【三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2021」】の大賞に選ばれた「チルい」について

【三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2021」】の大賞に選ばれたのは「チルい」という言葉でした。

詳しくはこちらを→ https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2021/

「chill out」(落ち着く)の「チル」を形容詞化したものだそうです。

大流行したわけではないのですが、まあ、これは流行語大賞などとは違って、辞書を編む人が注目したベストテンというところがポイントですね。

世間では、

「聞いたことない」声続々…「今年の新語2021」大賞に“チルい”選出のワケ https://www.excite.co.jp/news/article/Asageibiz_36247/

のような感想があるようですが、やはり「辞書を編む人が注目したベストテン」という点を見落としているのだと思われます。

専門家がどういう面白がり方をしているかというと、

「2021年の選評」 https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2021/best10/Preference01.html

を見てみればわかるのです。

▼引用開始
 「チルい」が特徴的なのは、「外来語+い」の形の形容詞だという点です。「今年の新語2016」の2位に入った「エモい」の解説でも述べましたが、このような形容詞は「ナウい」「エロい」「グロい」など少数です。「キュートな」「スリムな」「ポップな」「リアルな」など「外来語+な」(形容動詞)は多くありますが、「外来語+い」(形容詞)が成立するには高いハードルがあります。そのハードルを越えた「チルい」は、特に若い世代にとって、日常的で基本的な感覚を表すことばになったと考えられます。
▲引用終了(https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2021/best10/Preference02.htmlより)

外来語は「外来語+な」(形容動詞)の形をしていることが多く、「外来語+い」(形容詞)は少ないので、その辺りが心をぐっと掴まれるところなのですね。

6位の「ウェビナー」についての解説も語構成絡み。

▼引用開始
 語構成に着目すると、「ウェビナー」(web+seminar)のように、ある語(の頭)と別の語(のお尻)を融合させたことばを「カバン語」と言います。スーツケースのふたと底を合わせるようにしてことばを造るからです。「今年の新語2020」の9位「グランピング」(glamorous+camping)などもカバン語です。近年、こうした語構成の外来語が多く日本語に入ってきているのは、注目すべき現象です。
▲引用終了(https://dictionary.sanseido-publ.co.jp/shingo/2021/best10/Preference05.htmlより)

辞書絡みの仕事をしている人の関心のありかがよくわかる記述です。

8位の「更問い」も「さらに問う」(政治家の記者会見などで答えに不明な点があった場合、その点についてさらに質問をすること)から来ているので、(選評には触れていないけれども)副詞的な成分が語構成の前要素に来ている点に注目しているのではないでしょうか。


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