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小説

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トレード日記風の小説です。
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2022年2月の記事一覧

と、妄想から目を覚まし、お目当ての「Sバリュー」だが、今日は寄り付いたが、株価は上昇している。四郎が買いを入れた指値のはるか上で株価は推移している。指値を変更するか考えながら、自分の現在持っている株の状況を確認した。この相場情勢で日経平均株価も上がる様子もなく、四郎の持ち株も

春休みなのか平日の園内は圧倒的に学生がほとんどで、私たち中年のカップルは場違いだった。夢の国、妻のヨシ子は着ぐるみの動物たちを見て、周りの女子高生と同じように興奮している。私みたいな俗物は、最近の入場料金の高さ、園内で売られているお土産やポップコーンの値段が気になってしまう

なぜなら、先日、IPOで当選した「EGテクノロジー」の上場日だったからだ。この株の初値はラッキーなことに公開価格を上回る「694円」をつけた。しかし、四郎はまだ売り注文をいれていない。「絵に描いた餅状態」なので、株価が気になってしかたがないのである。

今日は妻のパートが休みだったので、パンダランドに居る。(相場のことは忘れて楽しもう)と思っていたのだが、アトラクションの待ち時間があると、たびたびスマホで持ち株の株価をチェックしてしまう。普段は外出時に株価のチェックは気が向いた時ぐらいなのだが、今日は特別な1日なのである。  

(久しぶりに当選したIPOだし、もしかすると利益がでる可能性も捨てきれない。)四郎は判断に迷ったが、公開価格が350円で購入資金が3万5000円と低価格だったことから、最後は購入することに決めた。上場日は10日後になる。その時までに、相場の地合いが好転していれば・・・・・。

新規公開株の抽選に申し込んでいたDトレード証券で「EGテクノロジー」が当選していた。このDトレード証券でIPOが当選するのは何か月ぶりのことだろうか。

そこにきて、この人気薄の上場株では・・・・・。IPOが当選しても購入しない選択肢もあるが、証券会社によっては、次回から1ヶ月間IPOに申し込みができないなどのペナルティがある。今回当選したSトレード証券は辞退してもペナルティはない。 四郎は右手で握っていたマウスから手を離して

証券会社のお得意様や多額の金を預けている客が優先的に配布される。 結局はこの世は資金力がある者が勝つのだ。  今年のIPOは世界情勢やアメリカがリーマンショックから続く「お金じゃぶじゃぶ投入相場」の終焉なので、2連続して公開価格割れをしている。とにかく弱いのだ。

この株は事前の人気などから、公開価格割れの危険が濃厚なのだ。株の公開日に初めてつく価格のことを「初値」と呼ばれているが、その初値が公開価格以下になるのだ。(クズ株をつかませやがって)四郎みたいな「養分」と呼ばれる投資家には利益の出る「S級銘柄」のIPOは回ってこないのだ。

新規公開株、IPO銘柄に当選すれば、ほとんどの銘柄で利益を得ることができる。 だが、なかには人気がなく公募価格を割れる銘柄も少なくはない。四郎の顔にはずかな笑みが浮かんだが、すぐに片頬(ほほ)をつり上げ口元が歪んだ。 「クソ!」 と思わず口走ってしまった。

その単純作業が終わりに差し掛かったところで、クリックする四郎の手が止まった。新規公開株の抽選に申し込んでいたDトレード証券からのメールで、内容が  「ジュピターコーポレーション」の当選を知らせるものだった。(このDトレード証券でIPOが当選するのは何か月ぶりのことだろうか。)

叫んだところで虚しさだけが残った。四郎は気を紛らわすため、メールをチェックした。gmailの受信フォルダには、即ゴミ箱行き広告メールが山と溜まっている。(エコエコと言われているのに、これこそ時間資源の無駄遣い)と思いながら、バッテン消去印を機械的作業でマウスでクリックしていく。

 昨日に買う決断さえしていれば買えたのだが、(損したらやだ。少しでも安く買ってやる)という考えが決断を遅らせたのだ。その反省から、朝から成り行き買い注文を入れていたのだ。この「Vストア」、自分の考えた見立て道理であれば、今年中に業績が回復して株価は倍にはなるだろう。

あわよくば、テンバガー!! 最近読んだ「10倍株を見つける法」に書いてあった言葉で、株価が短期間に10倍に急騰する銘柄のことだ。「俺もテンバガー銘柄を発見!」と、四郎は、未だに「特別化売り気配」の「Iネット」の板を表示しているパソコンの画面に向かって叫んだ。