水たまり
先日、あまいさとのソロ曲「水たまり」のミュージックビデオが、YouTube にて公開された。諏訪こばととの創作ユニット、ノキアトとして制作した作品だ。楽曲も、この映像のために書き下ろした。
出演していただいた有馬ひよりさんの存在が、まず企画の前提としてあった。主役は、ぼくの音楽ではない。あくまで踊りであり、彼女自身である。
ぼくの音楽に合わせてひよりさんが踊る映像作品をつくりたいと、諏訪こばとから提案された。お題が欲しいというと、返ってきたのが「多幸感」。自分の創作ではおそらく設定しないテーマであったが、案外すんなり書けてしまった。踊りを見せるために「歌いすぎない」ことを意識したからかもしれない。説明を、論理を、完結させなくて構わないという、ある種の気楽さが、筆をなめらかに進めてくれた面もあろう。
当日は、ノキアトの二人でカメラを持った。カメラワークはその場における即興である。一台のカメラで複数の画角を撮影しなければならないため、有馬さんには何度も踊っていただいた。撮れた映像から、使えそうなカットを選んで繋いでいく。その際、動きが繋がって見えなければ違和感が生まれる。限られた素材を、手足の位置や表情がずれないように組み立てていくのは、見かけ以上に繊細な作業であり、それゆえに楽しくもある。
完成した映像は、手前味噌ながら、とてもすてきなものになった。あの日、あの場にあったものが、まず美しい。ひよりさんのすばらしい踊りと、彩ってくれた音響照明スタッフの方々。自分の音楽に、手と手が重なって魅力を増していく。日頃一人でつくってばかりのぼくにとって、このような時間は、芯から明るくて、どきどきするほどに嬉しいのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?