マガジンのカバー画像

短編小説集

38
笑いとは別に短編小説を書いていきます。
運営しているクリエイター

#日常

【短編小説】卑屈なピクニック

そのピクニックに参加している人は、みんな卑屈であった。 自分なんてダメだ。 そう思いながら、自分で作ったお弁当を食べていく。 卵焼き、ウインナー、カマボコ、白飯。 美味しくないな、そう思って、お弁当を食べる。 そんな時、空から一人の天使が羽ばたきながら降りてきた。 天使はそいつらに向かってこう言った。 「お前達は立派だよ。問答無用でな」 なんでこいつはこんな事を言うんだ。 卑屈なみんなは石を見つけては投げた。 天使はヒョイヒョイと避けながら、「立派だよ」「たいしたもんだ」「

【短編小説】尊い痛みを笑われる

体がねじれていく。 絞られていくと言ってもいい。 二体の鬼が、俺の体をねじり、緑色の体液が滲み出てくる。 鬼はワハハハハと笑いながら、俺の叫び声を聞いている。 俺は、タコ焼きを食べたい。 フリスビーを投げたい。 間違い探しをしたい。 雪かきをしたい。 凧揚げをしたい。 天気予報をしたい。 なんでもいいから、何かしたい。 ねじられる以外の、何かをしたい。 ねじられている時、俺は、この世のかけがえのない物を知っている。 ただし、ねじられが終わって、しばらくしたら、また元の、当たり

【短編小説】二階席と一階席の狭間から行ける魔法世界

心臓の上には薄いシールが貼ってあって、そこに親の名前が書いてあるの 君はそう言って、僕の口の中にベロを突っ込んで両手で僕の頭をクシャクシャにした 窓の外では包帯を巻いた何匹もの鳩が、東京から離れようと飛んでいる 東京はもう終わりみたい 君はベロを突っ込みながら僕にそう言った 渋谷の地面がモリモリ大きくなって、一つの山がそびえたったのが二年前 そこに点在していた店は燃えて全焼、焼け切ったあとに木々や川や滝が自然発生し、山としての形を完成させた 池袋には谷底が出来て、ワニが待ち