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趣味者階級の自由と独立

親愛なる同志諸君! 私は諸君に呼びかける!
あらゆる抑圧を廃絶し、趣味者階級の自由と独立を勝ち取る時が到来したのである!
理想まばゆき我らが同盟! 燃ゆる意志こそ我らの剣!全ての趣味者に栄光を!

上坂すみれ - 革命的ブロードウェイ主義者同盟

というわけで、上坂すみれのライブツアー「超・革命伝説」に行ってきました。

上坂すみれのライブに参戦するのは、2019年の「ノーフューチャーダイアリー」埼玉公演

以来だったわけですが、いつもどおり、変なグッズ(ウォッカ瓶を模したペンライトとか)

を買ったりしながらライブを待ち、そしてライブが始まると全力で盛り上がりました。

そう、いつも通り。

御存知の通り、2019年から世界は大きく変わりました。その世界の変わりようは、特に上坂すみれ氏が好きな界隈を直撃しているわけで、正直ファンである僕らでさえも「今までと同じようにはいかないのかもしれないな」と、思ったりしたわけです。

実際、ライブの中頃まで、上坂すみれ氏が大学に行ってまで勉強したあの国の言葉は出てこず、なんかそこに、勝手に「配慮」なるものを感じてしまったりもしたわけです。

しかし、ラストの曲で「革命的ブロードウェイ主義者同盟」が掛かり、曲中のセリフで冒頭の内容が語られたあと、上坂すみれ氏はこう叫ぶわけです。

Урааааа!!

そして舞台は暗転し、一旦ライブの幕は降りる。しかしそのあとエンドロールのあとに再び彼女は登場し、まず歌われるは「真・革命伝説」

友よ 涙を飲み込んでしまえ

上坂すみれ - 真・革命伝説

そしてその後に「ネオ東京唱歌」と続き

勝った負けたばっか やだわ
争って競って やだわ
ここは東京 好きにしてね

上坂すみれ - ネオ東京唱歌

最後に歌われるは「ウエサカダイナミック」なわけです。

大勝利!世界には右も左もない!
あるのは上坂だけなのだーーーー!!

\上坂は世界を征服した/

上坂すみれ - ウエサカダイナミック

千の言葉を尽くして語られるより、このセトリこそが、まさしく彼女が世界に叩きつけたメッセージなのだと思うのです。

あくまで「主義」ではなく「趣味」であるということ

まるで戦時下のように「不要不急」という言葉が流行し、そしていろんな人々がどんどん真面目になっていくなかで、あえて「主義」ではなく「趣味」を貫くって、ほんと難しいことだと思うんですよ。

なぜなら「趣味」を真面目に擁護したりしようとすれば、結局「主義」にならざるをえないからです。「趣味だけどそこから真剣に考えよう」という立場も、「趣味が趣味のままでいられる自由で民主的な社会を」という立場も、結局「趣味」ではなく「主義」となってしまう。

かといって、そこでただ不真面目さを維持しようとすると、結局昔の2ちゃんねるみたいな露悪に堕ち、そこに残るのは不和と対立なわけで。

そこで、主義を叫ぶのでもなく、かといって露悪にいくのでもなく、「全世界の趣味者階級」に団結を呼びかけるって、正直昔の共産"主義"インターナショナルより難しいプロジェクトじゃないかと思うわけです。

でも、彼女はそれを諦めないわけです。

正直、オタクの中でも、昨今の世界情勢を見て、今までの自分の姿勢を反省している人たちも多々いると思うんです。プーチンとかのインターネット上でのおもしろネタ化とかも、本当にあれで良かったのか?そんなことを、僕も自問自答してしまいます。

もちろん、そういう自問自答は重要ではあるんですが、しかし一方で、そういう"趣味者"の有り様をただ否定するのも、なにか違う気がするわけです。

これ、本当に微妙な問題で、正直インターネットのような場所で語れる問題ではないと思うのですが、それでもあえて語ると、ベタなメッセージが世の中に溢れるなかで、アイロニカルな態度を取ることでしか集えない人たちはいるし、そういう人たちにだって、アジールは必要だと思うのです。

しかし、そういうアジールが政治的に利用されれば、それこそ4chanの「Q」みたいな方向に行ってしまうわけで、だからそこには、アジールをカルトにしないための、バランス感覚あふれる導き手が必要となる。

僕は、どうしても彼女に、そういう導き手としての姿を幻視してしまうのですね。ただ、それを口に出すと、変な重圧を与えてしまう気もするのですが。

とにかく僕が望むのは、十年後も数十年後も、平和なこの国で、この日と同じように、無事に集まって、馬鹿騒ぎしたいね、ということなのです。

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