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1297素数日。

 厚ちゃんが逝って1297日め。
 花冷えの曇り空から少しお日様が射し始めたら、音もなく桜の花びらが降って来た。
 真愛の赤いハスラーは沢山の花びらを乗せて、、お墓参りに行った。
 本当は昨日お墓参りに行きたかったのだけど、雨が降ってとても寒くて、
「厚洋さんも出てきたら、濡れて風邪をひくだろ 
 うな。」
と思ったので一日中家にいた。

桜が

 今日は、義母と実母の命日である。
 命日には必ず、「海苔巻き」を作る。
 実母がそうしていたように、その人の好きなものを作ってあげたい。
 不思議なことに、命日の頃になると「海苔巻き」が食べたくなる。栄養的にも、真愛の体が欲しているのかもしれない。いや、母達が
「ちゃんと海藻も食べなさいよ。」
と言っているのかもしれない。
 今日は、厚洋さんが逝ってから1297日め
「素数日」である。
 今では、その素数を数え始めた事がすごく良かったと思っている。数が無限大にあるのだから、素数も無限にあるのだ。
 無限のものを数え始める事は、無限の喜びになる。素数日の度に何か幸せな事が起こりそうでドキドキする。
 実際、素数日には良い事が起こっている。
 厚洋さんの話を知人がしてくれたり、厚洋さんの教え子さんと再会したり、必ず、厚洋さんを思い出す何かが起こっている。
 それは、真愛にとっては最高に幸せな事なのだ。厚洋さんが守ってくれている日だからだと思ったり、厚洋さんが真愛に伝えたい何かを、誰かに託して伝える日だと思っている。

花筵


 年をとって来ると1週間なんてあっという間にやって来る。
 1日が、とても早い。
 朝起きて、雨戸を開ける。
 口を濯いでうがいをする。
 お水を飲んで、トイレに行き、
 掃除を始める。
 フローリングの部屋をペーパーモップで拭く。  
 粘着テープ〈ゴロゴロ)で炬燵の周り、
 玄関のマット・トイレマットと3枚使って掃除
 をする。 
 畳の部屋も紙を新しくして輪ゴムをつけて掃除
 する。
 掃除をしながら、洗濯機を回す。
 綺麗になったところで、お仏壇の水を換え、
 般若心経を唱える。
 持病の薬を飲み、歯磨をして、髪を整え、
 着替えをする。
 ここで洗濯物を干す。
 ここまでで1時間はかかる。

 前述した今日は母と義母の命日なので、「海苔巻き」をお供えする。
 具材は、三つ葉と甘煮椎茸と卵焼きだ。
 厚洋さんの命日には、お稲荷さんを作る。
 それをお供えしてから、今日やることをやり始める。
 ここまでは、何もなかった素数日であることも忘れてしまっていた。
 着替えて、プールの用意もして、出かけた。
 母の菩提寺に「お塔婆料」を送金する。
 これといって変わった事はない。
 お墓掃除をして、お参りを済ませて来た。
 特別な事は起こらなかった。

桜のトンネルをくぐって

かつての同僚が退職を迎えたというので、
「お茶でも飲んでゆっくりして!」
と、少しの贈り物を送った。
 大変な時期に教員最後の年を迎えて、悔しいことややり残した事があったかもしれないと思うと、お茶ぐらいゆっくり飲んでから、今後のことを考えてほしいと思う。
 贈り物を作ってもらったお店の近くに、厚洋さんが元気だった頃、よく買い物に行ったお店がある。
 久々だったので、寄ってみると、彼の好きだった食材がいっぱい売っていた。
(だから、ここに来ていたんだ。
 真愛の好きな食材を売っているお店には、
 厚洋さんがよく行っていた。
 お互いがお互いを思いやることって、
 こんな些細なことだったんだと思う。)
 今日の奇数日は、厚洋さんが
「久々に食べたいな!」
っていってるような気がした。
 カゴに入れながら、
(これは一体誰が食べるのか?)と考えたが、買ってしまった。
 筋子‥‥真愛は食べられない。
 豚トロ…真愛は白身は食べられない。
 ホッケの開き…嫌いじゃないが大きい。
 草団子の粒餡…三串も食べたら太る。
 サッポロ一番ソース焼きそば…液体ソースが良
 紅玉林檎…この酸っぱいのが本物なのだとか
 アイス最中…お風呂あがりに食べるのが好き
       必ず、半分ずっこだった。
 カゴに入れるたびに、耳元で厚洋さんの蘊蓄が聞こえる。
 これが素数日の力かなと思った。

 本来ならば、プールの支度も車に積んだので、そのままスポーツクラブに行けば良いのだが、生物や溶けるものを買ってしまったため、一度家に帰ることにした。
 家に帰ったら、お仏壇にあげた海苔巻きが「食べてくれ!」と待っている。
 一度、炬燵に入って何かを食べたら、おしりに錘がついて動かなくなる。
 結局、プール行きは中止。
(これも素数日の成せる事。
 耳の痛みも目の充血も落ち着いて来たので、
 もう少しの我慢ってことかな?)

 noteを公開して、会計ノートをつけて、日記を書いて、撮り溜めたVTRを三本も見てしまった。
 どこかに出かけなければ、誰かに厚洋さんの話をしてもらうこともない。
 1297の素数日効果もなしかと思った頃だ。
 お風呂から上がってドライヤーをかけていると、その音よりも大きな音で、
「シュワ!」
「シュワ!」
「シュワ⁉️」とスマホから音がする。何かを受信した音だ。
 よく見ると、Kさんという方から沢山の「スキ」のお知らせが入っていた。
 ここ数ヶ月、maaのnoteをよく見てくださる方だ。情報発信者側の方で、色々な賞も受賞されている方なので、その方に読んでもらっていると思うととても嬉しい。
 自分の想いのみで書いているnoteなので、人のためにはならないと思うが、「お目に止まれば幸いです。」である。
 今夜、読んでくださった多くの記事が「子育てパニック」だった。
 毎日、後悔していると「見出し」を読んだだけでは内容が思い出せないものもある。
 量のせいではなく、認知機能の低下かもしれない。
 昨年のことが書いてあった。
 厚洋さんの写真も載っている。

 自分のnoteを開くと「初めての絵日記」の話。
 孫が初めて絵日記を書いたときの話だ。
 ちょっとした童話みたいで面白い書き振りをしていた。
と冷静に読めたのは、途中まで。
 厚洋さんと孫の心の会話を読んでいくうちに、厚洋さんの切なさを思っていた自分を思い出して泣いた。
 真愛がどんなに家族に愛されているのかがよく分かった。あの日は、
「厚洋さんと一緒になって良かった。
 良い子を産ませてもらった。
 良い嫁が来てくれた。
 可愛い孫が生まれた。」
と最高に幸せを感じた日だったのだ。
 1297日。
 今日の出来事はnoteにKさんが沢山の「スキ」をつけてくれたことによって、真愛の側に厚洋さんが座ってくれたことだった。
 厚洋さんは、
「忘れずにいてくれてありがとう。
 次は、嫌いなものまで買ってくるなよ。
 それに、一度に食べるとデブになる。
 プールに行かなきゃもっと太るぞ。」
と言って笑った。
 そして、
「泣くなよ。笑ってる真愛のがいい。
 ホームページの笑顔でいるんだぞ!
 俺が撮った写真はみんな笑顔だろ❣️
と、鼻を摘まれた。

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 1297日。
 素数日。
 いい日だった。


ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります