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【声劇台本】殺人現場~ピエロは笑う~
遊園地にて殺人事件が発生する
取り調べ室にて、現場にいたピエロに尋問する刑事
不穏な空気の中、探偵がやってきた
殺人現場シリーズ第3弾
15分くらいの内容。コメディです
・探偵
今回の殺人事件で、刑事さんに呼ばれた探偵
刑事さんとは仕事の付き合いがそこそこ長い
ツッコミ
・刑事
ピエロに尋問しているも、気に喰わず、憤りを隠せない
ピエロが何かを隠していると踏んでいる
ボケ
・ピエロ
事件の犯人候補の一人
事件当時、遊園地で子供たちに風船を配っていた
何かを含んだような物言いをよくする
0:取り調べ室
ピエロ:ふふふ、僕を取り調べなんかしてどうするつもりだい?
刑事:とぼけるな
0:そこに探偵が入ってくる
探偵:よう……だいぶ激しくやってるな
刑事:探偵さん……
探偵:ホワイトな警察を目指してるんじゃなかったのかい?
刑事:すみません……今回ばかりは、どうにも、神経を逆撫でするのが得意な奴で……
探偵:これが例の?
刑事:はい。犯行現場にいましてね
ピエロ:いやいや、僕は何もやってないよ~
刑事:軽々しく笑っていられるやつは信用できない
ピエロ:それが僕の仕事だから
探偵:……大体の事情は、刑事さんから伺ってるよ
探偵:今日の午前11時、遊園地のスタッフの遺体が、トイレにて発見された……被害者は刃物で一刺し、だったな?
刑事:はい。そして現場の近くに居たのは、同じく同僚のスタッフと、この人だ
ピエロ:僕が見た時はすでに倒れていたさ
刑事:こいつは……こんな状況でも笑っていられるおかしなやつです
ピエロ:気が動転していたんだ、僕はてっきり、何かのサプライズかマジックだと思っていただけだよ
刑事:現場に居た時も、こいつはずっと笑顔でいて……
ピエロ:本当に殺人が起こったの~?
ピエロ:だっていくらでも捏造できるじゃん?
探偵:あなたは、被害者が殺された時間、何をしていた?
ピエロ:僕? 僕はただ、風船を配っていただけだよ
探偵:それを言葉の通りに信じられたらいいがな
ピエロ:あっはは~! おもしろいね~! 探偵さん!
ピエロ:それって、僕がやったっていいたいのかい?
探偵:まだ確定はしてないさ
刑事:そうですね
探偵:でも、犯人候補には入っている
ピエロ:ふ~ん……
探偵:そういえば刑事さん、もう一人の同僚の方は、何か言ってた?
刑事:今、事情聴取をしています
探偵:そうか。相変わらず仕事が早い
探偵:……さて、あなたが知っている事を、話していただきたい
ピエロ:だから言ったじゃないか、僕は、風船を、配っていただけだ
探偵:またそれか……
ピエロ:そうだよ。風船はただふわふわと浮いているだけなのに、子供たちをおいそれと手に取りたくなる、素敵なものさ。それに、もし殺人が起こったとしたら、そういう時こそ子供たちが怖がらないように、笑顔でいないとね、はは!
刑事:お遊びじゃないんだぞこれは!
ピエロ:おっと~いきなりなんだよ刑事さん~
探偵:落ち着け
刑事:……すみません。さっきからずっと舐めた態度で
探偵:そういう時こそ、冷静にだ。真実を見る目を見失ったら、犯人逮捕にはたどり着かない
刑事:……探偵さん
ピエロ:かっこいい~!
探偵:ピエロさん、貴方のプロ精神は見事だ。それは認めましょう
探偵:ただ、疑いは晴れていない。それを晴らすためにも情報が欲しい。これも一つのエンターテイメントだと思って、提供してくれないか?
ピエロ:へぇ……君は刑事さんと違ってエンターテイメントを分かっているじゃないか。一緒にゲームを楽しめそうだね。ポップコーンを片手に、メロンソーダを飲みながら、ね
ピエロ:よし! なら、ここでギャンブルだ
刑事:ギャンブル……?
ピエロ:ふふ……このコインで、表が出たら探偵さんの勝ち、裏が出たら僕の勝ちだ。探偵さんが勝ったら、僕が知っている「情報」を、出してもいいよ
探偵:……いいでしょう
刑事:探偵さん、本当にこんな勝負、乗るつもりですか!?
探偵:今は、少しでも情報が欲しいからな。任せろ
ピエロ:じゃ、投げるよ~。……よっ
探偵:失礼
0:ピエロがコインを宙に投げたところで、探偵がそれを取った
ピエロ:あっ! ちょっと~! 何やってるの~!?
刑事:探偵さん?
探偵:これ、どっちも裏だ
刑事:……本当だ
探偵:やっぱりな。コインを投げる前に、表と裏が同じように見えてしまってね。ま、何かをひっかけてくると思ってたが
ピエロ:げげ……バレちゃったか
刑事:いい加減にしろよお前……!
ピエロ:わかったわかった! じゃあ、情報を教えてあげるよ
探偵:ああ
ピエロ:あの二人、よく揉めていてね……「金を返せ」だのなんだのと、事務所でも時折喧嘩をする声があったかな
探偵:どっちがそれを言ってた?
ピエロ:殺されたほうだね。金を借りてたんでしょ。後は知らないよ
刑事:それについては、確認を取れているぞ、ピエロ
探偵:……そうなのか?
刑事:先ほど、事情聴取をしている部下から連絡が入りました
ピエロ:そうなんだ~、残念。ふふふ……僕が言う必要がなかったね
探偵:他に知っている事は?
ピエロ:他に? あとは、一緒に居た同僚スタッフの手が……血まみれだったことくらいかなぁ
探偵:なに?
刑事:ピエロ。悪いが、それも確認が取れている
探偵:……そうなの?
刑事:ええ
ピエロ:んん~? さっきから刑事さん、何を怒ってるんだい?
刑事:他にも隠していることがあるはずだ
ピエロ:へぇ?
刑事:現場にあったものは回収した。鑑識からも報告が上がってきている。重要な事を隠していられるのも、時間の問題だぞ
ピエロ:熱心だねぇ~
探偵:(……今の所、確認が取れている情報のみ……。となれば……こいつがさっき言ってた「風船」に、何かあるのか?)
探偵:刑事さん、報告は他にどうだった?
刑事:その……申し訳ありませんがこいつに繋がる証拠は何も……
探偵:……風船は?
刑事:何も検出はされませんでした
探偵:そうか……何かあると思ったが
探偵:……じゃあ一体なんだ……? このピエロは、何を隠している……?
刑事:一応、刃物に関しては、一緒に居た同僚スタッフの指紋が検出されたことくらいで……
探偵:……えっ?
刑事:ただ、ピエロに繋がる情報が、何も出てこないんですよ……
ピエロ:そりゃそうさ~! ピエロというのはいつだって現実離れした道化だ!
ピエロ:道化は常に靄(もや)のような存在だからね!
ピエロ:今のこの状況だって、僕から見たら非常にリアリティから離れていて、むしろ怖いくらいだよ! ハ~ハハハハ!
刑事:お前……いい加減に知っていることを吐け!
0:刑事が身を乗り出してピエロを掴みにかかる
探偵:ちょっと落ち着いてって!
刑事:こいつっ……!
探偵:待て!
刑事:探偵さん! 止めないでください! こいつは殴らないと気が済まない!
探偵:いや待て待て待て!
刑事:なんで止めるんですか!?
探偵:犯人が分かったから!
刑事:えっ!?
ピエロ:へぇ~、流石探偵さんだ
探偵:とりあえず落ち着けって! な?
刑事:……はい、すみません
探偵:……それで刑事さん、その、さっきの話……指紋を検出したんだよね? 刃物から
刑事:ええ、そうですが
探偵:同僚スタッフの?
刑事:はい……
探偵:……で、ピエロさん。さっき言ったことは全部本当なんだよね?
ピエロ:もちろんだよ~、お金のことで揉めていたのも、手に血がついていたことも……そして……僕はただ、風船を子供たちに配っていたことも
刑事:……まさか! そういうことか……!
探偵:分かったでしょ?
刑事:……これは、テロか?
探偵:……ん?
刑事:風船に、毒が仕込まれている……!
探偵:いや違う違う! なんでそっちに話が行くの!? 風船は何も無かったんでしょ!?
刑事:でも既に渡した風船には、何か仕込んであるかもしれないじゃないですか!
探偵:そうかもしれないけど、多分違うぞ!
ピエロ:ハッハハハハ~! おもしろいね~! まるで映画みたいな話だ~!
探偵:刑事さん! 落ち着いてって!
刑事:落ち着いていられませんよ! このままだとまずい……!
ピエロ:ふふふ、この状況、僕はさながら、とんでもないテロリストになったような気分だねぇ~! まさに非日常で面白いよ~、この体験は! ハッハハハ~!
刑事:この野郎……!!
探偵:違う! そっちじゃない!
刑事:何が違うんですか!
探偵:何もかも違う!
ピエロ:これは、仲間割れかな?
探偵:とりあえずあんたは黙ってくれ!
刑事:……っ! 今回ばかりは、探偵さん……見損ないましたよ。今まさに、テロが起ころうとしてるんですよ!
探偵:いや、テロは絶対起こらない!
刑事:なぜ!?
探偵:いいか!? はっきり言うぞ!
探偵:このピエロは、本当に、ただ風船を渡していただけだ!
刑事:……えっ……!?
ピエロ:そうだよ~。僕は……ニコニコと仕事をしていた、それは間違いない
探偵:だからピエロさんは黙ってくれ
ピエロ:なんで?
探偵:これ以上あんたが喋るとややこしくなるんだよ!
探偵:……いいか……刑事さん、もう1回聞くけど
刑事:なんですか?
探偵:お金で二人は揉めてたんだよね
刑事:はい
探偵:で……、同僚スタッフの手が血で汚れてて、刃物から、そのスタッフの指紋が検出されたんでしょ?
刑事:ええ、そうですが
探偵:……それ、一緒に居たスタッフが殺したんじゃないの?
刑事:まさか……!
探偵:いやいや確定だって。証拠も証言も全部出てるじゃないか。今までなんで揉めてたんだよ。こんなの推理以前の問題だろ
刑事:……でも、まだ殺したとは
ピエロ:そうだねぇ……殺したとは、言ってないもんねぇ
刑事:……やっぱりお前が
探偵:こいつには何もない
刑事:……本当に?
探偵:ああ。本当に、ただ風船を配っていただけだ。
探偵:こんな怪しい言い方ばっかりしてるけど、調べたところで、何も出てこないのよ
刑事:でも……しかし……まだやったとは言ってませんし……ううむ……。
刑事:ん? 電話だ
刑事:……はい、もしもし。あぁ、事情聴取が終わったか。どうだった?
刑事:……なんだって!?
刑事:……あぁ、分かった……電話を切るぞ
探偵:どうだった?
刑事:……一緒に居たスタッフが、罪を認めたようです
探偵:だろうな
ピエロ:……そっか、本当だったんだ
探偵:……ん? き、急にどうした?
ピエロ:あの二人とは、同じ時期に入ってさ
刑事:……そうなのか?
ピエロ:正直信じられなくて、ずっと笑ってたけど……認めたって聞いてから……一気に冷めちゃったな
刑事:じゃあ……お前は、最後まで信じていなかったのか?
ピエロ:だから言ったでしょ。怖いから笑ってたって
刑事:そうだったのか……
探偵:かなりまぎらわしかったけどな
探偵:最初からそうしていれば良かっただろ
ピエロ:だって信じたくなかったからさ……
探偵:……それは、分からないことないけど……
刑事:そうか……辛かったな
ピエロ:刑事さん……?
刑事:申し訳ない。こんなにも疑うような真似をしてしまって
ピエロ:いや、いいよ
ピエロ:まだ、ショックだけど。遊園地は潰れたわけじゃない……これからも続いていく
ピエロ:それに、一番怖がってるのは子供たちだと思うし。だから、しっかり仕事をしないとね
刑事:いついかなる時も……ピエロであろうとし続ける、その姿勢……プロフェッショナルですね
ピエロ:良かったら、風船、一つどうです?
刑事:はは、それは探偵さんに
探偵:えっ? 俺?
刑事:僕にはもらう資格なんてないですよ。正直、探偵さんが居なかったら、犯人を特定できませんでした
探偵:いや……俺は何も……
ピエロ:刑事さんも仕事を全うしてたじゃありませんか。なら、風船は二つ、用意しておきます
刑事:はは、ありがとうございます
刑事:……とりあえず、これで解決ですね
探偵:……そう、だな!
刑事:探偵さん、今回もお世話になりました
刑事:また後程、報酬をお支払いいたします
刑事:今後とも、よしなに
探偵:……何しに来たんだ、俺は
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