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奄美環境文化実習(与論島)を実施しました

2023年1月20日(金)~22日(日)の3日間の日程で、与論島実習が実施されました。
与論町教育委員会の南勇輔先生と小栗有子先生をメイン講師に、受講生5人、第一期生6人が参加しました。

1日目:島の営みを受け継ぐ

与論島実習は、昔ながらの家屋や民具をそのまま残している屋外民俗資料館「与論民俗村」からスタートです。村長・菊秀史さん解説のもと、古くから伝わる島の暮らしについて学びました。
与論島は奄美群島の中でも沖縄との結びつきが強く、薩摩・琉球が融合した独自の文化が特徴です。そんな与論ならではの言葉や道具、自然との関わりについて菊さんが一つ一つ丁寧に解説して下さいました。息子の凛太郎さんからはソテツの葉を使った虫取りかごなどの工作を指導いただきました。

与論民俗村・菊秀治村長から与論の暮らしを学ぶ
与論民俗村・菊凛太郎さんから郷土玩具づくりを学ぶ


高度経済成長期、観光ブームや生活家電の登場で島の人々の暮らしは激変。豊かになっているように見えて、変化に振り回されてしまう人も多くいたそうです。そんな中「島の大切な文化と、島人の歩みを後世に残したい」との思いから、菊家として与論民俗村を設立。「金儲けとかじゃなくて、人の幸福感を大事にしたい。島の人はみんな、島の文化を守りたいと思っている。でも、具体的な行動に移すのは実際には難しい。まずは自分がこの活動を自分のペースで続けていこうと思います」と、改めて決意を語ってくれました。


与論民俗村で開かれたミニシンポジウムには菊凛太郎さんをはじめ東地区元館長、与論芭蕉布保存会や教育委員会の方など5人にお集まりいただき、文化の継承のあり方と課題について活発に意見を交わしました。昭和から平成、平成から令和へと人々の価値観や生活が日々変化する中、与論島ならではの文化と豊かさを守るための道を真剣に模索されていることが心に残りました。


ミニシンポジウム「与論島・シマの文化継承に向けたこれからの組織体制と担い手のあり方」

2日目:与論島の資源と暮らし

実習2日目は早朝7:30に実習開始!与論町漁港に集まり、魚の競りを見学しました。与論ではソデイカというイカがよく水揚げされ、島の隠れた名産になっているそうです。解説してくださったのは与論町漁業協同組合の池田佳さん。漁業は島の重要な産業である事や、それゆえに人々が海に対して強い想いを抱いていることを教えてくれました。豊かな海産資源がある一方、環境保護や海産物の輸送方法などが課題として残っているようです。


中央下・ソデイカ

続いて、与論町教育委員会の南勇輔さんの案内に従って、茶花集落を散策しました。強い風をまともに受けないために、あえてグネグネと曲がって作られた島の小道を歩きながら、集落の歴史、発展の軌跡を辿ります。
与論島唯一の酒蔵・有村酒造では、貴重な資源である水と黒糖を活用し、焼酎を作る過程などについて、有村晃治さんに解説していただきました。貴重な資源を活用しながら焼酎好きの島の人々に十分な量を供給するのはなかなか大変なようで、有村さんがたまーに海で遊んでいると「酒がないぞ!」と怒られることもあったとか(!)。家族や友人が集まる席には今も欠かせない飲物ですから、機械や作業方法の改善を試みながら、日々焼酎づくりに励んでいるそうです。


茶花地区の散策・細く曲がった道が多い
有村酒造・有村晃治さんから黒糖焼酎づくりを学ぶ


与論島の産業としてもう一つ欠かせないのが、畜産です。立長地区の牧房男さんの牧場を訪れ、牛を飼うにあたっての苦労や心がまえ、島の畜産の展望などについてお話してもらいました。小さな島では頭数を増やすには人も場所も限りがありますが、今後は質の高い牛を増やし、持続可能なスタイルを確立していくことを目指しているそうです。

この日最後のシンポジウムでは、奄美大島海区漁業調整委員会の元会長を務めた町英八郎さん、池田佳さん、南勇輔さんにご登壇いただきました。時代の変化とともに、漁の方法や漁獲量は改善してきましたが、やはり環境への影響は避けては通れない問題です。「一度失ったものは、二度と取り戻すことはできない」という町さんの言葉がとても印象的でした。
小さな島で環境を守りながら、経済的な豊かさを目指す事は一筋縄ではいかないようですが、漁協の池田さんは「苦しい想いを共にするからこそ、強い絆が生まれます」と、島の人々の一体感の秘訣を教えてくれました。

ミニシンポジウム・小さな島で生きる知恵の過去・現在・未来

3日目:与論島の未来について

2日間の実習を経て、3日目はまとめと共有のワークショップです。3チームに分かれてそれぞれ感じたことや発見したことを出し合い、まとめました。
みなさん、与論島の人の温かさが印象に残ったようで、「愛」「結」「助け合い」といったキーワードが飛び出していました。一方で、産業や交通、環境問題など解決を迫られている課題についても多くの意見が上がりました。
参加した去年修了した第1期生からは「このワークショップは何度やっても面白い。毎回発見がある」といった言葉も。色んな島をめぐることで、自分たちが住む島との違いや島の個性が改めて分かるようです。



最後は、話し合いの結果をグループごとに発表し、参加者全員で実習の成果を共有しました。船や飛行機の関係でバタバタと短い時間の中ではありましたが、それぞれ個性豊かな意見を披露してくださいました。
与論島実習にご参加のみなさん、協力して頂いた講師のみなさん、3日間ありがとうございました!


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