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【声劇台本】希望の魔女は森を歩く



希望の魔女は森を歩く あらすじ

「あいつは悪魔だ」
そう言われ、生まれ故郷の村から逃げだした
家族を失い、1人生き延びた魔女は、森を歩く

これは、苦しみつつも歩いた小さな魔女の物語


4人(男1:女2:不問1)
男性キャラは女性が演じても可
30~40分くらい
ストーリー展開・雰囲気が崩れない程度のアドリブ・言い換えは可


キャラクター

・ミサラ  女

本名 ミサラ=ウィシュホープ。
とある村で「悪魔」と呼ばれて迫害に会い、命からがら逃げ伸びてきた
誰も居ない古い宿を見つけては夜を過ごし、起きては森の中を歩いている
人のペースを狂わせる健気さがある
生まれつき、魔法の習得能力が高い

・パスエン 不問

森の中にある、古い館に住む吸血鬼 
1人で住んでいる
血を吸わずとも生きられる
日の光が苦手で、外に出る時はフードを被る
物静かで穏やかな性格

・ゼスト 男

依頼を受けて、吸血鬼を討伐しに来たアサシン
魔道具(まどうぐ)と呼ばれるものを使う
若干捻くれているが、根っからの悪人ではない
アサシンをする前は剣士をしていた
カイエと共に行動している

・カイエ 女

魔道具を作っている魔導士
ヘンテコな機械をつくっている
ゼストのサポート的ポジション
調子のいい天真爛漫さがあるものの、いざという時には真面目な発言もする

ヒデじい様の声劇台本置き場にも置いてあります


シナリオ本文

ミサラ:「あいつは悪魔だ」
 
ミサラ:「あいつを殺せ」
 
ミサラ:火の手があがる、村が消える
 
ミサラ:お父さん、お母さん、兄さん
 
ミサラ:皆、どこかへ消えていく
 
0:
 
0:小屋の中。鳥のさえずりが聴こえ、目を覚ますミサラ
 
ミサラ:……朝、か
 
ミサラ:……今日も
 
ミサラ:……まだ、生きてた
 
ミサラ:……っ
 
ミサラ:お腹、空いたな……
 
0:
 
ミサラ:(狭く古びた、誰も使っていない宿屋。ゆっくりと身体を起こした私は、森で事前にとってきた木の実を、一つ、二つとほおばった)
 
ミサラ:っ、固い……
 
ミサラ:でも、中は甘くて、美味しい
 
ミサラ:兄さんが、教えてくれた、木の実
 
ミサラ:幼い時、村からちょっと出たところで見つけた木
 
ミサラ:……
 
ミサラ:駄目だな、私
 
ミサラ:これじゃきっと、夜、兄さんが出てきて、怒られちゃう
 
0:ミサラは胸にかざっている黒いペンダントを握った
 
ミサラ:っ? 小屋の入り口に……何か?
 
ミサラ:っ、マードック……!?
 
0:牙と爪が鋭利に伸びた、犬型のクリーチャーが、ミサラに襲い掛かる
 
ミサラ:魔法発動、ウォーターウェイバ!
 
0:ミサラは水の魔法を放ち、マードックをしりぞける
 
ミサラ:っ、はぁ……はぁ……! 小屋から出ないと!
 
ミサラ:……まだ、こんなに!?
 
ミサラ:っ、魔法発動 ファイアーボール!
 
0:
 
ミサラ:(私は、迫ってくるマードックの群れを追い払うように魔法を放ち、逃げていく)
 
ミサラ:(しばらく走って。もう追ってはこなくなったもの、度重なる疲労がどっと襲ってきた)
 
0:
 
ミサラ:……はぁ、はぁ
 
ミサラ:(重く、辛く、のしかかる)
 
ミサラ:(過去と、痛みと、苦しみと)
 
ミサラ:(それを全て背負って、森の中を、また、歩いて、進んでいく)
 
0:-
 
ミサラ:……疲れたな
 
ミサラ:休みたいな
 
ミサラ:歩きたくないな
 
ミサラ:楽に、なりたいな
 
0:-
 
ミサラ:……っ? あれは
 
ミサラ:古い、館……
 
ミサラ:……どうせ、このまま死ぬんだったら
 
ミサラ:誰も見ないところで
 
0:ミサラは古い館へと入っていく
 
ミサラ:いないよね、流石に
 
パスエン:誰!?
 
ミサラ:っ……!? 
 
パスエン:……人間?
 
ミサラ:えっと、あ、その……
 
パスエン:……君も、僕を襲いに来たの?
 
ミサラ:え? 
 
パスエン:どうなのさ?
 
ミサラ:ち、違います……私は……その……
 
パスエン:じゃあ、なんなのさ
 
ミサラ:もう……、疲れて
 
ミサラ:分からなくなって……何も
 
ミサラ:それで、ずっと……死にたくて
 
パスエン:……えっ?
 
0:ミサラはそのまま気絶する
 
パスエン:っ!? 君!
 
0:
 
ミサラ:……暖かい?
 
ミサラ:なんだろう、これ
 
パスエン:目覚めた? 
 
パスエン:……ごめんね、その毛布、もう古いけど。我慢して
 
ミサラ:……ありがとう、ございます
 
パスエン:……その流れで、こんなの勧めるのもどうかだけど
 
パスエン:はい
 
ミサラ:……美味しそう
 
ミサラ:っ? このスープって
 
パスエン:知ってるの?
 
ミサラ:「ホルプスの実」を使ってます?
 
パスエン:そうだよ。でも、美味しいかどうかは、別だけど
 
ミサラ:いただきます!
 
パスエン:えっ!?
 
ミサラ:ゴク……ゴク……っ
 
パスエン:あぁちょっと! ……すごい飲みっぷり
 
ミサラ:……
 
パスエン:あ、やっぱり不味かった、よね
 
ミサラ:……っ、ぁ……ぁぁ……ぅ…ぁぁ
 
パスエン:だ、大丈夫!?
 
ミサラ:ごめんなさい……ごめんなさい……なんで、私……
 
パスエン:……
 
パスエン:(それからしばらく、彼女は泣いて、泣いた)
 
パスエン:(思えば、最初に館に来た時、吐き出しそうな顔をしていた、ような気がする)
 
0:
 
パスエン:落ち着いた?
 
ミサラ:……
 
パスエン:そういえば、名前、聞いてなかったね
 
ミサラ:……ミサラ、です
 
パスエン:僕は、パスエン
 
パスエン:ずっとここに住んでる、吸血鬼
 
ミサラ:吸血鬼さん、なんですか?
 
パスエン:うん。君は、人間だよね?
 
ミサラ:私は……魔女です
 
パスエン:魔女?
 
ミサラ:ずっと、そう呼ばれていました
 
パスエン:どこで?
 
ミサラ:私が生まれ育った場所です
 
パスエン:……ごめん、聞かない方が良かったかな
 
ミサラ:優しいんですね
 
ミサラ:吸血鬼さんなら、人間の血、欲しくならないですか?
 
パスエン:えっ?
 
ミサラ:パスエンさんになら、構いません
 
パスエン:どういうことだい?
 
ミサラ:……もう、辛くて
 
ミサラ:みんな、みんな、居なくなって
 
ミサラ:誰もいなくなって、森の中でずっと
 
ミサラ:ずっと1人で
 
ミサラ:でも、死んじゃいけない気がするから、死ねなくて
 
ミサラ:それでも……っ
 
パスエン:……辛かったんだね、ずっと、ずっと、1人で
 
ミサラ:……
 
パスエン:僕も、1人だったよ
 
ミサラ:……えっ?
 
パスエン:なんでだろうね
 
パスエン:悪くないものを、悪いと決めつけたり
 
パスエン:自分達が被害者で脅かされると思ったら、すぐにそれを排除しようとする
 
パスエン:何にもしてないのに、さ
 
ミサラ:……それって?
 
パスエン:僕、人間の血を吸わなくても生きていけるし、興味ないし、ただ、日光だけはめんどくさいけど
 
パスエン:そう、だって争いなんて、一番めんどくさいじゃないか
 
パスエン:めんどくさいし、何も生まない
 
パスエン:例えば、こんな森の中に火なんて放ったら、ここに住んでいる者は全て、消えちゃうよ
 
パスエン:でも、人間は……自分たちを守るためなら、何を犠牲にしてでも火を放てる
 
0:パスエンは腕を抑える
 
ミサラ:その傷は?
 
パスエン:拷問を受けたことがあってね
 
パスエン:その時かな、初めて手にかけたのは
 
パスエン:口で言ってもさ、何も通用しなくて、僕の言葉なんか、明後日のほうこうへ通り過ぎるような顔しててさ
 
パスエン:そいつら、ずっと「僕たちは平和が好き」なんて真顔で言ってたんだよ?
 
パスエン:そしたらもう……分からなくなって、そいつらを、吸血鬼の力を使って、殺して
 
パスエン:それで、逃げて、逃げて
 
パスエン:気づいたら、こんなの森の、館の中って感じ?
 
ミサラ:……
 
パスエン:……長話だったね。ありがとう、ミサラ
 
パスエン:初めてかな、僕が作ったのを美味しそうに味わってくれる人
 
パスエン:人間でも、こんな人いるんだなって、びっくりした
 
ミサラ:……だって、美味しかったですから
 
パスエン:えっ?
 
ミサラ:パスエンさんの作る料理が、すごく美味しかったから……っ……っ……
 
0:パスエンはゆっくりと、泣いているミサラの傍にくる
 
パスエン:ほら、毛布被って、ゆっくり
 
ミサラ:……っ……っ……ぁ……ぁ
 
パスエン:……えっと、じゃあ
 
パスエン:よし、よし
 
パスエン:(ミサラの涙が、僕の服を少しずつ濡らしていく)
 
パスエン:(なぜだろうか。服が濡れているだけなのに、泣きそうになっている僕も居た)
 
0:
 
0:一方、パスエンの館の近く、二人の人影があった
 
ゼスト:……ここか?
 
カイエ:ああ、ここだ
 
ゼスト:断言できるのかよ?
 
カイエ:もちろん! ギルド経由でもらった依頼主の情報を元に分析! 私のおりじなるの地図によれば……ううむ、ここ! もはやここしかない!
 
ゼスト:はっきりいいやがるぜ。その地図も即席でつくったやつだろうに
 
カイエ:いずれはどういう場所でも対応できるものとして考えておる!
 
カイエ:技術の発展は日進月歩、常に進化するのだ
 
ゼスト:つっても、場所を見つけたところで、目標が達成できなきゃ意味がないけどな
 
カイエ:ぬぬ! そういう言い方はよくないぞゼスト!
 
カイエ:開発は過程こそ重要だ!
 
ゼスト:はいはい……で、そしたら
 
カイエ:依頼主の情報によれば、街を脅かす危険な吸血鬼がいる……だったな
 
カイエ:それこそ、ゼスト。お前の魔道具を証明する機会だ
 
カイエ:それの積み重ねがいずれ、そう! あの魔道学院のじじいどもにぎゃふんと!
 
ゼスト:退学撤回な。ご苦労さん
 
カイエ:ぬぬ……他人事のようにいいおって
 
ゼスト:……さて、行くぜ
 
カイエ:さて? 私はサポート役だぞ?
 
ゼスト:は?
 
カイエ:お前が先陣きって行んだろう。私はとことこついていくだけだ
 
ゼスト:なんでだよ!
 
カイエ:それとも、1人じゃ心細いのかぁ~このこの~
 
カイエ:アサシンだというのに、こんなふるーい館の一つや二つ怖くないだろう
 
ゼスト:あの、まるで俺が怖いもの苦手みたいな話になってるんだが?
 
カイエ:だってさっきの「行くぜ」は、「あー、もしや吸血鬼と見せかけてトンデモないゴーレムがいたりして? そうなったら、くっ! 俺の、俺の魔道具使いとしてのキャリアがっ!……ていうか、ちょっとこの館怖くない?」みたいな態度だったからな
 
ゼスト:どんな態度だよ……怖いのか、報酬目当てなのか、よくわからないぜ、それ
 
カイエ:半分は本当の事だろう。あれから故郷を出ても、まーだ過去を引きずっているような素振りを、時折感じるが?
 
ゼスト:そりゃな。全部が全部、振り切ったといえばそうでもねえ
 
ゼスト:でも、あの街にはレンがいる。俺が不要だったのは現実だ
 
ゼスト:それを、ダラダラと酒飲みみたいに愚痴るのは、辞めた
 
ゼスト:そこから抜け出したのは、振り返ったら正解だと思ってる
 
カイエ:ふふ、ちゃんと学んでいるじゃないか
 
ゼスト:……妙に腹が立つけど、まいいや
 
ゼスト:敵の居場所は……おそらく、この様子だと、他のクリーチャーはいないな。
 
ゼスト:従えている線も考えたが、静かすぎるからな
 
カイエ:あまり警戒する必要がないかもしれない、ということか?
 
ゼスト:いいや。そういう時こそ、油断ならない
 
ゼスト:常に大物(おおもの)に油断せず、かといって怖気ず
 
カイエ:時には豪快に?
 
ゼスト:それ、魔道具のこと言ってんのか?
 
カイエ:ああ! 私の魔道具は豪快な武器も多い! エクスニィィィドル! とか、あ、これはお前の真似な
 
ゼスト:似てねえから。とっとと入るぞ
 
0:ゼストが先陣をきり、館の扉を開く
 
ゼスト:よし……入口には敵はなし。進むぞ
 
カイエ:……静かだな、館の中は
 
カイエ:まだ外は昼だというのに、この中だけ夜みたいだ
 
ゼスト:油断するなよ、とりあえず、お前は後ろを……
 
パスエン:吸血技(きゅうけつぎ)発動 「ヴァンパースティング」
 
ゼスト:っ!! 
 
カイエ:左だ!
 
ゼスト:わかってる!
 
ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動 「ボルテックナイフ」!
 
パスエン:っ! 
 
0:パスエンはゼストの攻撃をギリギリでよけ、離れる
 
ゼスト:あと少しで、お陀仏だったな
 
パスエン:さっきのは、ナイフ? にしても、まるで魔法のようだったね
 
カイエ:ううむ! 気になるか! それもそう、この私が創った発明品なのだ!
 
パスエン:……物好きだね、人間って
 
パスエン:そうやって、自分達のエゴを満たすために、自分より弱い者で試す
 
ゼスト:……?
 
カイエ:何を勘違いしてるのかはわからぬが、私は弱い者で試すなど、そのような考えは持ち合わせてはおらん
 
パスエン:口だけならいくらでも言えるよ
 
パスエン:お前らみたいな奴がいるから……
 
ミサラ:魔法発動! 「ウィンドブレイディッター」!
 
カイエ:っ!?
 
ゼスト:カイエ!
 
カイエ:大丈夫だ……! にしても……、もう一人?
 
ミサラ:はぁ……はぁ
 
カイエ:しかも……人間?
 
パスエン:ミサラ……! 駄目だよ! 隠れて!
 
ゼスト:なんだよ、俺達を散々煽っておいて、自分はエサをきっちり用意してるじゃないか? あとでたっぷり味わうつもりかよ……!
 
パスエン:違う! 彼女は関係ない!
 
ゼスト:あ……?
 
ミサラ:パスエンさんに、手を出さないでください!
 
カイエ:待ってくれ。君は……彼の味方、なのか?
 
ミサラ:もし、パスエンさんに何かをするなら、私が許しません!
 
カイエ:……?
 
ミサラ:っ、魔法発動「ファイアーボール」!
 
カイエ:! なんて大きさだ……!
 
ミサラ:はぁぁぁぁぁっ!
 
ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動!「エクスニードル」!
 
0:ミサラのファイアーボールと、ゼストのエクスニードルがあたり、大きく爆発を起こし
 
館の壁が、一部壊れる。辺りが一度、煙だらけになった
 
ミサラ:うっ……!
 
カイエ:げほっげほっ……っ! 馬鹿者ぉ! あんな火の玉にエクスニードルなんてぶつけるなんざ、危ない真似しおって! こっちまで巻き込む気か!
 
ゼスト:とっさに思いついたのが、これしかなかったんだよ! 悪かったな!
 
ミサラ:っ……止められた……!
 
パスエン:……こいつら、ただの人間じゃない
 
パスエン:僕の技を簡単に止めてくる
 
ゼスト:……待て!
 
ミサラ:……なんですか?
 
0:ゼストはそう言って、魔道具をしまった
 
ゼスト:……カイエ
 
カイエ:なんだ?
 
ゼスト:ギルドからもらった情報、もう一回教えてくれ
 
カイエ:教えずとも私の、この……魔法で作ったメモに書いておる……えーと、そうだなぁ
 
カイエ:「人間を襲う極めて危険な吸血鬼がいるため、討伐に向かってほしい」というのが文言だ
 
ゼスト:お前から見て、「極めて危険」にみえるか?
 
カイエ:?
 
ミサラ:……
 
カイエ:……いいや
 
ゼスト:へっ。同意見だ
 
カイエ:いつから思ってた?
 
ゼスト:そこのお嬢さんが出てきてからだ
 
ゼスト:かばう反応がな、嘘とは思えない
 
パスエン:……殺さないの?
 
ゼスト:仕事なら、そうすることもできる
 
ゼスト:でも、その選択肢は選べない。いや、選ばない
 
ミサラ:……、本当に?
 
ゼスト:ああ
 
ゼスト:むしろ、気がかりなのは……外か
 
ミサラ:えっ? どういう、ことですか?
 
カイエ:むむ……ははーん
 
カイエ:さては依頼主め、ここまで予想していたかぁ?
 
ミサラ:外って……? っ!?
 
ゼスト:出来なかった時の保険か……あの依頼主、ちょっときな臭いと思ってたが、当たりか。何人だこれ……
 
カイエ:12人だ
 
ゼスト:わかるのか?
 
カイエ:こうもあろうかと、外の様子が見える装置を、事前に館へ入る前につけていたのだよ~
 
カイエ:どうにもこのクエスト、妙なにおいがしていたものでな
 
ゼスト:あんまり報酬額が高すぎだ
 
ゼスト:ギルドの奴らは信用できても、外部の人間になると、分からないものだぜ
 
ゼスト:……パスエンだっけか?
 
パスエン:う、うん
 
ゼスト:手を貸してくれ。俺も狙われてる
 
パスエン:……
 
ゼスト:ああ、俺がもし、お前を後ろから狙ってきたら、俺を殺せ
 
パスエン:……っ。分かった
 
ゼスト:それと……えっと
 
カイエ:甘いなゼスト、か弱いレディの名前は覚えておかねばの
 
カイエ:……ミサラ、と呼んでおったかな?
 
ミサラ:は、はい!
 
カイエ:良ければ、君も手伝ってくれないか?
 
カイエ:というか正直、センスの塊のような魔法でなぁ……
 
ミサラ:え……?
 
ゼスト:話はあとでしろ
 
カイエ:よし! そうしたら二人で手分けして、外の敵を追い払おうではないか! 2人一組で手分けすると、6人担当するが、まぁゼストに任せておけ!
 
ゼスト:いや、全部俺かよ
 
パスエン:手伝うよ
 
ゼスト:……サンキュー。じゃ、とっとと片付けるか
 
0:
 
ゼスト:魔道技発動 「ボルテックナイフ」!
 
パスエン:吸血技発動「ブラッディシュート」!
 
ゼスト:っ! 援護助かる!
 
カイエ:おおっと。女子も負けてられないのう!
 
ミサラ:魔法発動!「ウォーターウェイバ」!
 
カイエ:ふむ! 水の魔法か……! にしても水の勢いが……凄まじい
 
カイエ:なら、そこにびりびりと加えてみるか
 
カイエ:魔導技発動「ボルトボム」!
 
カイエ:ただでさえ雷ドッカンな、魔法を圧縮した爆弾だが、水があることでさらに広範囲に!
 
ミサラ:す、すごい……
 
0:
 
0:4人は外敵の人間たちをなぎ倒した
 
ゼスト:お前らの依頼主に言っとけ。手をだす相手が悪かったってな
 
カイエ:おー。すたこらさっさと逃げだしたなー。大した事がなかったの
 
ゼスト:ほんとにあいつらアサシンか? あの動きは、ヘタクソすぎるぜ
 
カイエ:なんだぁ? 先輩風をふかせおって~
 
ミサラ:あの……ありがとうございます
 
ゼスト:気にすんな
 
パスエン:君も、アサシン?
 
ゼスト:まぁ、アサシンやってたけど、前は剣士やっててな。なんていえばいいんかな……
 
カイエ:「魔道具使い」だ
 
ミサラ:魔道具、使い?
 
カイエ:ふふふふ! 聞いて驚け! なーんと今、ゼストが使っておるのは、全て私が発明したものなのだー!
 
カイエ:あと、これと、これもな
 
ゼスト:ここで出すな……!
 
ミサラ:わぁ、こんなに色んな物がつくれるんですか!?
 
カイエ:むむ! 君……なかなか見どころがあるじゃないか……むふふ……
 
ゼスト:だから! あとにしろって
 
パスエン:……助かった
 
ゼスト:悪かったな、疑って
 
パスエン:ううん
 
カイエ:にしても……ここに、二人で住んでおるのか?
 
ミサラ:実は……その
 
0:
 
パスエン:(ミサラは、ゆっくりと話を始める。でも今は、館に来たばかりの時より、どこか落ち着いていて、でも、どこか崩れそうでいて)
 
カイエ:……魔女、か
 
ゼスト:……そんなことがあったのか
 
ゼスト:胸糞悪い話だぜ
 
ミサラ:っ?
 
ゼスト:……俺がアサシンの頃、標的にしていたのは、身ぐるみをはぐような人間や、裏で汚いことをしている奴らだった。1人1人。
 
ゼスト:でもなんだ……村まるごとだって? それはつまり「全員」ってことだろ? 
 
ゼスト:……ふざけてるぜ
 
0:ゼストは拳を握る
 
ミサラ:ありがとう、ございます
 
ミサラ:私の兄さんも怒ってました。ゼストさんのように
 
カイエ:兄がいるのか?
 
ミサラ:守ってくれたんです、でも、兄さん……ロシュ兄さんは亡くなりました
 
ミサラ:最後の、最後まで、私をまもる為に戦ってくれたんです
 
パスエン:……
 
ミサラ:兄さんは最後に、私にこう言い残しました
 
ミサラ:「希望をもって歩いていけ」って
 
パスエン:希望……か
 
パスエン:この実と、一緒だね
 
ミサラ:そう。パスエンさんが、飲ませてくれた、「ホルプスの実」のスープ。……その由来は、光の天王(てんおう)の祈りが「実」になった。言い伝えによればですけど。
 
ミサラ:兄さんは、もしもこうなった時の為に。ずっと前から教えてくれたのかもしれないですね。大事な事を
 
カイエ:……いい、お兄さんだな
 
ミサラ:……はい
 
カイエ:……すまない。そんな事情があると思ってはいなく。襲い掛かるような真似をして
 
ミサラ:いえ、慣れてますから
 
カイエ:……
 
パスエン:そんな事に慣れちゃだめだよ、ミサラ
 
ミサラ:っ
 
パスエン:君は、優しい人間だ
 
パスエン:例え誰かに忌み嫌われていたとしても、君の自由を奪う権利は、誰にもない
 
カイエ:パスエンと同意見だ
 
カイエ:ミサラ、君の魔法はその……
 
ミサラ:は、はい?
 
カイエ:自分で習得したのか?
 
ミサラ:そう、ですね……幼い頃に教会においてあった魔導書を呼んだのが、最初だったかな……草原に魔法で出来た花を咲かせる、小さな魔法なんですけど、それを読んで、試してみたら、使えるようになってて。それから魔法を覚えるのが、楽しくなったんです
 
カイエ:そんな頃から、か
 
カイエ:……羨ましいな
 
ミサラ:えっ?
 
カイエ:私は、どうにも魔法の才能がなくてね
 
カイエ:でも、君はすさまじい。魔道学院なら首席レベルだろう
 
ミサラ:しゅ、しゅせき?
 
ゼスト:優秀ってことだ
 
ミサラ:そ、そうなんですね?
 
カイエ:でも、君にはそんな余裕などなかった
 
カイエ:私の、「優秀への嫉妬心」など、君の辛さとは比べ物にならない
 
カイエ:なぜなら君はずっと……生きている事そのものが、辛かったわけなのだからな
 
ミサラ:……
 
ゼスト:ミサラ、一つ聞いていいか?
 
ミサラ:はい
 
ゼスト:お前は、死のうと思ったら、別に死ねたはずだ。限界まで来ていたんだろ?
 
ゼスト:なぜ、ここまで来れた?
 
カイエ:ゼスト……! お前な……!
 
ミサラ:いえいえ! いいんです!
 
ミサラ:私が死ねなかった……いや、死のうとしなかったのは
 
ミサラ:……兄さんが、夢に出てくるんです
 
ゼスト:お兄さんが?
 
ミサラ:正直、あんまり覚えていなくて
 
ミサラ:夢から起きた後は、記憶があいまいなんですけど
 
ミサラ:でも、兄さんが出てくるたびに、あの言葉を思いだして、歩かなきゃって思ってて
 
パスエン:……それでも、限界だったんだよね
 
ミサラ:……っ
 
パスエン:館に着いた君は、いつでも死んでもいい、そう思ってる顔をしていた
 
パスエン:どこか、何とか前を向こうとしていて
 
パスエン:でも何かが、自分の何かが追いついていなくて
 
パスエン:正直、ほうっておけなかった
 
ミサラ:……
 
ゼスト:……強いな
 
ミサラ:えっ?
 
ゼスト:ここまで歩いて来たのは、ミサラ自身の力だろ?
 
ゼスト:今の現実は、ミサラが希望を持って、歩いてきた結果だ
 
ミサラ:……そんなことは
 
ゼスト:……っていうのも、俺もな。クソみたい奴だったよ
 
ゼスト:自力で歩こうとせず、愚痴を吐いているだけの、な
 
ミサラ:そう、なんですか?
 
ゼスト:でも、俺の悩み事とは、ベクトルが違う
 
ゼスト:それなのに、ここまで歩いてこられたのは、本当に奇跡みたいなもんだ
 
ゼスト:すごいよ、お前は
 
ゼスト:あとパスエンもな
 
パスエン:えっ?
 
ゼスト:その傷、人間にやられたんだろ?
 
パスエン:うん……
 
ゼスト:自分で抵抗して、自力で今まで生きてきた
 
ゼスト:しかも、俺と戦えるレベルとまで来た
 
ゼスト:ミサラと同じくらい、強いし、人を、善悪をしっかり見分けられる目がある
 
パスエン:そんな……大した事じゃないよ、ミサラに比べたら
 
パスエン:僕はだって、種族が違うしさ、嫌われてもおかしくないし
 
ミサラ:種族なんて関係ないですよ!
 
パスエン:っ……ミサラ?
 
ミサラ:パスエンさんは、スープをくれたじゃないですか
 
ミサラ:私を殺さずに、館に入れてくれて、暖かい毛布までくれて
 
ミサラ:そんな人を「種族が違うから」って嫌うのは、あんまりです
 
パスエン:……ありが、とう
 
カイエ:うむ、ミサラの言う通り
 
カイエ:能力の差、種族の差、そんなものは関係ない
 
カイエ:それを、いち人間の憶測や勘違いで、勝手に奪われてはならない
 
カイエ:そして、「どうせ自分は違うから」と、自分で自分の可能性を曲げる事もよろしくない
 
カイエ:それはとても、勿体ない事だ
 
カイエ:二人とも、ものすごく魅力的なのだからな
 
カイエ:死ぬなんて、勿体ないぞ
 
ミサラ:……カイエさん。ありがとうございます
 
ゼスト:……で、話がまとまったところで、提案だけどよ
 
ゼスト:この森を抜けた先、俺達が来た道なんだが、一つ街がある
 
ゼスト:そこを活動拠点にしていてな……つっても、俺が出入りすることが多いのは、地下だけど。信頼できる筋の人間が多い
 
ミサラ:それって……?
 
ゼスト:二人とも、良かったら来ないか?
 
パスエン:えっ?
 
ゼスト:そこにはワケありの人間や、人外もいる
 
ゼスト:俺も、アサシンやってた意味じゃ、ワケありだ
 
カイエ:私もな。ふふーん
 
ゼスト:お前の場合は、退学してほっぽり歩いているニートって意味だな
 
カイエ:うるさいッ!
 
ミサラ:でも……どう思われるか
 
ミサラ:……そうしたら、ゼストさんや、カイエさんに
 
カイエ:迷惑などかからんよ
 
カイエ:仮に万が一、問題が起こったなら、解決をすればよい
 
カイエ:そのために魔導具は存在するのであるからな……!
 
ゼスト:なんでそっちに繋げたんだよ……
 
カイエ:いずれは、あらゆる問題解決にも役立てるつもりだからなぁ
 
カイエ:今は! 魔道具の証明が優先だ、今はな!
 
カイエ:……あ、問題解決といえば。私達のギルドの、受付嬢が1人欠員しててな、誰か探しておるといっておったのを思い出した
 
ミサラ:受付嬢、ですか?
 
カイエ:……というわけで、ミサラ! 君を連れていきたいのだが、よいか!?
 
ミサラ:わ、私!?
 
カイエ:ああ! 君は可愛いから大丈夫だ!
 
ゼスト:そうだ……人が足りない話なら、もう一つ
 
パスエン:え?
 
ゼスト:ギルドの雑貨屋、人が欲しくて困ってるんだ
 
パスエン:僕でいいの?
 
ゼスト:ああ。報酬が、もらえるからな
 
パスエン:……っ、ふふ。分かった
 
カイエ:マスコット属性がどことなくあるよのぉ、パスエンは。ふふふ、期待大だ
 
ゼスト:変な実験に付き合わせんなよ、全く
 
カイエ:よし! そうと決まれば、さっそく案内しようじゃないかー!
 
0:
 
ミサラ:(その後、街に連れてこられて、ゼストさん達が所属するギルドに入ることになった)
 
ミサラ:(最初は、見た目が怖い人たちばっかりだったけど、話してみると、全然、第一印象と違っていて……私の勘違いだったみたい)
 
ミサラ:(その後、小さな家と、仕事を紹介してもらって、そこに住むことになった)
 
0:
 
ミサラ:(それから数週間後)
 
ミサラ:いらっしゃいませ……ええと、初級クエストですか……?
 
ミサラ:そうですね、初級、初級……あ、これか
 
ミサラ:近辺のマードック退治はどうですか?
 
ミサラ:わかりました。では……あ、少々待っていただいていいですか!
 
ミサラ:……すみません、この後どうするんでしたっけ? ……あ、ごめんなさい……お願いします
 
ミサラ:(ゼストさん達の紹介で、私はギルドの受付嬢をすることになった)
 
ミサラ:(最初は全然わからなかったし、今でやっと、少しだけ覚えてきた)
 
ミサラ:はぁ~、疲れた……また先輩に頼りっきりだったな……
 
ゼスト:お。やってるな
 
ミサラ:あ、ゼストさん。カイエさんも
 
カイエ:むふふ~! サマになっているな、受付嬢
 
ミサラ:いえいえ。でも、なかなか、仕事を覚えられなくて
 
ゼスト:出来ているように見えるけどな
 
カイエ:ゼストよりは真面目だぞ、うん
 
ゼスト:それは余計だ
 
ミサラ:あ! パスエンさんは、お元気ですか?
 
ゼスト:ああ、まだ他の人間に不信感がぬぐえないだろうけど……その不気味さが丁度いいんだろうな。雑貨屋は盛り上がってるよ
 
ミサラ:そうなんですね……良かった……
 
ゼスト:夜は、寝られるか?
 
ミサラ:……すみません、時折、怖くなって、起きてしまいます
 
カイエ:無理もない。来たとは言えど、そう簡単に変わるものではないさ
 
カイエ:パスエンもそうだが、ゆっくり行こうじゃないか
 
ミサラ:そうですね……
 
0:ミサラは少し俯いた後、笑顔を見せる
 
ミサラ:最初、ここに来た時は、警戒してました
 
ミサラ:でも、皆さん、まるで、普通の人間のように扱ってくれて
 
ミサラ:それが、嬉しくて
 
ミサラ:だから、前より、怖くないです。大丈夫
 
カイエ:……そうか
 
カイエ:いい顔だな、ミサラ
 
ミサラ:今は、仕事中だから、不安な顔はできません
 
ゼスト:はは、仕事熱心だな
 
カイエ:そしたら! ほれ! もっと笑顔の練習をしようではないか!
 
カイエ:受付嬢は笑顔でいることも仕事のうちだろ~!
 
ゼスト:強要すんな、強要を
 
カイエ:でも普通に可愛いくないか、ミサラ。もはやお持ち帰りしたいレベルだ
 
ミサラ:か、かわいい?! 
 
ゼスト:あー、この馬鹿のいうことは気にするな
 
カイエ:馬鹿とはなんだー! 馬鹿とは!
 
パスエン:……どうも。こんにちは
 
ミサラ:……あ!
 
0:フードを被って、受付所に入ってくる人影が居た
 
パスエン:元気そうだね、ミサラ
 
カイエ:人の事がいえんぞ、パスエン。お前だって、フードを被ってるにも関わらず、底からのぞく表情、悪くない!
 
パスエン:あはは。人が、来るからさ
 
パスエン:それに、店長にはもっと笑顔になれって言われるから
 
カイエ:ならそれを披露してみるのだ!
 
ゼスト:お前な……
 
パスエン:え? 
 
ミサラ:……
 
カイエ:ミサラの前だぞ! 笑顔笑顔!
 
パスエン:……あ。はは
 
0:パスエンは、ミサラの前でにっこりする
 
ミサラ:か、可愛い!
 
パスエン:ええ!?
 
ミサラ:なでなでしてもいいですか!?
 
パスエン:ちょ、ちょっと……ぉ
 
カイエ:むふふ~。スキンシップは互いの信頼関係を深める、とな!
 
ゼスト:ほとんどお前が誘導してたけどな
 
カイエ:いいではないか~! 我々のギルドの面々を見てみろ、こんな可愛い子らは珍しいだろうに
 
ゼスト:ギルドの面々にあやまれお前は
 
ミサラ:……ゼストさん、カイエさん、改めてありがとうございました
 
ミサラ:パスエンさんも、本当に、ありがとうございます
 
パスエン:いや、何もしてないよ。僕もみんなに礼を言わないと
 
パスエン:ありがとう、ゼスト、カイエ、……ミサラ
 
ゼスト:礼はいらねえよ
 
カイエ:うむ! そうとなれば……時にパスエン、君の吸血鬼としての力……是非とも拝見したいのだが、私の研究に役立ちそうな発見があるかもしれなくてな
 
ミサラ:研究ですか?
 
ゼスト:吸血鬼の力を使っても、魔道具って作れるのか?
 
カイエ:わからん!
 
ゼスト:なんじゃそりゃ!
 
カイエ:しかし! 研究は常に未知なるものを探索するもの、可能性を追いかけることは、立派なことなのだ
 
ゼスト:空振りで終わりそうな予感がするぜ……
 
カイエ:あと、ミサラ! 君の魔力にも興味がある!
 
ミサラ:私も、ですか?
 
カイエ:前にも言ったが、君の魔法はセンスの塊だ。より良い魔道具を作り出せるかもしれん
 
ミサラ:わかりました。でも……まだこの仕事を覚えられなくて、今日もてんてこまいなんですよ……
 
カイエ:ああ構わぬ!あとでよいあとで!
 
パスエン:そしたら、僕もそろそろ
 
ゼスト:お。ならせっかくだ。パスエンの雑貨屋に寄っていくかな。店長にも挨拶しときたいし
 
パスエン:ぜひ、いらっしゃい
 
0:ゼストとカイエは、一度受付所からです
 
パスエン:……すごい、変わったね、ミサラ
 
ミサラ:え?
 
パスエン:最初に館に来た時より、明るくなってる
 
ミサラ:パスエンさんも
 
ミサラ:……またあのスープ、飲みたいですね
 
パスエン:あ、それ実は、雑貨屋の店長に気に入られて……スープも出すことになったんだよ
 
ミサラ:えっ、そうなんですか!?
 
パスエン:食事するところじゃないのにね、あはは
 
ミサラ:飲みに行きます!
 
パスエン:そんな、恥ずかしいよ
 
パスエン:……じゃ、ミサラ。そろそろ行くね
 
パスエン:はぁ。今日は日差しがすごいな……
 
ミサラ:大丈夫です?
 
パスエン:うん。平気。死ぬわけじゃないし、ただ苦手なだけだから
 
パスエン:でも、青空はいいよね。見ていて
 
ミサラ:えっ?
 
パスエン:館に居た時も、その前も、そんなの考えてなかったから
 
ミサラ:……そうですね
 
ミサラ:空なんて見ずに、ずっと森ばっかり
 
ミサラ:でも、進んで良かったって、思ってます
 
ミサラ:パスエンさんに会えて、ゼストさんにも、カイエさんにも会って
 
ミサラ:これで良かったと
 
パスエン:……そうだね
 
ミサラ:あ! 仕事、戻りますね! また!
 
パスエン:うん、また……うぅ、まぶしいなぁ
 
0:
 
ミサラ:こうして、森を抜けた私は
 
ミサラ:新しい場所で、新しい生活を始めることになった
 
ミサラ:「希望をもって歩いていけ」
 
ミサラ:兄さんの言葉が無かったら、パスエンさんが拾ってくれなかったら
 
ミサラ:ゼストさんとカイエさんに出会ってなかったら、今の私はいなかった
 
ミサラ:まだ不安な事も多いし、時折、怖くて目が覚めるけど
 
ミサラ:あの時とは、どこか違う
 
0:ミサラは、黒いお守りを握りしめる
 
ミサラ:ありがとう、兄さん
 
ミサラ:……あっ! はーい! 今行きまーす!!
 
 

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