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「その日まで」

「幸せになりなさい」

そう言って、あなたは逝ってしまわれた。
あれは確か私が三十で、あなたは六十を迎える直前だった。あまりにも若く早い死に、私は到底受け入れることなどできなかった。
私にとって、初めてのご主人様だった。右も左もわからぬ私を受け入れて下さり、必要な全てを教えてくださった。
私はその頃別の男性と夫婦関係にあり、子を二人持つ妻であり母であった。家庭に不満はなかった。神様申し訳ありません。ただあの人に惹かれました。
女はいつまで経っても女なのだと痛感しました。母になれど、その要素が加わっただけ。私は女なのです。

あなたは常々言っておりました。

「私が居ない時でも、正しく生きなさい」

その真意は未だにわかりません。それでも私はあなたがいなくなったこの世界で自分が思う“正しさ”を胸に生きてまいりました。私もつい先日還暦を迎えました。あなたより歳上になってしまいました。
娘たちは二人とも結婚し、幸せそうにしています。週末は孫たちを連れてきて、賑やかな時間を過ごしています。

幸せです。私は今、幸せに生きております。
間違えることなく、こうして幸せを守っております。

それと同時に、不幸が付きまといます。
お約束を守れていないように思えて仕方がないのです。

言いつけを全うし、いつかまた撫でてもらえるその日を夢見て生きております。

だからあなたはそこで、どうかそこでお待ちください。
変わらぬあの頃の二人でお会いできることを思うと、今から楽しみで仕方ないのです。

あなた様。
いつになったら、お会いできるのでしょう。
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