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「Hypoxyphilia」

少し顎を上げる。目線はあなたの瞳。優しい人。
美しい指先が、私の首を掴む。モノのように、確実に。
力が込められ、思わず目を閉じてしまう。
見ていたいのに、無駄にできる瞬間なんてないのに。
こめかみが張り詰める。脳が破裂しそうな圧迫感。
緊急事態は誤報となり、たちまち幸福へと導かれる。
快感が押し寄せ、多幸感は最高潮。
ここまでは知っている。自分ではここまで。
その先に触れたくても、望んではいけない。
あぁもうだめだ、なんて思わない。
愛しいその手が、力強く私を引き上げる。
「あ…」
わずかに見えた景色は、一瞬にして消え去る。
霞む視界に映るのは、愛しいあなたの姿。
あぁだめ、離しちゃ。だめなのもっと、ほら掴んで。
離れてしまう手を捕まえ、まだ感覚の残る、この皮膚へ。
私が望むから。あなたはもう一度、指先に優しさを込めていく。
捧げられた窒息は、私を一気に押し上げる。
嬉しくて、愛しくて、幸せで。
目尻を伝うそれに怯まないで。大丈夫だから。
「もう終わりです」
何よりも悲しい知らせ。
だって今、こんなにも強くあなたを求めて。
「…ありがとう」
微笑み、冷静にお礼を伝える。
内心、泣きたいほど寂しい。ありがとう。
ここは私の部屋で、テーブルには二人で飲んでいたワインのボトル。観葉植物に水をあげなきゃ。牛乳の賞味期限は明日までだったかも。
現実を手繰り寄せ、綱渡り。
首に、まだ感覚が。でも終わりです。
ペットボトルに入った水を飲ませるため、あなたは私を待ち続ける。
愛しすぎて悲しくて。堪えきれず彼を抱きしめた。
何も言わずに背中を撫でるその手が好き。
私を優しく見上げるその目が大好きなのよ。
終わりの言う事を聞くから、だから、あなたが慰めて。
ほら、私はここにいる。
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