【声劇台本】ロストソルジャー
「愛と平和は守れない」
異形の怪物「ドウル」が現れる伊名場町(いなばちょう)
平愛機関に所属する神音 舞輝(かみね まいき)は、ドウル達と戦っていた。
しかし突如、ロストソルジャーと呼ばれる戦士が現れる
5人劇
40分程度
雰囲気を崩さない程度のアドリブ言い換えは可
イメージイラストはNovel AIで作成
キャラクター
・赤城(あかぎ)
赤城(ロストソルジャー)
・神音(かみね)
神音(ピスラトルーパー状態)
・美鳩(みはと)
美鳩(ピスラトルーパー状態)
・渚(なぎさ)
・セルーペ
・マガツ
マガツ (ロストソルジャー)
ヒデじい様の声劇台本置き場にも置いております
シナリオ本文
0:街に群がる異形の怪物、「ドウル」
0:それを見据える1人の青年
0:赤い炎を胸に宿し、今日も敵を倒しゆく!
赤城: とっとと燃やして終わらせるぜ
0:そう言って、青年は構える
赤城:…「魔血 転命(まけつ てんめい)」!
0:青年の周りに段々と、赤い炎がまとわれていく
0:やがて、赤い戦士に姿を変えた
赤城:焼かれる覚悟は、できてるか?
0:
0:
0:数時間前
赤城:……
ニュース:先日、伊名場町(いなばちょう)内で、ドウルが出現し、平愛機関(へいあいきかん)が対処したとの情報が入りました。しかし、機関によれば、既にドウルは居なくなっており……
赤城:連日だな……
渚:何がですか?
赤城:休憩か?
渚:お疲れさまです!赤城先輩!
赤城:今日もさっぱり、にぎやかだな、渚は
渚:ていうか、何見てるんです?
赤城:ドウルのニュース
渚:最近、多いですよね……
赤城:……。でも、平愛(へいあい)が守っている。この町は安全だ。不安になることはない
渚:赤城先輩が言うと、なんか安心するなぁ
赤城:べつに何もしてないぜ?
渚:じゃあ、私がもしドウルに襲われたら、助けてくださいね?
赤城:一般人だぞ、俺は
渚:あっ、そうだ! 明日、空いてます?
赤城:明日? どうだったかな
渚:もし空いてたら、一緒にお祭り行きませんか?
赤城:あぁ。町内祭りか、退屈そうだ
渚:うわぁー、そういう事いうー
赤城:1人で行って来いよ、それかほかの友達と……
渚:先輩じゃないと駄目なんです
赤城:はっきり言うな……
渚:(小声)だって、先輩と仲良くなれるチャンスだし……
赤城:? 何か言ったか?
渚:何でもないです! じゃ、私買い出しいってくるので!
赤城:なんで怒ってんだよ。はいはい、いってら
0:そう言って、渚は買い出しへ向かった
赤城:俺が隣にいるのは、本当に場違いだぜ、渚……
0:
0:
0:平愛(へいあい)機関 伊名場町拠点 訓練場
神音:…はぁっ!
美鳩:タイムアップ! お疲れ、神音さん
神音:どうだった?
美鳩:昨日に引き続き、動きも鈍くない。流石でございます
神音:ただ、データが弱いわ
美鳩:先週現れたドウルの戦闘データ、すでに読み込ませているはずだけど
神音:そうなの?
美鳩:数、増やす?
神音:数が増えても、1体1体の攻撃パターンが毛並み程度だと、何とも言えないわ
美鳩:じゃあ、無限増殖で、どこまで神音さんの体力が持つか、限界チャレンジするのはどう?
神音:今の訓練よりはマシかもね
美鳩:どM~。愛と平和を守るその固い強さ。見習わないといけませんねぇ
神音:へぇ…。そういえば美鳩、最近実践経験足りてないんじゃない?
美鳩:ほぇ?
神音:たまには一緒に訓練してもいいのよ? 何回でもなぶってあげるから
美鳩:神音さんと? いやぁ無理ってぇ~
神音:それとも……生で斬られたい?
美鳩:ごめん~!ごめんて~神音さん~!
神音:謝罪の気持ちが足りないわね
美鳩:ごめんなさい…神音様!
美鳩:貴方の神々しき戦い方! お供をしていて心にキュンときますわ!
神音:全く……暇な時こそ、用心にこしたことはないのよ、美鳩
美鳩:へーい……
0:そこで、サイレンがなる
神音:っ!
美鳩:神音さん! 街にドウルが、すぐ近く!
神音:了解
0:
0:伊名場町内
神音:避難状況は?
美鳩:大丈夫。……よし、今日もオールオッケーですな。システムにも問題なし
0:美鳩の声が、神音が腕につけている「装置」から聞こえてくる
美鳩:神音さん、いつでも行きたいときに、行っちゃって~!
0;神音は中に向かって、手をかざす
神音:ピスラシステム、起動
0:神音の体に、青色と水色で構成された、機械の鎧が展開される
0:神音は空中に剣が生成し、手に持った
美鳩:さてさて、今日のピスラシステム、いってみますか!
0:神音の目前には、灰色に、白や黒がまざった異様な人型の怪物がいた
神音:このまま……回転率を上げていく
美鳩:マギアルギーの回転率……70,80……いーよいーよ!
0:神音は「水」を噴射させ、素早い動きを展開する
神音:「水刃撃、烈(すいじんげき れつ)」!
美鳩:よし!一体撃破!
神音:そのまま二体目も、斬る…!
神音:「水刃撃、斬(すいじんげき ざん)」!
美鳩:最後にラス1、いっちゃえ~!
神音:水(すい)へ転じて、空(くう)を裂(さ)く!
神音:「水転 空烈斬(すいてん くうれつざん)」!
美鳩:よし、ドウル撃破! コンディションもばっちりで
神音:美鳩のおかげよ
美鳩:嬉しいね。それにしても、まるでため込んでたストレスを解放したみたいな動きだったね~
神音:ラブ&ピースが保たれてなきゃ、ストレスだもの
美鳩:…?
神音:美鳩?
美鳩:ちょっと待って! これは…別の…熱源反応…?
0:
渚:…はぁ、はぁ
0:街中、渚は後ろを見ながら逃げていた
マガツ:オイオイ。鬼ごっこ、苦手か?
マガツ:まるで喰いがいがないぜ?
渚:(足が、もたつく)
渚:(目の前にいる、怪人たちは、ゆっくりとその足で、追いかけてきていた)
マガツ:まだ、まだだ。つまらねえな。もうちょい逃げろ
マガツ:加熱が足りねぇ
渚:…?
マガツ:最近、生は喰いあきちまってな
マガツ:だから、その震えあがった面で走って、あっためてくれよ
マガツ:恐怖の熱で調理した人間は、格別の美味だ
渚:あ……あ…!
マガツ:…?
マガツ:誰だ?
0:マガツは後ろを振り向くと、マガツと似ているようでどこか違う赤い戦士が歩いてきた
赤城:お前が親玉か?
マガツ:はっは。…喰えない面(つら)、してんな
渚:……あ……あれは……っ!
マガツ:オレと同じ…。ロストソルジャーか
赤城:そういう名前か、これ
マガツ:なんだ、新人か?
赤城:先輩が出来た覚えはないぜ
マガツ:その出で立ち…風格、悪くねえ。みどころあるな
赤城:…これから殺し合いするってのにか?
マガツ:…ああ。その風格の中にあるものが気になってな
0:そこに、神音がやってくる
神音:どういうこと、この状況!?
美鳩:熱源反応が、2体?
美鳩:しかも、見たことないタイプ……赤と、黒い個体……
美鳩:…いや、違う……!!
セルーペ:あーらぁ、楽しそうじゃないの~、マガツ!
美鳩:も、もう1体…!? 今日はマジの本気で、厄日なのこれ~!?
マガツ:体が疼(うず)くか? セルーペ?
セルーペ:あんたばっかり退屈よ。交代してくれない?
マガツ:……ま、いいだろう
マガツ:これで死ぬようじゃ、大したことがねえわけだからな
マガツ:せいぜい観戦させてもらうぜ
0:マガツは笑みを浮かべた後、黒い霧を放ち、消える
セルーペ:じゃあ、さっそく始めようかしら!
0:セルーペが指を鳴らすと、地上からドウルが出てきた
神音:…ドウルが出現した?
美鳩:出現っていうより…これは、まるで、あいつが出したような…?
セルーペ:さぁ、ドウル達、たっぷりと暴れなさい!
神音:あなた、立てる!?
渚:っ……え?
神音:このまま真っ直ぐ走りなさい! 避難場所がある
神音:それまでこの身をかけても、全力で私が守るから
神音:「平愛(へいあい)機関」の名に懸けて…!
渚:は、はい!
0:渚は神音に連れられながら、赤い戦士とをみやった
渚:(逃げていく中で見たのは)
渚:(血のような赤い、炎)
渚:(それは、今まで体験した事のない)
渚:(異様で、底の見えない感覚だった)
0:
セルーペ:ほーれ、さっそく!
赤城:血の気が多いな
セルーペ:それが快感なのに
赤城:快感の矛先、ズレすぎだぜ?
セルーペ:いいクチの、聞き方ねぇ!!
セルーペ:噛み捉えろ、シャドウスネイカー!
赤城:これは…蛇か!?
セルーペ:逃げたところで、どんどん追っていくわよ、それは!
赤城:くっ……!
セルーペ:ほら掴まえた! そのまま大人しく、嚙み砕かれなさ……っ?
赤城:……はぁぁっ!
セルーペ:拳から、炎……?
赤城:黒い蛇ごと、燃え破いてやる!
セルーペ:なんて勢いのある。恐ろしいくらいに燃えるじゃないの……
赤城:殴り燃えろ! 破炎掌(はえんしょう)!
セルーペ:ちょっといやーな熱さね、これ
セルーペ:すずみたいから、ここで喰らわずに消えるわ、バイバ~イ
赤城:っ! 消えた……か
0:
美鳩:神音さん! 雑魚ドウルがきてる!
神音:なら、一気に蹴散らす……!
神音:水来 地烈斬(すいらい じれつざん)!
美鳩:よし! ドウル撃墜…ってまだ出てくる!?
神音:邪魔くさいわね……
渚:あ、足が…
神音:大丈夫、あと少しよ……!
赤城:まだのようだな
神音:…っ、あなた!?
赤城:どけ
渚:…ぁ
0:
渚:(一瞬の出来事か、時間が長かったのか、分からない)
渚:(血のように赤い存在は、出てきた灰色の化物を、「潰していく」)
渚:(いや、潰すような、壊すような、殺すような)
渚:(どう形容すればいいか、分からない)
渚:(底のない暴力に屈している化物たちが)
渚:(血のように赤く、無惨(むざん)に焼かれていくその様(さま)は)
渚:(私の記憶に、また強く刻まれる)
0:
美鳩:すごい……
赤城:これで全部か
美鳩:ドウルの形状とも違うし、ピスラシステムとも違う……
赤城:とっとと失せろ
神音:…そう言って失せる人、いる?
神音:ドウルは消えたわ。あとは貴方だけよ
赤城:…
0:
神音:? 何処に行くつもり!?
赤城:ドウル、ってやつはもう居ないんだろ
赤城:だから帰るんだよ
神音:待ちなさい!
赤城:待たねえよ
0:神音と赤城はにらみ合う
神音:…もし、私達の敵であるなら
赤城:容赦はしない、か
神音:…
赤城:俺は、どう見える?
神音:…え?
赤城:人間か? 化物か?
神音:…それは
渚:…ば…ばけ、もの…
0:渚の声が、冷たく響いた
赤城:…だとよ
神音:…貴方、何者なの
赤城:「ロストソルジャー」
赤城:……らしいぜ
美鳩:…ロストソルジャー
0:赤城はそう言って、神音たちの前から立ち去った
0:
0:
赤城:……ここまでこれば、大丈夫か
0:赤城は変身状態を解いた
赤城:……渚
赤城:当たり前だ。俺に、普通は許されない
赤城:この力を手にした時から、決まってんだ
美鳩:なんだかすごーい言葉が聞こえちゃったねぇ~
赤城:誰だ!?
0:赤城が振り向くと、1人の少女が出てきた
美鳩:何者か!ときかれたら、答えるしかあるまいと!
美鳩:我ら! 平愛機関(へいあいきかん)特殊迎撃(とくしゅげいげき)団~!
美鳩:シャキーン!
赤城:……ああ?
美鳩:さっきまで怪物ばっかりいたのに、なんでこんなところに1人、ポツンといるのかな~
赤城:逃げ遅れたんだ
美鳩:ふぅん。良く生き延びれたねぇ~、「ロストソルジャー」
赤城:……!
美鳩:リアクション、分かりやすいよ~。反応が消えた辺りを探してて良かった
赤城:……つけてたのか
美鳩:君、まさかあの赤い戦士なのかな? 怪我もしてるみたいだし?
赤城:だったら?
美鳩:事情聴取をします
赤城:なんだと?
美鳩:不審者放って置く警察なんかいる? もし、来なければ……
赤城:撃つってか?
美鳩:これはピリッと痺れる電撃銃。ピスラを展開したら使えるんだけどね~。こうやって武器だけでも、出せちゃう
赤城:警察がすぐ銃抜くのかよ
美鳩:僕ら、平愛機関だから。それに君、普通の人間じゃないし
赤城:生身で喰らったら痛そうだ
美鳩:そんじょそこらにあるスタンガンのビリビリとは、違うけどねぇ~
美鳩:大丈夫、お話するだけだから
赤城:勘弁するぜ……!
美鳩:あっこら! 逃げるな!
赤城:っ、あいつ…速い……!
美鳩:ただのオペレーターと思ったら、大間違い!「ライティール・ショット」!
赤城:あっぶねぇ、ガチで撃ちやがる……。なら、角を曲がって……っ!?
美鳩:あっちゃ~残念。君、逃げるの苦手?
赤城:行き止まりか……クソ
美鳩:それじゃ、大人しくしなさいな
0:美鳩は鋭い目つきで、赤城に銃を向けた
0:その近く、赤城達を見ている影があった
マガツ:…なるほどな…クク
0:
0:数十分後、とあるビルの屋上
セルーペ:どこ行ってたのよ
マガツ:寄り道だ
マガツ:…いやぁ、にしても味わいのあるショーだったぜ。おかげでニューカマーを見つけた
セルーペ:高みの見物しちゃって、こっちは必死なのに
マガツ:おいおい、代わったのはお前のほうだろ。ただその様子じゃ、楽しみの一つも感じれなかったようだな、ドウル代表?
セルーペ:嫌味な言い方。……近づきたくないくらいの熱さよ。あの”新入り”君は
マガツ:なんだ、加熱役にはもってこいだな
セルーペ:勧誘でもする気?
マガツ:どうだかな? なら、次は俺がやるとするか
セルーペ:せいぜい、気を付けなさいな
0:
0:平愛機関 伊名場町拠点内
0:
美鳩:赤城陶也(あかぎとうや)、男性、飲食店員……ふむふむ、メモメモ
美鳩:こうやって履歴とると、ごく普通のフリーターにしか見えない
神音:なぜあなたは、「あれ」になれるの?
赤城:こっちばっかり喋らせて、そっちは自己紹介もなしかよ
神音:私は神音舞輝(かみねまいき)。こっちは、九条美鳩(くじょうみはと)。これでいいでしょ
赤城:適当だな……。それで?
神音:質問に質問で返さないでくれる?
赤城:……これだ
美鳩:ほぇ? なんか、すごい装置だね………見たことないなぁ。平愛機関のものでもないし
神音:この装置で、あれになれると?
赤城:ああ
美鳩:うぅ……ん、この装置……どういう構造なんだろう……
神音:没収よ、それは
美鳩:えっ!? あぁ……じゃあ、ってうわっ急に燃えて!
赤城:俺が意識したら、そいつは手元に戻ってくる。残念だが、没収はできねえな
美鳩:どうなってんの
神音:誰からもらったのよ、それ
赤城:開発者だ。あの日から、これを使って…俺は、戦っていた
神音:開発者? それに、あの日というのは
赤城:俺がこの力を使えるようになった日だよ。……これ以上は言う気にならない
神音:黙秘するつもりね
赤城:わざわざ思い出したくないんだよ
神音:……?
美鳩:神音さん。無理に問いただすのは……
神音:あんな化物になれたのよ? 何をしでかすか分からないわ。ここは徹底して……
美鳩:確かに知りたい気持ちも分かるけど。仮にも一般人なわけだし
神音:……それは
美鳩:それにこの人、ドウルだけを倒しているみたいだから、機関にとって敵である可能性は、低いと思うし。今は、この人があの赤い戦士と同一人物っていう情報だけでも、価値がある
神音:……分かったわ。でも、驚異的な力を持っていることは確実。もし住民に被害が出たらシャレにならない
神音:だから、あなたは機関の管理下におかせてもらうわ
赤城:監視ってことか
美鳩:ってことで、事情聴取はここまで! いったん開放!
赤城:そりゃどうも
神音:言っておくけど、何も終わってないから……もし何かすれば
赤城:殺すってか、いいぜ
神音:えっ?
赤城:もし俺が、一線を超えるようなことがあったら、ひと思いにやってくれ
0:
0:赤城は平愛機関から出て、バイト先に戻ってくる
0:
赤城:……店の中は、めちゃくちゃだな。ドウルに荒らされたか
渚:先輩……!
赤城:……よう
渚:無事だったんですね! 良かった
赤城:時間はかかりそうだな
渚:これから数日は休業みたいです
赤城:だろうな
渚:……
赤城:大丈夫か?
渚:えっ
赤城:震えてるぞ、手
渚:……店に帰ってきた時、遭遇して。一目散に逃げていたら……赤い化物と目が合って
赤城:怖かったんだな?
渚:怖かった、です。私も、焼かれるんじゃないかって
赤城:無理に明かるくすんな
渚:大丈夫です。赤城先輩の顔を見たら……っ、良かったって。つい、安心して
赤城:渚……
渚:ごめんなさい。無事なのに泣くなんて、おかしいですよね
赤城:……何もおかしいことじゃない
渚:え?
赤城:……明日、祭りあったんだったな。一緒に、行くか
渚:……! はい!
0:
0:翌日。伊名場町。町内祭り
赤城:人が多いな
渚:人がいない祭りなんて、祭りじゃないですよ
赤城:冗談だ、冗談。行くか
0:
渚:はい!わたあめ
赤城:好きだな、それ
渚:美味しいですよ?
赤城:焼き鳥1つ、喰えれば十分だ、俺は
渚:買ってありますよ。はい
赤城:はやいな……。さんきゅ
渚:一緒に食べましょ
0:
渚:はぁー。美味しかった!
赤城:だな
渚:……良い空
赤城:……悪い空じゃないな
渚:先輩
赤城:っ?
0:渚が赤城の肩にゆっくり寄せる
渚:……あったかい
赤城:渚?
渚:夢に出てくるんです。赤い怪物が、あの目で、追いかけてくる夢を
赤城:……!
渚:私はそれが怖くて、逃げてて、叫んでて……。でも、最後には
渚:最後には、助けてくれた人がいて、それで夢は終わりました
0:渚はぎゅっと、赤城の裾を握る。透き通った渚の目が、赤城の眼をとらえた
渚:先輩の温度が欲しいんです。少しでも離れたら、あの眼を思い出しちゃうから
赤城:あったかいなんてものじゃねえよ
赤城:俺と居たら、焼かれちまうぞ
渚:なんですか、その冗談
0:そこで、赤城の携帯がなる
赤城:…悪い渚、ちょっと電話が
渚:…あっ
0:赤城はすぐに渚から離れる
赤城:……すぐに戻ってくる
渚:じゃ、じゃぁ。私、別の屋台、行ってきますね!
赤城:まだ喰わせる気かよ
渚:当たり前です。そういう時間ですから、今は
0:渚が先に行ったのを確認してから、電話に出る
赤城:……もしもし?
神音:悠長ね
赤城:お前、まさか
神音:何処にいるかくらい、分からないとでも思った?
赤城:徹底してやがるぜ
神音:ラブ&ピースのためだもの、いくらでも言いなさい
赤城:……渚が行きたがってたからな
神音:あぁ……あの時の。ドウルから保護した時も、ずっと震えていたわね
赤城:俺が与えちまったんだよ、あいつに
神音:えっ?
0:
0:数週間前
赤城:これで今日は、全部か……グッ
住民:ば、化物……っ!
赤城:逃げ遅れた……住民か……馬鹿やろう……はやくにげ……ッ!?
赤城:クソ…まだ、制御がきかねぇ…か…グゥ……ウウウッ!
赤城:グ……クク……ハハ…スベテ……コロ……ス!! グゥ……ガアアアア!
渚:あっ……ぁ
赤城:あれは……なぎ……さ? グゥ……ウゥ……!
0:
0:赤城は暴れる力に抵抗するように、渚のもとから離れた
0:
赤城:あいつの平和を、あいつの気持ちを、もう俺は踏みにじってんだ
神音:……
赤城:だからこれは、せめてもの報いなのかもしれねえ
美鳩:じゃあ、思いっきり楽しんじゃいなよ!
神音:美鳩……。通信に割り込んできたと思えばあなた
美鳩:デートは邪魔するもんじゃないよ、神音さん
神音:私は万が一のことがあると思って
赤城:痴話喧嘩ならよそでやってくれないか?
神音:言ってくれるわねぇ……?
美鳩:まーまーまー! とりあえず、祭りも私らが見回りしてっから!
神音:調子のいい子ね……
美鳩:平和を楽しんでもらうのが一番! それが我ら、平愛(へいあい)機関の理想の形でしょ!
神音:赤城君。もし何かあっても、変身しないこと
赤城:変身?
神音:あの姿になることよ
赤城:……何もなかったらな
神音:ふざけないで
赤城:ふざけてねえよ
神音:ッ。……この
赤城:(さえぎる)もう用はすんだろ。きるぞ
0:
0:赤城に電話を切られる
神音:(舌打ち)。あいつ
美鳩:そんなにギスギスしないでってば。ラブ&ピースが守られれば、それでいいわけだし
神音:……そうだけど。いちいちシャクにさわるわ
0:
0:
赤城:渚のやつ……どこいったんだか
0:そこで、遠くのほうから悲鳴が聞こえた
赤城:っ……? 悲鳴……!?
0:
0:祭りの喧騒から離れ、建物の上で、祭りの様子を眺めている影があった
マガツ:いやぁ、賑やかいなぁ。高い所から眺めると、なお感じる
マガツ:日常のちょっとしたイベントっていうのは、飽きた時に喰う菓子みたいなモンだ
セルーペ:人間も平和ボケしてるわよねぇ。刺激があるまで、思考停止の生き物だもの
マガツ:……お、あれは?
マガツ:はは、面白い食材がいるじゃねえか
セルーペ:物好きねぇ
マガツ:ああ、なにせ新人のお気に入りだ、ありゃ。挨拶にいってくるか。景気良くなァ
0:マガツは奇妙なデザインのバックルを腰につけ、構えを取る
マガツ:……魔血、転命(まけつ てんめい)!
0:マガツの周りに黒いオーラが経ちこみ、黒い怪人のような姿に変わる
マガツ:クク……さぁ、軽く滅日(ほろび)を、始めるか
0:祭り中の街中、ドウルが人々を襲おうとぞろぞろと現れる
赤城:クソッ! ドウルか! こんな時に…っ!
赤城:渚っ……! どこだ……!
神音:赤城君!
赤城:お前……!
神音:あなたは逃げなさい!
赤城:そんなことできるか!
神音:ッ! 一般人が、でしゃばらないで!
赤城:っ…!!
神音:そのわけの分からない力で、被害者が出たらどうするつもりよ!
赤城:持ってても、使わなきゃ意味がねえだろ!
渚:きゃあああっ!
赤城:っ! 渚の声……!
0:
マガツ:なんだなんだ、シビれるじゃねえの
渚:っ……あ
美鳩:彼女をはなせ!
マガツ:そう言われて簡単に離すやつはいねえ。悪の立ち回りは、いつの時代も決まってんのさ
美鳩:だったらもっと、ビリビリさせてやるっての。
マガツ:ほう……?
美鳩:ピスラシステム……起動!
0:美鳩は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する
マガツ:平愛の兵器か……
美鳩:これであんたをぶち抜く!
マガツ:ほれ、やってみろ
美鳩:……っ! 「ライティール・ショット」!!
マガツ:冥間(めいかん)を防げ。防黒ノ怨壁(ぼうこくのおんへき)
美鳩:っ、防がれた!?
マガツ:こんなもんか? 喰らっても不味い飯だな、こりゃ
美鳩:片手で……? だったら、もっと出力を!
セルーペ:それなら、私が相手しましょうかしらねぇ!!
美鳩:っ! こいつもいるのか……!
セルーペ:噛み捉えろ、「シャドウスネイカー!」
0:美鳩が銃攻撃で、蛇を消していくが、まだ現れる
セルーペ:おーっほっほっほ! 残念! そっちばっかり意識してたら、ほら!
美鳩:があっ……!
0;美鳩が蛇を撃っている最中に、セルーペが蹴りをくわえ、飛ばされる
神音:美鳩ッ!
美鳩:ごめん、ミスった……
神音:……あいつは、昨日の黒い個体!
マガツ:おお、怖い怖い。 愛と平和を好(この)んでるのに、向けるのはしかめっ面か
マガツ:矛盾した味を提供してくれるじゃねえのさ
神音:……なめてるの?
マガツ:褒めてんだよ。守ってくれなきゃ、悲鳴という名の料理が楽しめない
神音:……こいつ
美鳩:熱源反応が、あまりにも違う。あいつら……やっぱり普通のドウルじゃない。油断は禁物だよ、神音さん
マガツ:客人が揃ったな。さっさと喰っちまうところだったぜ?
赤城:渚!!
マガツ:さて。さすれば、そこの新人。俺の興味を満たせ。
赤城:相手をしろってことか
マガツ:察しがいいのは嫌いじゃない。もし断るなら、この女は……食材だ
0:マガツは渚の髪を引っ張った
渚:っ……!
美鳩:渚さん……!
赤城:……上等だよ
神音:っ……あなたまさか……渚さんがいるのよ!!
赤城:それでも、黙って見ているわけにはいかねえんだよ!!
マガツ:……そうだよなァ。自分の姿は、さらさねえと
0:マガツは不敵に笑う
マガツ:人間、キレイ事を求めちまいたくなる……何もクセのない味ばっかりをな。
マガツ:だが、それは真実の味じゃあねえ。見えないもの、隠したいもの、それを隠せば隠すほど…見えなくすればするほど、影の味は、どんどんと深みを増していく……。熟成された味を、提供してくれるんだなぁ、これが
渚:……えっ?
神音:辞めなさい!!
0:赤城はバックルと腰に装着し、構えを取る。
0:
渚:…せん……ぱい……?
0:
赤城:魔血 転命(まけつ てんめい)
0:瞬間、赤城の周りに炎が現れた
渚:……あ……あ………そんな……うそ
0:渚の震えたことあいはんするように、赤城の体は、赤い戦士へと変貌した
赤城:ごめんな、渚
0:
マガツ:いいねぇ……。こいつは美味だ
赤城:場所を変えろ、てめぇとのサシだ
マガツ:ああ。お望みどおりに。この女の絶望は味わった。腹八分目にしねえとな
赤城:…っ!
0:マガツは黒い霧を展開し、赤城と共に姿を消した
0:消えたと同時に、渚がマガツから解放される
セルーペ:本当に食いしん坊ねぇ、あの人は。胸やけ起こしそう
美鳩:……2人が、消えた。熱源反応が移動してる
神音:ふざけるのも、たいがいにしなさいよ…
0:神音は、渚に声をかける。渚の表情は見えない
神音:…渚さん
渚:……はい
神音:前にも言ったと思うけど、何回でも言う。あなたはどんなことがあっても、最後まで守り抜く。貴方の命は、脅かさないから
0:神音は強く、渚に伝えた
神音:……ピスラシステム、起動!
0:神音は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する
神音:美鳩、いける?
美鳩:当然。そっちこそ、私のオペ、なくてもだいじょぶ?
神音:ええ
美鳩:よーし、ラブ&ピースのために、いっちょやりますか!
セルーペ:準備できたかしら?
神音:待ってくれるなんて、優しいのね
セルーペ:楽しみがいがないからねぇ……じゃあ、まとめて仕留めてあげるッ!
美鳩:来るっ!
セルーペ:嚙み捉えろ……! 「シャドウスネイカー」ァァァ!
神音:数が……多すぎる! これじゃ、本体に攻撃が届かないっ!
セルーペ:ほれほれ! 無様に!豪華に! 怯え続けるのよ!! それが人間が与える娯楽!
セルーペ:さぁ、骨の髄(ずい)まで噛まれて、快楽の餌(えさ)となりなさいな!
美鳩:神音さん! 私が、あれを全部撃つ……! その隙に!
神音:頼むわ!
美鳩:マギアルギー……フル回転…電撃弾、作成完了!
美鳩:連(つら)なり痺(しび)れろ!「ライティール・フルショット」!
セルーペ:なにっ!?
美鳩:さっきやられて……分析がすんでるんだよ! ……今だ!神音さん!
神音:マギアルギー、フル回転…はぁぁっ!
セルーペ:奴の刀が……水に覆われて……いや、体も?
神音:青(あお)き調和(ちょうわ)へ、回(まわ)り穿(うが)つ!
神音:水波 羅旋突(すいは らせんとつ)!
セルーペ:ぐっ! ぅぅ……。
セルーペ:あっちは熱い炎くんで……こっちは、鋭い水っ子に、ビリっと痺れる嬢ちゃん(坊ちゃん)ねぇ……温度差が、激しいのよ全く……!
神音:終わりよ!
セルーペ:ノーエンド! 置き土産よ!
0:セルーペは目然に黒蛇を放ち、姿を消す
神音:っ!邪魔っ!! ……美鳩、あのドウルは!?
美鳩:ドウルの反応、消失……。他のドウルも、一斉に消えたみたい
神音:目的は、あの黒い個体のため……ということかしら
0:神音は、渚に歩み寄った
神音:大丈夫?……じゃない、わね
渚:ごめん……なさい……もう
神音:無理に話さなくていいわ
渚:頭が……ぐちゃぐちゃになりそうで……もう、……いや……
神音:……っ
美鳩:いったん拠点に戻ろ、神音さん
美鳩:今は……渚さんを落ち着かせないと
神音:ええ……
0:
渚:(この日以降、私はあの夢を見る事は、なくなった)
渚:(そっか……ずっと最初から、おかしかったんだ)
渚:(私の知ってる赤城さんは、もうそこには居なかったんだ…)
0:
0:人気のない。廃ビルの近く
マガツ:さて、昨日の続きといこうじゃねえか、新入り
赤城:とっととケリをつけてやる
マガツ:まぁゆっくり行こうぜ……早食いは寿命が縮んじまう。
マガツ:……どうだ? ロストソルジャーになった気分は?
赤城:良いとは言えないな。ただ、前よりも力はなじんできたか
マガツ:コントロールが効いてきたか。優秀だな
赤城:褒められても、特段嬉しくないぜ
マガツ:……ピュアな関係だったんだろ? あの女と
赤城:お前に言ったところでどうなる?
マガツ:いやぁ、しっぽり味わいたくてなぁ
赤城:何?
マガツ:愛していた人間が、最も恐怖するものだった……ひでぇ話じゃねえか……。絶望の物語は……非常にそそるぜ
赤城:そのために、わざわざ渚を掴まえたと?
マガツ:お前と一度手合わせしたいってのは本音だ……。でもそれだけじゃつまらねぇ。せっかくなら食事もしたいだろ?
赤城:ふざけやがって……
マガツ:大真面目だぜ? 俺は。 ガキのように走り回らず、座ってしっかり食事をするさ。メニューの名前は……「隣り合わせの希望と絶望」。
マガツ:相手の光が見えた時、それは同時に闇を認識するってことだ。その隣り合わせになった、光と闇の狭間の中に、何ともいえねぇ味が秘められてるのさ。いいダシがとれるぜ?
赤城:そんな味はごめんだ
マガツ:好みが合わねぇなぁ。……にしても、残念だったな。お前がバケモンになっちまったばかりに
赤城:構わねえさ
マガツ:ほう?
赤城:どうせいつかはバレるんだ。自分がヒーローになれるなんざ、微塵も思ったことはないぜ
マガツ:……いいね。面白い新人だ。先輩を楽しませるのは実に良き。それでこそやりがいがある!!
赤城:っ! 黒い爪!?
マガツ:狂(くる)い乱(みだ)れろや……「邪狂 爪乱」(じゃきょう そうらん)!
赤城:ぐっ……くそ……ったれ!
マガツ:ぼさっとしてたら、えぐられちまうぜ?
赤城:やらせねえよ……破炎掌(はえんしょう)!
マガツ:おっと…。しょっぱなから熱い殴りだな
赤城:こういうのは好みか?!
マガツ:ああ、焼き物にされちまう
赤城:拳だけじゃねえぜ……はぁっ!
0:赤城は一回転して蹴りを放ち、マガツはそれを止める
マガツ:ほぅ、大したもんだ。空を切っただけでも、「暴れ」を感じる
マガツ:たぎってる…たぎってるな、はっは
赤城:何の話だよ?
マガツ:守るなんて類(たぐい)じゃねえ。そう、これは……
マガツ:純粋な破壊(はかい)だ!
0:マガツはそう言い、赤城の攻撃をはねのけた後、反撃を繰り出す
赤城:違うな。それはお前が、勝手に決めてるだけだ!
0:赤城はそれを避けて、すかさず反撃を行う。マガツの胸部に赤城の拳がヒットした
マガツ:…ぐっ
0:マガツはそれを受けつつ、距離を取る
赤城:愛と平和は守れない。人でも、なんでも。
赤城:守りに向いてねえのさ、俺は
赤城:でも、力をめいいっぱい入れて、目の前にいる敵を倒す事なら、できる
マガツ:やってしまったほうが早い、と
赤城:殴る蹴るは、俺の性にあってるんだ。次は潰すぜ
マガツ:なるほど…。個人的事情も介していないこの力…復讐の恨みでもない。期待の新人だな、こりゃ。
赤城:そいつはどうも
マガツ:喰えないが、いい味だ……!
赤城:…!? なんだ…?
0:マガツは両手を広げて、目然に黒い大きな玉を形成し、大きくなっていく
マガツ:黒(くろ)の中で、糧(かて)となれ
マガツ:黒魔 焉冥波(こくま えんめいは)!
0:瞬間、黒い波のようなものが、勢いよく赤城に向かって放たれた
赤城:…っ!
マガツ:爽快だぜ! 滅亡へ導く力は!
マガツ:苦しみや絶望ってのは、これだから美味なんだよ……!
赤城:…赤(あか)に焼かれろ
マガツ:…? 消えた?
0:赤城は炎の翼のようなものを広げ、天高く飛び上がっていた
マガツ:いや…空中か…!
赤城:「赤魔 爆炎蹴(せきま ばくえんしゅう)」!
0:血のような赤い炎を伴い、マガツに向かって空中から勢いよく蹴りを放つ
マガツ:ぐっ……がァァァ!
0:
マガツ:はぁ……ハハ
マガツ:良くない痛みだぜ。欲しくない味だ
赤城:くだばらねえか。いや、寸前で何か張ったか?
マガツ:先輩は敬(うやま)ないとな……。んじゃ、このあたりで退散するとしようか…
マガツ:冥(みょう)の霧となれ
マガツ:「冥楼(めいろう)」
0:マガツは黒い霧を出し、その場から消えた
赤城:…消えやがったか
0:
0:それから数日後
0:伊名場町内
神音:遅いじゃない
赤城:別に時間は決まってねえだろ。ちゃんと来ただけでも褒めたらどうだ?
神音:うるさいわね。……あれからどうなったの?
赤城:逃げられた。そんだけ
神音:……そう
赤城:問いたださねえのか?
神音:その件はいいわ。あなたが話したいときに話なさい
神音:それに今日はそのつもりで来たわけではないのよ
赤城:なに?
神音:渚さんに伝えたわ。あなたが赤い化物になれること。そのことを口外しないようにと
赤城:それで、渚は?
神音:納得はしてくれた。整理はできてない、ようだけれど
赤城:…そうか。
0:そこで、赤城のスマホが鳴る
赤城:……電話? 渚から……?
神音:っ……
0:
渚:……先輩
赤城:ああ、俺だ
渚:そうですね。声は、私の知ってる先輩です
赤城:……バイトは辞める
渚:えっ?
赤城:もうお前とは会わない
渚:……
赤城:俺のことは忘れろ
赤城:そんなことすれば、お前が怖がっている化物も、一緒に思い出してしまう
渚:……ごめんなさい
赤城:無事で良かったよ。……じゃあな
0:赤城はそう言って電話を切る
神音:馬鹿じゃないの、あなた
赤城:あ?
神音:よりによって、彼女の前で、姿を変えて
赤城:俺がこの力を持った時から、いずれこうなると思っていた。それがはやかっただけだ
神音:あなたは……。いつ……穏やかになるつもりなのよ
赤城:っ?
神音:自分が化物だといって、彼女との繋がりを断ってまでして、それでまた戦って……
神音:あなたの平和は、どこにあるの?
0:神音が真剣な表情で、かつどこかもの悲しげに、赤城を見る
赤城:そんなもの、いらねえよ
神音:……っ! ……はぁ
0:神音は一瞬怒りかけるも、ため息をつく
赤城:用がすんだなら帰るぜ
神音:待ちなさい
赤城:? まだあるのか
神音:平愛(へいあい)機関から、法来町(ほうきちょう)の拠点に来るように、言われたわ
赤城:法来町(ほうきちょう)……隣町か。わざわざ異動のことを伝えに来たのか?
神音:あなたは管理下って言ったの、忘れたわけじゃないよね?
赤城:それは変わらないと。成程、くぎを刺しにきたか
神音:ええ、あなたも拠点に来てもらうわ
赤城:……は?
神音:平愛機関の一員として働いてもらうのよ
赤城:……ちょっと待て
美鳩:おめでとう赤城さん!
赤城:うおっ!?
美鳩:これで機関の仲間入りです!! ドンドンパフパフ!
赤城:……いやだから! どういうことだ!?
美鳩:それはこの私からみーずから、説明しよう! あれから上層部に報告すると……「あくまで人を助けているなら、その力を正しい所に使った方がいい」って言われちゃって、あーなるほどそれもそうですねぇー納得でござるー! ってなったので……試しに神音さんと相談してみたら
神音:こういう結果よ。あなたと同じ組織の下なんて、クソみたいにシャクにさわるけど
神音:考えれば、貴方を監視できる上に、機関の役に立つわけだし
赤城:俺の許可は!?
神音:あなたに人権なんてないわよ。そんな力を持ってるんだし。機関にはすでに了承を受けたって返しておいたわ。
赤城:こ、こいつ……!
美鳩:まぁまぁ! というわけで、改めてよろしくね! 赤城さ~ん!
0:
セルーペ:ぐっ……
マガツ:酷い顔だな
セルーペ:少し、舐めていたわ
マガツ:ま、あんだけドウルを狩ってりゃ、日に日に強くなるわな……人間も
セルーペ:全然、飽きたりないって顔してるわよ、マガツ
マガツ:そりゃそうだ。本調子じゃねえからな
マガツ:こんなもん、ただの始まりだ。始まりがなきゃ……滅亡はない
マガツ:そう、滅びこそ、極上の味だ……
0:マガツは大きく手を広げ、笑う
マガツ:さて、この世界が、どんな結果を見せ、どんな味をもたらしてくれるのか
マガツ:せいぜい楽しみだぜ
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