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【声劇台本】斬り光は再臨す



斬り光(きりびかり)は再臨す

「このままでは、我が一族が絶滅しまう!!」
ピンチに陥っていた魔族「エルム」は、代々一族が持っていたとされる秘宝で
異界の門から、強い魔族を召喚する
しかし、召喚された魔族は、出てくるや否や、頭を抱えていた

「ラップトップソリューターズ」シリーズ作品
SMコメディ台本です。バトルはちょびっとあります
男1(兼ね役有):女1
男キャラは女性が演じても可
ストーリー展開が崩れない程度のアドリブは言い換えは可

○○○関係作品一覧○○○
魔族制戦……魔族たちが戦うお話
ヴィルクライム……斬光の前世

・キャラクター

・白髪の魔族 女

エルムに召喚された魔族
元人間らしく、前世の記憶がある
いたぶるのが好きで、戦闘能力が他の魔族と比べて高い
口が悪く妖美な女帝といった雰囲気

・エルム 男
ちびちびと生きていた魔族
やってきた退治屋や同族を倒しては、とりあえず生き延びている
他の魔族に領地をとられ、ピンチだった
エルムの一族が代々隠し持っていたとされる、もしもの時のアイテム「異世界から強い存在を召喚できるアイテム」を使い
古代からあったといわれる「異門」で、白髪の魔族を召喚した。

・摩天(まてん) 男

強い魔族の噂を聞いてやってきた魔族
変わった喋り方をする
エルム役が兼ね役

ヒデじいの声劇台本置き場にも置いてあります


シナリオ本文

白髪の魔族:この世における万物の存在は、私に痛めつけられるためにある
 
白髪の魔族:貴方たちの苦しみや悲鳴がこだまするとき、快楽に満たされる
 
白髪の魔族:さぁ、そこのクリーチャー達よ
 
白髪の魔族:白き光へ、跪きなさい……!
 
白髪の魔族:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
 
エルム:(その魔族は、鮮やかな光を、突き刺すような勢いで放っていく)
 
エルム:(響くのは、彼女の高らかな笑い声のみである)
 
エルム:(そう……、これぞ、私が求めていたお方だ!!)
 
白髪の魔族:ふふふ、あっははははは!
 
0:
 
エルム:(時は数週間前にさかのぼる)
 
0:霧の漂う渓谷を抜けた先、怪しい空と、大きくそびえたつお城があった
 
エルム:不味い……不味いぞ。このままでは、我ら一族が滅んでしまう
 
エルム:いや、滅んでしまうというより、侮辱的な死を与えられると言えばいいのか……

エルム:まさかここまで領地を奪われるとは……それだけの強力な魔族たちが増えた、ということでもあろう
 
エルム:ただ、人間たちにも、我らに対抗しようと攻めてくる者どもも、存在する
 
エルム:どちらにしろピンチだ
 
0:エルムは自分の胸に手を当てる
 
エルム:……あまり時間も、残されてない
 
エルム:ならせめて……せめて美人な魔族にいたぶられて死にた……というのはさておき、まだ死ぬわけにはいかない!
 
エルム:そこでだ……! じゃじゃーん!
 
0:エルムは城の玉座に置いていた大きな玉を取り出す
 
エルム:代々、我が一族の象徴とされた血贄(ちにえ)の玉! これを失う事は、我ら一族の終わりを意味するから、勝手に使わぬようにと言われてきたが……背に腹は代えられぬ。聞けばこの玉……異界から大いなる魔族を引き寄せる事が出来るとかなんとか、言い伝えで残っておったな……
 
エルム:それが本当であるならば! ここで使わないわけにはいかない……あの場所へ向かう!
 
0:
 
エルム:ふむ……手記に書いてあった場所はここだな……見えた、あれか
 
エルム:なるほど……大きな丸い門のような形をしておるな……もうとんでもなく古びておるが……。この中に玉を納めれば、門が開き、大いなる魔族を召喚できる……といってたが、果たして……
 
エルム:……血贄(ちにえ)の玉よ! この領地、いや、世界を我ら一族のものにしてしまえるような、強力な魔族を召喚したまえ! ……できれば、なんかこう、美人でサディスティックゥなお方が……ゴフンゴフン! とにかく! 我ら一族を救ってくれたまえ!!
 
0:エルムが玉をかかげると、門が光りだす
 
エルム:うぉ、急に門が光り出した!? あ! 玉が勝手に、門の中にぃぃ! お、おお……おおおおおおお!
 
0:光の中から、白髪の女性が現れる。その後、門は徐々に光を失う
 
白髪の魔族:……っ
 
エルム:な、なんときれいな白き髪! そして紅くきらめく眼光……! 美しい…!
 
白髪の魔族:ここ…は?
 
エルム:はっ。私めは、この領地を収める魔族であります、エルムと申しますゆえ
 
白髪の魔族:……?
 
エルム:失礼ながら、お名前を聞いても?
 
白髪の魔族:……わたしは……サティ……。そう……私は……あっ、ぁぁあああ!
 
エルム:おお!おおいなる魔族よ! どうなされましたか!?
 
白髪の魔族:イ、デア……ぁ……なん……で……
 
0:一瞬、苦しんだかと思うと、そのまま気を失い倒れる
 
エルム:あっ…! 気絶されてしまった……
 
エルム:……ううむ、これ大丈夫かな……ミスったんじゃないの?
 
エルム:とりあえず、城へと運ぼう
 
0:
 
エルム:(それから、彼女を別の部屋で寝かせる。そのあと、何度か目が覚めて、苦しんでは、気絶する。それの繰り返しだった)
 
エルム(……正直、もう不安しかなかった)
 
エルム:(一週間が過ぎた。サティ様は寝室から現れ、顔からは、ひとまず冷静さがうかがえた)
 
エルム:その……サティ、様? 大丈夫でございますか?
 
白髪の魔族:……落ちついたわ
 
エルム:それは良かった
 
白髪の魔族:……それで
 
エルム:えっ?
 
白髪の魔族:なんで、私は生きてるのよ
 
エルム:何と……既に生きる希望もないと。何だか既に我が一族、滅亡の危機を感じている次第です
 
白髪の魔族:……死んだはずだけど
 
エルム:え?
 
白髪の魔族:最後に死んだはずだけど、生きてるって言ってるのよ
 
エルム:……この感じ、なにか前世があるような言い方ですな……ううむ、私にもよくわからないのですが、その言い方からすると、別の世界で生きていた、という解釈になりますが……
 
白髪の魔族:……別の世界。ここは違うということかしら?
 
白髪の魔族:……でも確かに、あなたのような外見をした人間は、見たことないわね
 
エルム:人間ではなく、人間より強い魔族であります!
 
エルム:……でもその魔族たるや、今はピンチなのです!
 
エルム:そのため、お力添えをいただきたい
 
白髪の魔族:お力添え……利用するということ? ふふっ、あなた如きが? この私を?
 
エルム:お、おほっ! さっきの言い方! 良き!
 
白髪の魔族:は?
 
エルム:大興奮するんです! あ、あぁ、そうこういう人を待っていたぁ!
 
白髪の魔族:……
 
エルム:私はぁ! もちろん、一族の事を考えておりましたがっ! 美人にいたぶられるという夢があったのです!
 
白髪の魔族:それ、本音?
 
エルム:はい!!!
 
白髪の魔族:……ぶっ。はは
 
エルム:な、何かおかしなことがありましたか?
 
白髪の魔族:あなた、気持ち悪いわね
 
エルム:おおおおう! ありがたき、有難きお言葉
 
白髪の魔族:少し一人になりたいわ。いいかしら?
 
エルム:構いませぬ! どこまでも、構いませぬぅ!
 
0:城のバルコニーにて
 
白髪の魔族:……時間も経てば、ショックは薄れていくものね
 
白髪の魔族:まるで、死んだことが、嘘のよう
 
0:白髪の魔族は、バルコニーから外をながめる
 
白髪の魔族:やはり、私の知ってる世界じゃないのは、確かね
 
白髪の魔族:……変なところに来たものだわ。転生と呼べばいいのかしら?
 
0:白髪の魔族は、自分の手や髪をさわる。
 
白髪の魔族:……外見は一緒だけど、髪は随分白くなったし、体も、以前の私とは、似ているようで、どこか違う……
 
0:白髪の魔族は、眼をしかめる。怒りを吐き出すように
 
白髪の魔族:……そう、以前の私。ずっと頭によぎっていた。殺された時の記憶
 
白髪の魔族:……あの、イデア……そう、クソイデアが……!
 
0:白髪の魔族は、はっとする
 
白髪の魔族:……クソ?  私いま、あいつのことを「クソ」って言ったの?
 
白髪の魔族:……はは、ははは!
 
白髪の魔族:あぁ、そうよね。その通り!
 
白髪の魔族:私がおかしかっただけ、か
 
白髪の魔族:あの時のあいつは、私の知らない、別人だった。……殺されて、ようやく分かったわ
 
白髪の魔族:私は、真実も見えないゴミだらけのフィルターで、あの男を見ていただけ
 
白髪の魔族:それにしても痛すぎる妄想……我ながら滑稽よ……ふふ、あはははははは!
 
0:白髪の魔族は、しばらく笑う
 
白髪の魔族:なぜこんなにも、心の中が澄み渡っているのかしらね
 
白髪の魔族:なぜこんなところで、また生きているのかしらね
 
白髪の魔族:……でももう、理由なんて考えるだけ、バカバカしいわ
 
0:そこに、数十体の獣の姿をした、魔物が現れる
 
白髪の魔族:……見たことない『犬』ばっかり。気持ち悪い
 
白髪の魔族:貴方たち、何が欲しいのかしら? ほら、吠えてみなさいよ? ワンワンって
 
白髪の魔族:……チッ。返答の一つもできないのかよ
 
白髪の魔族:「痛白斬光(つうはくざんこう)」!
 
0:白髪の魔族は無意識に目の前にいたクリーチャーを一掃した
 
白髪の魔族:つまらない。こんなものなの?
 
白髪の魔族:……っ? 今、痛白斬光(つうはくざんこう)を、使えた……?
 
白髪の魔族:……いえ、世界が違うのなら、関係ないのか
 
エルム:大丈夫ですかぁ! 何事ですかぁ! 
 
白髪の魔族:うるさい
 
エルム:はいぃぃありがたきぃぃ!! じゃなくて! もしや、これ一瞬で倒したのですか?
 
白髪の魔族:こんな雑魚共、他愛もないわ
 
エルム:結構な数ですよ!?
 
白髪の魔族:数が多いから、何だというの?
 
エルム:これは……いい! いいですね!
 
白髪の魔族:なにが?
 
エルム:いや、ここは譲るしかありませぬ!
 
0:エルムは、彼女の下へ駆け寄り、腰を低くし、忠誠を誓う体制をとる
 
エルム:サティ様。我が一族の当主となってくれませんか?
 
白髪の魔族:?
 
エルム:このエルム、サティ様の下につきたく思います
 
白髪の魔族:……ふっ。「なってくれませんか?」ね。 どのクチが言ってるの?
 
エルム:……え?
 
白髪の魔族:当たり前のことほざいてんじゃないわよ
 
白髪の魔族:もう私がここにいる時点で、決まってるでしょう
 
エルム:(……私が現当主であると分かっていながらのこの態度……!凄まじいサディスティックオーラを感じる!)
 
白髪の魔族:いうなら、丁寧にいいなさい
 
エルム:は、はい、えっと
 
白髪の魔族:遅いんだよ、ほら!
 
エルム:あ、あぁ蹴らないでぇぇん!
 
白髪の魔族:ノロマが
 
エルム:えっと……その、貴方様に、この惨めで情けない私に変わって、受け継いでほしいのですぅ
 
白髪の魔族:足りない
 
エルム:えっ
 
白髪の魔族:もっと
 
エルム:は、はぃぃぃぃ! お願いします! お願いしますぅ! お願いしますぅ! サティ様!
 
白髪の魔族:ストップ
 
0:白髪の魔族は何かを思い出したかのように蹴ってエルムの言葉を止めた
 
エルム:ごふぅ!?
 
白髪の魔族:そうだわ。せっかく新しい生を受けたのだから、別の名前が欲しいところね。それなら……痛白斬光から、とろうかしら
 
エルム:別の名前、ですか
 
白髪の魔族:……決めた。「斬光」よ
 
エルム:おお、既に別名をつけていくスタイル……最高です
 
白髪の魔族:ん……? どういうこと?
 
エルム:魔族の中でも強い存在達は、異名といいますか、別名があるのです。大体の魔族は、周りから強力な存在と認識された時につける風習がありまして……といってもまぁ、暗黙の了解というやつですが
 
白髪の魔族:ふぅん。よくわからないけど、なんでもいいわ
 
白髪の魔族:じゃあ、もう一回
 
エルム:もう一回!! はい! お、お願いしますぅ! 斬光様ぁ!
 
白髪の魔族:うるさい、もっと静かに
 
エルム:お願いします、斬光様
 
白髪の魔族:声が小さくて聴こえない、はっきり言え
 
エルム:お願いしますぅぅぅぅ! 斬光様ぁ!
 
白髪の魔族:あぁ気が悪い、やり直し
 
エルム:そんな理不尽なぁぁぁ! がはぁ!
 
0:斬光はエルムを蹴りまくった
 
白髪の魔族:早くやれっていってんでしょうが
 
0:
 
エルム:(それからは、まぁ本当に恐ろしいもので……斬光様は今まであったどのクリーチャーよりも、どの魔族よりも、言葉はエグいわ、たくさん暴力はふるうわで……控えめに行って、最高でした……)
 
エルム:斬光様ぁ! 右の崖一帯にいますぅ!
 
白髪の魔族:うざい、邪魔、目障り
 
エルム:(そして、窮地に陥っていた私を救うかのように、斬光様は領地を広げていきました……とんでもない。というか、一応この人、いくつなんだろうか……とりあえず、あの門から召喚されたのが、生まれた年とすれば……0歳?)
 
白髪の魔族:なにボケっとしてるのよ?
 
エルム:え? あーいや、おいくつなのかなぁと思って
 
白髪の魔族:お前ごときが、私と対等に、年齢の話? 生意気ね!
 
エルム:あいたぁーい!そんなつもりはぁー!
 
白髪の魔族:あぁそうだ。試しにやられてきなさいよ。ほら、まだクリーチャーいるし
 
エルム:え?
 
白髪の魔族:早く行けよ
 
エルム:あ、ちょ心の準備があぁぁぁあ! いだだだだだーー!
 
白髪の魔族:ぶっ、ははは! 袋叩き、おもろ……!
 
エルム:た、助けてくださぁぁい
 
白髪の魔族:あぁごめんごめん、忘れてた。……「痛白斬光(つうはくざんこう)」
 
エルム:た、た、助かった……
 
白髪の魔族:というかさ、あなた魔族よね? なんで雑魚クリーチャーにやられてるのよ?
 
エルム:い、いやぁいきなり斬光様が背中を蹴るからぁ
 
白髪の魔族:は? お前が使えないだけでしょうが
 
0:斬光は容赦なくエルムを蹴る
 
エルム:いたいぃぃぃ
 
白髪の魔族:あぁ、ごめんね。……それで、どのあたりが痛かった? ねぇ、言ってみてよ? 
 
エルム:……えっと、後頭部が、おもに……
 
白髪の魔族:分かるように説明しなよ
 
エルム:す、すいませんんんんん
 
白髪の魔族:あっはははははは! あぁ、お腹痛い……。あなた、本当に役立たずね
 
エルム:わ、笑っておられる……たまりませぬ
 
エルム:(斬光様は、あれから少しずつ、笑顔を取り戻していったように見えた。まぁ、そんなことをまじまじと言ってしまえば罵られ、痛めつけられの応酬はわかっていたので言わなかったが……別に言ってもいいんだけどね!……それにしても、何とも強いお方だ……今まで歴代の当主が居たが、比べ物にならない)
 
白髪の魔族:ボサっとしてんじゃないわよ。ほら、早く立て
 
エルム:ぐ、ぐぬぅ……
 
白髪の魔族:……はぁ。「痛白斬光(つうはくざんこう)」
 
エルム:あいたぁぁぁい! んんんん!
 
白髪の魔族:立てよ、ノロマ
 
エルム:そ、そんなにいたぶられたら……足がパッキリしてしまうですよぉぉん
 
白髪の魔族:じゃあそのまま折れちゃったら? 貴方の足なんてどうでもいいから
 
エルム:う、うっひぃ
 
エルム:(そして、何よりも、何よりも……いたぶるのがだーいすきな、美しい女性!! あぁー良かったぁ、当主明け渡して)
 
白髪の魔族:ほら、帰るわよ、エルム
 
エルム:は、はいぃぃ!
 
エルム:(もう、領地の奪い合いなんて、どうでもよくなるような……完成された関係だぁ)
 
0:
 
白髪の魔族:(……気持ち悪いくらい、従順ね。でも、そ……悪くないわ)
 
白髪の魔族:(まるで……いえ、昔は昔。あれは全く別物)
 
白髪の魔族:(なにせ、今はこんなに気分がいいのだから……、生まれ変わった事に感謝しなくてはね……ふふ……)
 
0:
 
エルム:(斬光様とは、本当に楽しくもエキサイトな日々ばかり送っている)
 
エルム:(日が経つことに、あの魅惑的な笑みが、またさらに磨きがかかっていて……)
 
エルム:…っ!ぐ……
 
エルム:…そう、か……もう
 
白髪の魔族:……何をしているの?
 
エルム:っ! 斬光様! 
 
白髪の魔族:……その、胸の光、何?
 
エルム:……あはは。それがぁ、申し訳ないんですがぁ、ここまでのようです……。実は、以前に人間たちの襲撃で、光魔法をかけられて…まぁ、毒みたいなものです
 
白髪の魔族:……え?
 
エルム:……我が一族……易々と死なない体ではあるんですが、光魔法が苦手なもので……どうやら、毒の概念を応用して作ったらしく……人間も、考えますねぇ……
 
白髪の魔族:……
 
エルム:でも……良かった、です。斬光様が、当主になられ、しかも、貴方様と、理想の生活を、送れたのですから……
 
白髪の魔族:っ、はは……。あははははははははははは!
 
エルム:……斬光様?
 
白髪の魔族:本当に残念ね。もっといたぶってあげようかと思ってたのに……
 
エルム:……と、いいますと?
 
0:そういうと、斬光は、ゆっくりと唱えるように言った
 
0:
 
白髪の魔族:『……傷つけて、痛めつけて、死にかけたところを助けて、
 
白髪の魔族:傷つけて、殺し掛けて、ごめん大丈夫って謝って、あなたの心を汲み取って
 
白髪の魔族:また縛って、傷つけて、蹴って、また汚して、苦しくなったら包んであげて
 
白髪の魔族:首を絞めて、また縛って、殴って、焼いて、刺して、傷が出来たところをなでてあげて
 
白髪の魔族:また刺して、暗い所に閉じ込めて、口を縛って、明るいところにだして、
 
白髪の魔族:辛かったねって言葉をかけて、唾をかけて、また蹴って、殴って……』
 
0:
 
白髪の魔族:……そう、そして最後に。高らかに吐くように、貴方に向かって言うのよ
 
0:
 
白髪の魔族:『これが欲しかったんでしょ?』って
 
0:
 
エルム:……なんと、なんと至福な、フルコースッ……!!!
 
エルム:それを、それを、体感できないのは……本当に、本当に、残念です……
 
0:エルムの体から力が消えた
 
白髪の魔族:……っ。クソが
 
白髪の魔族:……この、このッ!
 
0:斬光は容赦なく、死体となったエルムを蹴り続けた
 
白髪の魔族:……
 
白髪の魔族:私の許可なしで、勝手に死ぬんじゃないわよ。生意気な下僕ごときが
 
0:
 
白髪の魔族:(エルムが死んでから、数年後)
 
0:斬光は城の玉座に座っていた
 
白髪の魔族:随分と南の方まで占領がすんだ。それにしても、どうしようもなく弱い連中ばっかり
 
白髪の魔族:せっかくこの力を存分に味わいたいと思ったのに、実験台にもならない
 
白髪の魔族:つまらないわ……もっと楽しみたいものよね。せっかくの「2度目の人生」なんだから……クク
 
摩天:ほぉ~座り方がまるで女王様そのものやな。貫禄(かんろく)を感じるで
 
白髪の魔族:っ!?
 
0:斬光は一瞬、気が付かず、すぐに玉座から降り、後ろに向かって光の針を投げようとする
 
摩天:おぉぉぉ~。落ち着きんさいな!
 
白髪の魔族:人の根城に侵入してくるなんて、良い度胸してるわね。誰?
 
摩天:ワイの名は「摩天(まてん)」。魔名(まめい)持ちや
 
白髪の魔族:魔名?
 
摩天:強い魔族のことや。確か、「斬光」だったかな?
 
摩天:噂には聞いとるでぇ~。何せ、他の魔族、ほとんど半殺しだとか
 
白髪の魔族:興味があって見学でもしにきたの? 物好きね
 
摩天:見学やなくて、用があってきたんや。今度、強い魔族で集まる会があってのう。あんさん、結構名をあげとるらしいから、呼んでみようと思ったんや。ま、ただの顔合わせやけどな
 
白髪の魔族:領地の取り合いをしているのに、お茶会でもするのかしら? なら、お茶ではなくて貴方の血が代わりに欲しいものだわ
 
摩天:ほぉ~、あんさん吸血鬼か? ……いんや、でもなんか他にも混ざっとるように見えるけど……まぁええ。どっちにしろ、ワイはそんなサービスせえへんで?
 
白髪の魔族:そっちじゃないわよ。
 
摩天:へ? 飲む以外何があるんや?
 
白髪の魔族:飲むためじゃなくて、血を流している愚かなあなたを、みるためよ……!
 
白髪の魔族:斬光の痛技(つうぎ)「ペインニードル」
 
摩天:おっと! そうはいかへんで!
 
0:白髪の魔族はすかさず、光の針を生成し、摩天へ投げる
 
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「サンダスウォール」
 
白髪の魔族:ちっ
 
摩天:おっかないなぁ…。そんな生き急いだらあかんで。魔族は魔族なりに、上手に暮らしとるんやから……人間に脅威を与えていくことでな
 
摩天:摩天の楼技(ろうぎ)「ドラグトルネイド」
 
0:摩天は手から風を繰り出す
 
白髪の魔族:人の館を荒らさないでよ
 
白髪の魔族:斬光(ざんこう)の痛技 「ペインズレーザー」!
 
摩天:おおっと!? なんつー野太いレーザーや……!
 
白髪な魔族:惜しい……もう少しで穴あきだったのに。精度が足りないかしらね、この技
 
摩天:さっきの技とよう似てるけど、全然違うわ……あんさん、その光を器用に、操れるみたいやな?
 
白髪の魔族:せっかくなら、もう一発受けてみる?
 
摩天:待て! ちょっと力がどんなもんか、試しただけや
 
摩天:とりあえず、その針、おさめてくれんか?
 
白髪の魔族:……まぁいいわ。すぐに殺してもつまらないし
 
摩天:おお怖い怖い
 
摩天:ほんじゃ、また会えるのを楽しみにしとくわ
 
0:摩天はそういって、斬光の前から姿を消した
 
白髪の魔族:ふふ……私以外の、強い魔族、ね
 
白髪の魔族:いいえ、それだけだと飽き足らないわ
 
白髪の魔族:人間に脅威を与える、なんて言ってたけど……どうせなら、特段の「痛み」を与えてあげないと、勿体ない……
 
白髪の魔族:さて、この世界の存在は、私の「痛み」の前に耐えられるかしら?
 
白髪の魔族:ふふ……あはは……あはははは!
 
 
 
 

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