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「経血」

遅番。

「すみません、御手洗って貸していただけますか?」

ここら辺のコンビニでトイレを貸し出してるのはうちだけ。

「はい、どうぞ」

綺麗な人。切羽詰まっている顔をしていた。
良かったね、うちが貸し出してて。

しばらく経ってトイレから女性が出てきた。
彼女はそのまま店を出るでもなく、商品棚を物色しはじめた。
目ぼしいものを見つけたのか、両手に商品を持ち、並んだのは僕のレジだった。

ピッ

彼女が差し出したものは、生理用ナプキンとタンポンだった。

「…紙袋にお入れしていいですか?」
「いや、そのままで大丈夫です」

彼女は商品を素早く受け取ると、店の奥、トイレがある方向へ急ぎ足で向かっていった。
朝も夜も蛍光灯で明るい店内。
僕は、彼女の背中で揺れる栗色の髪の毛を脳裏に焼き付けた。

「もう上がりじゃん? おつかれー」
「…うっす、お先失礼します」

朝七時。僕のシフトはここで終わり。
この店の決まりで、上がるやつがトイレ掃除をしていく。

僕はいつもどおり男女兼用トイレの掃除をしたあと、女性専用トイレに入り、鍵を締めた。
これも店のルール。店員だろうと、女性専用トイレで男と鉢合わせて驚かすことの無いよう、掃除中は鍵を閉めると決まっている。

カチャ

彼女の困っていた表情が浮かぶ。
トイレへ急ぐ背中。バッグで庇うようにお尻を隠していた。
後ろ指刺されますね。
美しくて、可哀想に。

トイレ掃除。点検場所は決まっている。
サニタリーボックス。
セットされているビニール袋を取り出すだけでいい。
蓋を開け中を確認すると、一つだけトイレットペーパーで包まれたものが入っていた。
僕が勤務していたこの夜、トイレへ入った女性は、あの彼女だけ。

僕はビニール袋に顔を近付け、肺の奥底まで行き渡るよう深呼吸をした。
彼女の匂いがする。生臭い、女性の匂い。
鼻腔が震える。脳は麻痺し、下半身が熱い。

僕のシフトは終わり。
彼女は確かに綺麗だった。
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