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二期会《ルル》に行ったはなし
こんにちは、マツザキです。
今日は突然ですが、昨年7月に行われた二期会《ルル》の思い出を綴ります。どんだけ今更だよって感じですが、どこかに書きたくてあたためていた文章を今こそ解き放ちます(なにごと)。
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まず、アルバン・ベルクについて。ご存知ですか?音楽やってる人なら絶対に音楽史では出てきて、名前くらいは知ってるひとですね。ただ、彼の作品を弾いたり歌ったり、あるいは好きかは別のはなしかもしれません。
アルバン・ベルク(1885-1935)は私がいちばん好きな作曲家です。ウィーン生まれウィーン育ち、そしてウィーンに没す、と書くとなんかシューベルトみたい、と思いますけど、時代が違いますね。ベルクはバリバリに世紀末ウィーン、そして20世紀初頭を生きたひとです。同じ時代のパイオニア、シェーンベルクの弟子で、シェーンベルク、ヴェーベルンと合わせて新ウィーン楽派とか第二次ウィーン楽派とか呼ばれます(ちなみにウィーン楽派はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのアレですアレ)。
と、ベルクについて語ろうと思えばいくらでもお話しできそうなんですけど、そろそろ本題に行きましょう。
彼の最後の、未完のオペラ《ルル》を昨年、二期会でやりました。その時の感想を。
遡ること約3年(驚き)、二期会でルルをやる!という知らせを見た時は嬉しすぎて泣きました。
アルバン・ベルクという、どうしても難解と言われてしまう作曲家の最後のオペラを日本で、生舞台で観れることが嬉しくて仕方なく、じたばたしてました。
が、このコロナ禍、もともと2020年7月に行われる予定だったルルは延期になりました。
でも延期にしてくれるだけ、ありがたかった。本当に、直に観られるならばいくらでも待ちます、という感じでした。
今年もコロナの流行が収まらないなか、延期公演もできるのかな…?と不安でしたが、公演してくれたことに、本当に本当に感謝です。
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今回は2幕版ということで、いままで3幕補筆版しか観たことがなかった私は、どうやって終わるんだろう?ルルは最後どうなるの?と、ずーっと気になっていたのですが、今まで観たルルの中でいちばん、綺麗に、救われて終わる演出だったと思います。
もちろん、原作との齟齬が生じてしまうため、一般的なルルではないけれども…
今回の演出のキモは「フェミニズム」かな、と素人なりに思いました。
グルーバー氏の、徹底したフェミニズムの視点によるルルの再考察。そのため、通常は歌手1人で表現される「ルル」が、歌手、ダンサー、マネキンという3つに分けられたことで、観ている側もわかりやすく、ルルが登場する男性・女性たちにいかに搾取されてきたかを丁寧に描いているなあと思いました。
ベルクのオペラのなかでも、救いようのない、そしてある種とらえどころのない《ルル》を、こうまでひらいた演出は、素晴らしいと思います。
兎にも角にも、ベルクの美しい、いや美しすぎる和声には頭が上がりません…なんて美しいものを書くんだ!!!!とキレてます。
わたしにとって大事なレパートリーのひとつにベルクのピアノソナタがあります。大好きな曲。こちらはまだまだわかいベルクの作品ですが、それこそ《ルル》へ至る源流が着実に感じられる作品です。
ベルクはピアノ作品を初期以降、書いていません。作品番号の付いているピアノ独奏作品は、ソナタのみです。
このことは、ベルクがピアノを、オーケストレーションすら可能にする楽器としてではなく、「ピアノ」というアイデンティティをもった、独立した楽器として扱っていたことを意味しているのではないかなあ、と個人的には思っています。
《ヴォツェック》にも、《ルル》にも、ピアノは出てきますしね。
話が逸れまくりましたが、とにかく、《ルル》を生で観れたこと、人生のひとつの大きな出来事でした。ほんとに嬉しかった。
余談ですが、コロナ流行の直前、ベルクのお墓に行くために(だけではないですが、ほぼメインイベントでした)ウィーンへ行きました。
いろいろあったけれど!妻へレーネとともに同じお墓に入っているところを見れてほっとしましたね(どの視点なんだか)。
墓標は、おなじみベルク直筆のレタリングです。かわいい。
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と、ここまで読んでくださったあなたはきっと《ルル》が観たくて(聴きたくて)しょうがないはず(?)。なので最後におすすめの《ルル》を勝手に紹介して終わります。
前置きしておきますが、《ルル》を観るのには結構、体力と精神力が要ります。元気な時に観ても沈んでいる時に観ても結構辛いですのでご注意を。
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まずはなんと言ってもブーレーズ版のCD。これは定番ですけど、ブーレーズの指揮はブレがないです。特に2幕転換のFilmmusikのあのテンポは驚異的。アレに慣れてしまうと他が遅いな〜て思っちゃうけど、ブーレーズの録音が異様に速いのです。
映像は、ペーターゼンとハンニガンの2つを持っています。どちらのルルも性格が結構違う。ペーターゼンはもう何度もいろんなプロダクションでルルを演っているので、この役はもうハマり役もハマり役。ただこのバイエルンの方は、さすがドイツ、無駄を極限まで排した舞台で、うん、METのルルのほうが演出的にわかりやすいかなとは思います。
ハンニガンのほうはもう…まず装丁がVogueですか?という美しさ。演出はさすがワリコフスキ、かなり際どいんですけど、「踊り子ルル」をあそこまでできるのはハンニガンだからこそかなあ…と思います(実際にハンニガン自身がトゥシューズ履いて踊ってます)。あと高音がコロコロと美しいルルの歌…
もうひとつ、こちらはYouTubeなどでも若干観れますが、シェーファーのルルも定番ですね。ちょっとかわいすぎる感じがしちゃう…のですが、シェーファーの歌はもちろん最高です。
あと、ルル組曲(こちらはベルクが生前に完成させてます)に関しては、もちろんブーレーズもいいけど、最近はハンニガンさまのCrazy Girl Crazyに入っているルル組曲を聴いています。ハンニガンというお方は歌はもちろん、指揮も演技もなんでもできちゃうんです…本当に大好きな音楽家です。ハンニガンさまに関してはまた今度。
最後の最後に、ひとつだけ。このルル組曲の5曲目を特に電車で聞いている時、最後の刺殺シーンの音にびっくりするのでご注意を。特にブーレーズのほうはNein! Nein! ギャー がすべて入っていて、わかっててもびっくりします。まあ電車でルル聞かなきゃいいだけのことなんですけどね〜それでは!
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