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小説

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トレード日記風の小説です。
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2022年5月の記事一覧

@8時になると息を吹き返したように、モニター画面に表示されている数字がせわしく点滅しだした。

今日は水星不動産情報社の上場日だ。板情報の配信が始まる8時少し前にパソコンを立ち上げ、R証券のトレードツール「マーケットビュー2」を起動する。

俺は「すこしでも利益になるのなら」と購入をすることにした。 ー----------------------------------------

普段は、利益になるか損になるか微妙なラインのIPO銘柄は当選しても購入を辞退している。だが、今年に入ってロシアがウクライナに進行するという世界情勢が不安定になり、株式市場も下落し、俺もトレードで利益が出ていない。

 IPOを専門にしているブログで、この銘柄は「初値は公募価格割れはないが、微益になる程度」の評価であった。

そう、NTTが2020年9月29日にドコモを完全子会社化を発表したのだ。 なんと、TOB価格が3,900円で発表前日の株価は2,775円で1.4倍である。これでドコモ株は強制利確となり、今はこの余力でなんとか生活できている。

その後はアベノミクス終盤に某総理に交代して、民業圧迫の声明を出して通信株は下落したりしたが、最終的に大どんでん返しが待っていた。

アベノミクスが始まったのが2013年、日銀総裁に黒田総裁が就任して「黒田バズーカ」と呼ばれた金融緩和で日経がうなぎ上りに上昇した。おかげでドコモ株も上昇し、平均買値を抜けて、含み益になっていた。

そしてリーマンショックを経てドコモの株価も低迷し、最悪期は含み損が500万くらいになっていたが、売るに売れず見てみぬふりをしてやり過ごした。

また、株の取り引きではやってはいけない 「ナンピン(難平)」 まで無計画でやってしまい、5000株というドコモ株を持つことになったのである。

いわゆる、株を買ったが、買った価格を割って下げてしまい、損失を確定することができずに、何年も持ち続けることを言うのだ。

だが、こんないい加減なやり方をしていたら最後に行きつく先は、 「株の塩漬け」 である。

そのときは確固とした手法が確立していたわけでないが、儲けたり損したりでトータルでは利益が出ていた。

俺は(あはは、下手くそだな。俺なら儲けられるぜ)と思いながら話を聞いていた。  そして(俺がドコモ株を買って儲けて自慢してやろう!)という、邪な考えが浮かんだのだ。それがドコモ株を買った理由である。