ぼくは元気
心も体も、あまり強くないようで困る。ちょっとしたことで、簡単に不調をきたす。
些細なことが気になってしかたない。精神的近眼は、全体を見るのに向かず、大きなものを見損なう。ひとつ気にかかれば、心はすっかり奪われてしまう。あれこれと考えているようでいて、脳みその主たる回路は件の心配ごとから離れられない。当の本人は、それに気づかぬまま言葉だけの思考をつづけ、満足している。己が散漫に気づくのは、もはや取り返しのつかなくなった後である。失敗は重なり、そうなれば、自分を責める以外に対応を知らない。
勝手に、他人の視線を怖ろしく感じる。目が合えば、謝らねばならぬような心持ちになる。彼は自分に苛立っているのだと決め込む。会話となれば、いよいよ恐怖である。頭の中では無数の言葉が飛び交うが、口に出そうとすれば、喉の奥でつっかえてどもるばかりだ。返答を待たせる間の無音が、きいんと耳をつんざく。とにかく音を発さねばと焦るあまり、心にもあらぬ台詞を発してしまう。
心身の小さな乱れが、生活にエラーを発生させ、これらが相互に作用しつづけ合うことで、膨れ上がっていくのである。
3年ほど前、いよいよどうにもならなくなってしまい、仕事を辞めて少しの間休んでいた。好きなものを食べて、ぼんやりと過ごす。ときどき、眼鏡を付けずに外を歩いたりしてみる。この「ぼくは元気」と、続く「散歩」は、その期間につくった曲である。
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