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黄金周


ゴールデンウィークは地元に戻って、高校時代のアルバイト先で少しお世話になっていた。まさかの出戻りである。

私のバイトは小さなお宿で、宿泊施設と懐石料理を提供する宴会所が併設されている。高校時代はベッドメイキングも料理の品出しも担当したものだったが、今回は3日間、懐石料理の品出し、そしてお皿の整理などを担当することになった。

まず、顔ぶれがガラッと大きく変化していることに驚いた。どうやら、コロナの影響を受けてお宿は閉鎖を余儀なくされ、ベテランのスタッフさんはほとんど離れてしまったようだ。当時の人々から孫のようにかわいがられていた私は、残念だった。
今、あの人たちは何をしているのだろう…と漠然と考える。当時から在籍していた唯一の方と少しお話をすると、どうやらご高齢のために、お亡くなりになった方もいらっしゃるようだ。心の中で手を合わせる。

コロナ渦のあとで新しく採用された人々は、全員在籍3年以内の方たちなのだが、すっかりヒエラルキーが確立している。「新人にはしっかりしたひとがつく」という決まりは、3日間のみの短時間バイトの私にも適用された。ヒエラルキートップのおばさまにあれこれ厳しく指図を受けながら、必死で働いた。

懐石料理をお出しするときは、気を付けなくてはならない点が多い、醤油のいれものの向き、お皿の並べ方、料理の向きにも細かな作法があり、覚えるのに大変だった。おまけに少しでも間違えると、当然だがおばさまの怒号が飛んでくる。にらみつけてくる姿はなかなかの迫力があり、すくみあがった。

辛くなかったと言えば嘘にはなるが、それでも、仕事があるというのはありがたいことだなあと実感した。ほんの4時間ほどのアルバイトだが、いったん建物に入ってしまえば猛烈に忙しく、時間を忘れてしまうほどだ。久々の感覚だった。

この経験を経て、精神的に披露していたのでしばらく止めていたのだが、また転職活動も再開しようと思った。フルタイムの前にリハビリになるかなと思って始めたのだが、とても有意義な時間だった。

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