【エッセイ】Ｎウォームをわが手に

前線は、拡大している。

寒冷前線が。

昨年、一昨年と『半纏（はんてん）』で難を逃れたが、もはやアレ無しでは乗り越えられないところまで来ている。
ああ。
人類はいつになったら暑さ寒さを感じずに済むパーソナル宇宙服を手に入れられるのだろうか。

……というわけで。
パーソナル宇宙服は無理なので、代わりに『Ｎウォーム』を手に入れてこようと思います。
その名も、「着る毛布」。

いつもいつも、あっと言う間に売り切れてしまう幻のアイテム。
ここ最近は、そうでもないのかな？　たまたまＳＮＳで広告を目にして、ニトリさんの通販サイトに飛んでみたら在庫がありました。
嬉しくなってしまって、軽く他のページも見てみたのですが、びっくり。
今って……三段階あるんですか？！

いや、定番の次に、『ＮウォームＳＰ（スーパー）』っていうのがあることは知ってましたよ（我が家の敷パッドはそれ）。でも、今ってその先に、『ＮウォームＷＳＰ（ダブルスーパー）』があるんですか？！
知らなかった。時代は進化している。
通販を待てなくなったので、ちょっと売り場に行ってみました。

今の通販サイトは行きたい店舗を選ぶと、店舗のどこに陳列されているかまで表示してくれるのですね。すごい。
表示された地図に従って歩いていく私の前に見えてきたのは、なんだかがらんとした陳列棚。
あれ？
ここだよね……？

注意深く目を近づけると、多種多様なポップが並んでいます。
『すっぽり収納　着る毛布　ＮウォームＷＳＰ（ミドル丈）』
『すっぽり収納　着る毛布　ＮウォームＷＳＰ（ロング丈）』
『すっぽり収納　着る毛布ベスト　ＮウォームＳＰ』
『着る毛布シリーズ　ショートソックス　ＮウォームＳＰ』
『着る毛布シリーズ　スヌード　ＮウォームＳＰ』
他にも、手袋、レッグウォーマー、パジャマ、ルームウェアなど。
ありとあらゆるＮウォームシリーズのポップがかかっていました。空っぽの棚の上に。
……つまり、ここは。
狩り尽くされた跡。

いやいや。
だって、サイトの店舗情報に在庫ありって表示されてましたやん。
うろたえるわたしの視界をかすめたのは、残っていたわずかな商品たち。
『すっぽり収納　着る毛布　Ｎウォーム（ロング丈）』。
あった。
もはやスーパーですらないが、とりあえず確保しておこう。でないと、永遠に手に入らない。

その横にひっそりとあったのは、『すっぽり収納　４ＷＡＹブランケット　ＮウォームＳＰ』。
これ、要るかも。着る毛布って、座った時に膝下が覆われた状態にならなくて、寒いもんね。

その隣に隠れていたのは、『あったか裏ボア　アームカバー　Ｎウォーム』。
手！　冷たいよね。要る要る。
あとは…

すでに去年ミズノの極暖ルームシューズを購入しているというのに、『着る毛布シリーズ　ショートソックス　Ｎウォーム』に手を伸ばしたわたしの横を、店員さんがガラガラと段ボールを運んでいった。そこで我に返った。
落ち着け、わたし。
戦力の補給はこのあたりで十分だろう。わたしは毎年、さまざまなあったかグッズをそこら中に配備してきた。着る毛布は最終兵器にして最後の補給品なのだ。

ふう。
満たされた。
これで、今年は思い残すことはない（はずだったが、わたしは数日後に追加補充された『すっぽり収納　着る毛布　ＮウォームＷＳＰ（ロング丈）』を通販でポチる）。

意気揚々と帰宅したわたしは、同居している友人の、あまりの薄着っぷりに背筋を凍らせた。
「すぐにこの『すっぽり収納　４ＷＡＹブランケット　ＮウォームＳＰ』を使いなさい！」
「いいよ」
「ダメ！　風邪ひくよ！」
「だって、これはアマダレが使うために買ってきたんでしょ」
「いいから！　わたしなら大丈夫！」
わたしは自分の部屋の惨状を思い起こしながら、言った。
「わが陣営の戦力は……だぶついている」
二人は一瞬、言葉を失った。
その後方には、Ｎウォームまみれのわたしの部屋があった。

「じゃあ、使わせてもらおうかな」
友人は重々しく言った。
「そうして」
わたしも重々しくうなずいた。

彼女は今、わたしが勧めた『すっぽり収納　４ＷＡＹブランケット　ＮウォームＳＰ』を購入し、そして時々、ウチでだぶついている他のＮウォームも使っております。

ーーみなさまのＮウォームライフに、幸あらんことを。