読書メモ:サーバントリーダーシップ

こんにちは。天野です。

少しずつ読み進めていたサーバントリーダーシップをようやく読み終えました。講演などを後から書籍にまとめた内容が多く、けっこう読むのが大変なタイプの本でした。

全体的には含蓄に富んだ内容でとても参考になったので、メモを引用しながら感想を残します。


道徳的権限

サーバント・リーダーが持つ他の人との決定的な違いとして、「良心」つまり善悪の区別をつける道徳的感覚を挙げています。

「良心」を道徳的権限と呼び、サーバント・リーダーは道徳的権限を強めていく存在として解説されています。

道徳的権限は、生まれながらに備えられた権限とは異なっている。道徳的権限とは、生まれつき持っている力と選択の自由を、節度を持って使うことで出てくるものだ。良心に従った生き方、ここまで述べてきたような普遍の原理と呼応した生き方をしている人の行動は、どんな人の心も打つはずだ。みな、こうした人のことを本能的に信頼し、心を許す。これが、道徳的権限の始まりである。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (pp. 23-24)

私は道徳的権限を「道徳的性質+原理+犠牲」と定義している。われわれの大半は、ある一定のやり方で振る舞うほうがいいとわかっている。だが、犠牲という概念があれば、普遍の原理と一致するやり方で「実際に」振る舞えるようになる。だから、犠牲とは道徳的権限の本質であり、「謙虚さ」は犠牲の礎となる特性なのだ。  道徳的権限は、人間の性質の基本的な四つの要素における犠牲から生じる。肉体的犠牲・経済的犠牲とは、自制心を持ち、一歩後ろに退くことである。感情的犠牲・社会的犠牲とは、異なった価値を受け入れ、謝罪したり許したりできることだ。知的犠牲とは、学ぶことを快楽よりも優先し、真の自由には規律が必要だと悟ること。そして精神的犠牲とは、つつましく勇気を持って人生を送り、賢く生きて奉仕することである。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 32)

正規の権力があったり、力のある地位にいたりする人が、いよいよというときまでそうした権力や力を使おうとしなければ、彼らの道徳的権限は強まるだろう。自分のエゴや、地位に付随した権限を二の次にして、議論や説得、優しさ、共感、つまり「自分に対する信頼感」を利用していることになるからだ。  逆に、形式的な権力を早い段階で使ってしまう人は、道徳的権限が弱まることになる。力を外部から借りてくると、三つの場に弱さを形成してしまう。ひとつは自分自身。なぜなら、道徳的権限を高めていないからである。ふたつ目は他者。というのも、われわれが使う形式的権限に、共依存するようになるからだ。そして最後は、お互いの関係の質。真に開かれた、信頼感のある関係を絶対に作れなくなるからである。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 33)

トラスティ(受託者)

組織の中には、運営を担うリーダーとその監督を務めるリーダーという二種類のリーダーが必要だと書かれています。後者のリーダーを本書ではトラスティ(受託者)と呼び、そのリーダーシップについてかなりのボリュームで解説されています。

組織には二種類のリーダーが必要だ。組織の内部にいて、実際に毎日の任務を遂行していくリーダー。そして、外部にありながらも密接に関わり、距離があることを利用して、実際に活動するリーダーたちを監督するリーダーである。後者は「トラスティ(受託者)」と呼ばれる。  トラスティとは、その名が示すように、絶大の信頼が置かれる人である。組織には衝突がつきものなので、実務を行う者たちで解決できない問題が起きたとき、最後のよりどころとなる裁判官の役目を果たすのがトラスティだ。有形資産が関わる場合、法律上はトラスティが資産の所有者であり、その有効利用に関わるすべての人々に対して責任を持つ。トラスティが関心を抱いているのは、第一に目標であり、目標に向かって進むその過程である。自分の影響力を示すために、彼らは権限を振りかざすのではなく、物事をよく知り、質問を発する。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (pp. 93-94)

トラスティにとって最も重要な資質は、組織を思いやる気持ちがあるということ、つまり、組織が関わるあらゆる人間に配慮するという点だ。トラスティは思いやりに重点を置こうと決断することになる。トラスティを選ぶ際、バランスばかりを意識した政略的グループにしてしまうと、信頼感が薄まってしまう。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 116)

手短に言えば、大組織の組織編成の最初のステップは、トラスティとその会長の新しい役割を作ることである。新しい会長が出現できるような新たなキャリアパターンも作る。第二に、トラスティが役員を選出して責任を割りふり、それによって会長が(トラスティを代表し、会長専属のスタッフに支えられながら)、経営状態と首脳部のパフォーマンスを詳細に監視する構造を作る。首脳部の中では誰もが対等で、そのうちのひとりが、「対等なメンバーの中の第一人者」であることが前提だ。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 130)

卓越した奉仕を組織ができずにいる理由には、ふたつの要素が絡んでいるかもしれない。トラスティシップのレベルの低さと、CEOをひとりだけに頼るというコンセプトだ。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 153)

トラスティが最高の影響力を及ぼすための第一歩は、組織の方向性を定めることである。もちろん、経営陣やスタッフ、そのほかの関係者からの助言は受ける。だが、目標と目的を明言するのはトラスティの役割だ。これはどんな組織で、どのような成果を上げることが望まれているのか。奉仕を受けるはずの組織の関係者から、どんな基準で成果が評価されることをトラスティは望んでいるのか。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 158)

権力とその行使の問題が、トラスティのおもな関心事だ。トラスティの役割の定義として重要なのは、トラスティが最高の(法的)権限をすべて保有していることだ。だが、彼らはその力を運営に使わない。つまり、管理には手を出さないのである。トラスティはその法的権力を使って情報を入手して、監視し、運営に用いる権力をコントロールする。これがトラスティシップの中心的な役割だ。トラスティは最高権力を保持するが、その権力を運営には使わない。だが、権力の使用には責任を持っているのだ。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 181)

トラスティが知るべきものは何か。彼らが得なければならないのは、トラスティの四つの役割を果たすために必要な情報だ。
1 目標を定め、責務を決める。
2 経営陣を任命し、トップの経営構造を考案する。
3 組織全体としてのパフォーマンスを評価する。
4 その評価でわかったことを基にして、適切な処置を講じる。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 201)

コーチの必要性

本章で提唱した大半の内容が受け入れられるなら、トラスティの理事会は「コーチ」を探すといいだろう。トラスティが有能で合議的な集団となり、熟慮して決定すべき事柄の判断が優れた見識として尊重されるよう、指導してくれる人を探すのだ。こうした目標を完璧に達成できる集団はないため、指導のプロセスに終わりはないだろう。  最高の成果を上げられるプロセスに従って管理するトラスティを助けるためにコーチを雇うと、使命を帯びた研修プロセスを重視することや、トラスティの仕事に完璧というものはないことが理解できる。完璧さを目指して常に努力することが、信頼を得るための義務だという事実も。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (p. 210)

コーチの第一の役割は、コンセンサスを得やすくすること──つまり、心をひとつにするという境地に達することだ。有能なトラスティは、ただ議論を全部聞いて、それから投票で決めるといったことはしない。コンセンサス、すなわち優れた見識として受け入れられる、グループとしての判断に到達するのだ。その判断が優れているとしても、あらゆる組織関係者に評価されなければ、トラスティのリーダーシップにはあまり効力がない。トラスティの判断が優れた見識として受け入れられるかどうかは、コーチによって注意深く監視されて絶えず進められるグループ作業にかかっている。  非常に優秀なレベルのパフォーマンス──どんな種類のものでも、どこででも──を保つには、常にコーチングを受けていることが必要だ。トラスティは組織の業績を監視する責任を担い、言わば最高裁判所の役目を果たしている。そのため、ベストを尽くしたいトラスティは、自分の仕事を監視する用意をしておくべきだろう。トラスティはこのようにして学ぶのである。

サーバントリーダーシップ (Japanese Edition) (pp. 211-212)

上記で引用していますが、卓越した奉仕を組織ができずにいる理由として「トラスティシップのレベルの低さ」と「CEOをひとりだけに頼るというコンセプト」を挙げていることにハッとしました。

卓越した組織を作るためには、1人の全知全能のリーダーに頼ることではなく、リーダーとしての彼・彼女らを監督する仕組みが必要で、傲慢なリーダーを許さないようトラスティシップを発揮しなければならないんですね。

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ありがとうございます。書籍代に使ったり、僕の周りの人が少し幸せになる使い道を考えたいと思います。