ナイジェル・ニュートンが率いるブルームズベリー出版(英ロンドン、1994年FTSEに上場した出版社)が発刊にこぎつけた。
 97年7月26日に初版500部で出版すると直ちに人気に火がつき、版を重ねにかさねて大ベストセラーとなって欧米各国で文学賞を総なめにしたのは皆さまご存知の通り。世界で73か国語に翻訳され、2018年12月1日までに5億部が売れた“史上最大のベストセラー”となった。

赤で囲んだのがプログレスで水星☿の逆行を示す。
1967年、2歳の頃から逆行を開始して68年の3歳で獅子座♌️に戻った。

 1965年生まれのJKRにとって2歳を迎えた67年から24歳となる90年まで、P☿は逆行をしていたと書いた。90年は逆行から再びの留となって動きが止まった(ように地球からは見える)後で順行となり、次第にスピードを増して2004年に再びに次のサイン(星座)である乙女座♍️へと移行していく。P☿が♍️に入って出生時の☿の位置に到達した04年までに、JKRは第5作『不死鳥の騎士団』まで書き進めた。

P☿の逆行は1989年ごろまでに終わり、順行していく(赤で囲った部分)。
そして2004年、乙女座♍️に再びイングレス進入する。

水星が遅い「留」の時期は苦境続く

 だが、90年にP☿が留→順行へと変化しても、しばらくはJKRにとって苦しい時代が続いた。ハリポタの世界に関するインスピレーションを得て、マンチェスターの商工会議所で派遣秘書として仕事を得たものの、90年12月末にJKRの母が10年間の闘病後に45歳の若さで死去。

 91年はポルトガルで英語教師の職を得たが、現地で出会った男性と付き合うも妊娠後に流産。92年(27歳)で結婚し、93年7月には長女を出産したのだが、4カ月後に離婚。まだ赤ん坊だった娘をつれてエディンバラにある妹夫婦の家に引っ越し、ハリポタを書き進めたという。

 その後も苦境が続いた。93年12月に生活保護を受けて友人からも借金をした。94年に入ると貧困と心労で鬱病になり、自殺まで考えるようになった(この経験がハリポタに出てくる「ディメンター」の元になったという)。

 P☿が逆行→順行に戻っても、留の状態にある時は動きが遅い。占星術では動きが早い(Swiftな)天体ほど強く、遅い天体は弱いと判断する。順行に戻ったばかりのP☿は、94年ごろまでは動きが遅かった。94年の暮れ、JKRは秘書の仕事を見つけたが、15ポンド以上収入があると生活手当(当時は月69ポンドだったとされる)が支給されなくなってしまうため、それ以上稼げなかったという。

 JKRの出生図では「収入・財運」をつかさどる第2ハウス(=2H)に土星(♄)がある。♄は制限や困難を本来的に示す。この♄はPで2070年(105歳)まで逆行を続ける天体だ。

赤で囲った土星♄は2HにあってJKRの収入状況を苦しめる天体といえる

 そんな中でも、JKRはハリポタを書き進めた。

Petra ŠolajováによるPixabayからのフリー素材画像

強い金星も影響? 生活保護から億万長者に

ハリポタのヒットで、JKRは1999年6月末に受け取った4度目の印税は、Wikiによると「7桁(100万ポンド=現在の為替水準で約1億7700万円)の金額になっていた」という(“7桁”という表現なら100万〜999万ポンドまでありうる)。2007年7月21日に発刊した第7作『死の秘宝』で物語は完結した。

 この時にP☿は乙女座♍️7°にある金星(♀)とほぼ合(コンジャンクション=☌)だった。このP☿と♀がタイトに重なった08年6月には、JKR直筆の約800語の短編(ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックの逸話)が2万5000ポンドで落札されている。

 この♀はJKRにとって特に金銭・財力面で影響力が大きいらしく、1作目の出版時にもP太陽☉が重なり、T木星(♃)が90°、蠍座に入って強力になったP火星(♂)が60°となっていた。夜生まれのJKRにとって♀は吉星であり、9H=出版と4H=家庭を統括する。2Hの位置にある魚座♓️は0°〜7°で最も♀が強くなる。

 ただ、前述のようにJKRの2Hには制限や困難、困窮を示す♄しか入っていない。この♄はPで2070年(105歳)まで逆行を続けるが、困窮から一転して億万長者へと向かう時期に、P♄は出生図で乙女座♍️にある冥王星(♇)と同じ度数(14°)で180°(オポジション=☍)のアスペクトとなっていた。

 生活に苦闘と困窮をもたらしながらも、♇が♄を刺激してJKRの人生と財運に変容と再生をもたらしたか(やや牽強付会けんきょうふかいだが)? JKRは天頂と天底を結ぶMC―ICライン(子午線に相当)にドラゴンヘッド(☊)とドラゴンテール(☋)の軸が重なっており、☊と☋が暗示的に持つ「宿命的な出来事や転換」が示される出生図の持ち主なのかもしれない、と思えるのだ。

JKRの出生図ではMC―ICラインにドラゴン☊と☋が重なる
プログレスの☿は2004年に乙女座♍️に入った(上)のと、
1990年に逆行から順行へと転じた(下)を示す表。

※ホロスコープや天体の表はすべてWeb上で表示できる「Astroseek」で表示・引用しました。

(了)


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