帰宅(恋路)

今夜も帰宅のバスの中で、行儀の良い乗客たちにうんざりしている。雑踏と急停車するタクシーにびっくりアナウンスを繰り返す運転手。まるでわたしも含めて道化だ。私はまぶたで蓋をしてそこをスクリーンとかする。

…恋のはじめは 霧の晴れた朝日と 山鳥たちの会話それすら恋文。
わたしの恋 つかずはなれず 静かに進行して 言葉を要しない。
心の中で こんにちわ。

メディアは恋の季節をコアに、キャッチ振りまく。夏虫の鳴声のような世話しい 恋はごめんなさい。

木の葉 散りはじめ、わたしの頬も紅くそまるころ 恋の枝がよく空に映える。
恋におかえりなさい。

前も後ろも白い絵 どこまでも続く黒い二本の線路は ゆるやかに山かげへ。別に揺れるのは悪いことではない。
私とならどこへでもと言うてくれて ほんに ありがとう。

男と女なら 終着駅まで一度は行ってみたい。

先の見えない二人、ホームで静かに見つめあえば、どんな未来も冷静に受け入れることだろう。ここより寂しい場所はない。だから ここから はじめる 夢から げんじつへ わたしから あなたへ

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