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赤い鳥居

ある人との出会いから、わたしの中の世界が広がり始める。過去の自分を引き出すように、ここに居てはいけないという。厳しさはわたしに優しくまとう。
わたしはカタツムリだったのでは無いか、今そろりそろりと眼を上へ上へと持ち上げ始めた。

…メデイアもなにも無かったころにビワの吟遊詩人が家々を回った。神社の鳥居は外界からの隔離ではなくて、一人を良しとしないもの達が集まったのであろう。その頃はハレの日とケの日に日常がわけられ普段は大人しく質素に振る舞うのが常だった。神社にたどり着けば同じ目的、別の目的を持つものが集った。
ケの日にはしゃぎ洒落ることをカブクといった。歌舞伎の元になる言葉だ。
吟遊詩人の語りに鳥居をくぐった別世界はなにを一人に見せてくれたのだろう。

…鳥居はただ普通にくぐったりしたらいけないそうだ。わたしは手前から走りこみ、飛び上がり、くるりと宙を舞い降り立つ。目立てば誰かの目に止まるかと。

動くことが止まること
決して動かないのは
流れに逆らうこと

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