天菓
時は零和。とある星に「太陽の国」という、小さな国がありました。闇に覆われていたその国は、光を求めていました。
時は零和。とある星に「太陽の国」という、小さな国がありました。 闇に覆われていたその国は、光を求めていました。 太陽の国の話。〜目次〜 序章 晴天の霹靂(1話〜7話) 〜あいひめの物語〜 1 2 3 4 5 6 7 第一章 犬も歩けば棒に当たる(8話〜11話) 〜小柴くんの物語〜 8 9 10 11 第二章 狐の嫁入り(12話〜19話) 〜桐山くんの物語〜 12 13 14 15 16 17 18 19
「がん」を患った女の人の歌を あいひめや 演奏者は みんなで歌いました。 その歌は 未来への希望を 感じさせる歌でした。 歌を歌い終わると 女の人は あいひめたちに言いました。 「私は来年 ここにいるかわからないけど このうたは 託したわよ」 その時あいひめは ふと気づきました。 「わたしはずっと 自分のことをみじめだと思って 生きてきたけれど 今 この時、この瞬間は たった一度しか来なくて その一度を 頑張って 生きることは 尊いことなのだ。」
「病は氣から」 あいひめがまだ、臆病者だった頃。 あいひめは ずっとずっと 自分に自信が 持てませんでした。 思うように笑えない。 思うように力を出せない。 感謝の気持ちが湧いてこない。 一人前になれない。 そんな自分のことを みじめだと思い 好きになれなかったのです。 その時のあいひめは 遅くなって結婚相手を探し始め 自分のことを人と比べたり 振り返ったりするようになっていました。 そして、自分が 琴の活動ばかりやってきたことや 長年心の調子がすぐれないこと 両親
あいひめは はのんを 少し不信に思いながらも また二人で 会う約束をしました。 約束のその日は 青空がまぶしく 山々が映えて 氣持ちのよい朝でした。 はのんとあいひめは 二人で車に乗り 遠くの村へ 行くことにしました。 はのんが あいひめと 一緒に行くと決めていた店は なぜか どこも 臨時休業だったのですが はのんは いくつも 店の候補を 頭に入れていたので すぐに切り替えることができました。 あいひめは はのんと 楽しい時を過ごすうちに ふと 思い出したことがあ
あいひめは 頭の中のことが はのんに筒抜けなのだと 悟りました。 そしてそれは 距離や時間軸に とらわれることも ないのだとわかったのです。 しかし、その時のあいひめは まだ完全には 体調が元通り 回復してはいませんでした。 あいひめにとって はのんは 交際相手であったと同時に 変わらず 励まし続けてくれた 伴走者だったのです。 いつでも あいひめを 可愛がってくれ そしていつでも 支えてくれる。 そんな はのんのことを あいひめもまた 大切に思っていました。 は
あいひめは あいひめで 相手の考えていることが よくわかるように なっていましたが、 まさか はのんにまで 同じような力があるとは 思っていませんでした。 しかも、あいひめには 相手の考えている 言葉まで わかることはできませんでしたが どうやら はのんには 言葉まで 当てる力があるようなのです。 思い返してみると はのんは あいひめが 困った時には必ず たとえ 遠く離れていても 手紙で的確な助言をくれたのでした。 また、はのんはお店で あいひめに何も聞かずとも
「ミイラ取りがミイラになる」 はのんとあいひめは 変わらず仲良く お付き合いをしていました。 はのんはあいひめに 短い髪の方が似合うのではないか こんな靴が似合うのではないか と、 たくさんの助言をしました。 その助言を聞いて あいひめは、はのんに好かれたかったので 髪を切り 靴を買い どんどん自分を磨いていきました。 その結果、 あいひめは見違えるように 綺麗な女性になり、 益々異性からの人氣が出るようになりました。 あいひめは 少しずつ 調子に乗り始めました。
あいひめは、自らが 「太陽の女神」 というお告げを聞いた後、 3つのお願い事をしていました。 ひとつ目は、素敵な交際相手が見つかること 二つ目は、自分に合った仕事が見つかること 三つ目は、国中の異性から注目を浴びること でした。 その時のあいひめは 自らのみじめな姿に たいそう落ち込んでいたのですが 「高い望みを持った方が叶いやすい」 「下方修正はいつでもできる」 という発想が浮かんだので 少々贅沢な望みを描いてみたのでした。 あいひめは頻繁にお寺に通い 朝晩、祈りも
時は、少しさかのぼり、 あいひめの仕事が決まる前のお話。 自らのからだの具合に合わせ はのんとの関係をあたためながら あいひめは毎日 静かに穏やかに暮らしていました。 すると、 久しぶりに 安達さんから連絡が入ったのです。 安達さんは、 あいひめがお世話になったお友達。 あいひめにとってお兄さん的な存在でした。 安達さんは、突然 あいひめと連絡が取れなくなってしまったので あいひめはとても心配していましたが 安達さんは、突然気を失ってしまったものの 今は元氣に回復し
時はまた流れ 太陽の国では、桜の蕾が顔を出しました。 その頃になると、 あいひめの調子はだいぶよくなり 少しの疲れやすさは残っていたものの 以前より健やかなこころ持ちで 生き生きと暮らせるようになってきました。 そして、あまりにも 以前の自分と変わってしまったせいか 以前の自分の記憶がはるか遠く おぼろげにしか思い出せないようになってしまいました。 しかし、そんなあいひめのそばには いつもはのんがいて励ましてくれたので あいひめは、これからの未来のことを 前向きに見据え
あいひめの体調は、徐々に戻り はのんと仲良く出かけられるほどに 回復してきました。 ですが、あいひめとはのんは 離れて別々に暮らしていたため はのんといない時、一人きりのあいひめは 何度も不安な夜を迎えました。 この先、自分の体はどうなってしまうのか 不安定な仕事環境はこの先どうなるのか 今までずっと、誰からも 心から理解されたことがないと 思ってきたあいひめは 心からはのんに甘えることが難しかったのです。 ですが、はのんは離れていても いつもあいひめの身も心も 案じ
はのんとお付き合いを始めたあいひめ。 はのんとの相性が気になり始めました。 あいひめは占いが好きだったので 二人の占い師に占ってもらうことにしました。 一人目の占い師は 人の身体から出る 「色の波長」が見える男でした。 その占い師は、あいひめを見るなり 「神々しい 金色の波長が見える」 と言いました。 ですが、占い師はあいひめの素性までは 言い当てることはできませんでした。 そして、次にあいひめは はのんの写真を 占い師に見せました。 すると占い師は 「この方も、神
薬屋に出された薬草を 勝手に減らしていったあいひめ。 あいひめの体には 少しずつ異変が現れました。 あいひめは 人が考えていることが なんとなくわかるようになり 頭の中がこんがらがりはじめました。 そして頭の回転の速さとは反対に 身体はにぶく、動かなくなり始めました。 あいひめの意識はもうろうとし 寝たきりの状態になってしまいました。 そんな時、 同じ町に住んでいた あいひめより少しばかり若い青年が あいひめの元を訪ねてきました。 その青年は 名を「はのん」といい
月日は流れ、 もうすぐ春を迎えようとしていました。 あいひめは 日々を穏やかで 幸せな気持ちで過ごしていました。 なぜなら、あいひめにとって とても大切な相手ができたからでした。 ーーー 長い間、臆病者だったあいひめは 町の薬屋に 薬草を煎じて、もらっていました。 そして ありとあらゆることを試して 自分の「臆病さ」を 克服しようとしていたのでした。 桐山くんに出会った頃のあいひめは まだ自分に自信が持てずにいました。 桐山くんが 「亡くなったおじいさんのベッドで寝た
青空がまぶしい とてもあたたかな昼間のこと。 人を励ましたい という夢を持ったあいひめは いろいろな人から 「話聞き」の意見を もらっていました。 「話聞き」とは 太陽の国で行われていた 仕事の一つで 人の話を聞いて 助言をする お仕事のことでした。 その日の午後 あいひめはいつものように 白文帳に 何か書くことにしましたが 特に書きたいことが 思い浮かびませんでした。 そこで、今、太陽の国で 気になっていることについて 自分の考えを 書いてみることにしました。
あいひめには 男性のお友達が 多かったのですが 「安達さん」もその一人でした。 安達さんは とても楽しいこと好きで お祭りや飲み会が 大好きでした。 また 不思議なお話にも 関心があったので あいひめはお告げのことも 安達さんには 伝えていました。 安達さんは 物や情報を 運ぶことが得意で あいひめにとっては 頼れる お兄さんでした。 年の瀬に あいひめと安達さんは 仲間も含めて 忘年会をすることに なっていました。 ところが 安達さんは 約束の時間になっても現