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まだ、こんなに好きなんて

 「リコカツ」というドラマが始まり、俳優さんが好きなので見始めた。初回の出会いと結婚に至るまでのドタバタは暫くぶりで笑えた。
「リコカツ」=「離婚活動」
「就活」「終活」「婚活」「産活」
どれをとっても、「活動」というのは大変そうだ。ただ動くだけで無く、「活力・活きがいい動きで無くてはならない。」
 相当のエネルギーがないと“happy end”にはならないのだと思う。
 真愛は、「離婚」というのは、「悲しいこと」「残念なこと」「良くないこと」という概念がある。育ってきた時代が、そうだった。
 さらに、愛している男性と正式な結婚が出来ず、「認知」という形でしか「愛しい人の子」を育てられなかった母を見て育った真愛には、「結婚」は憧れであり、折角結婚したのに「離婚」する事は、「悲しく愚かしい」ことだと思っていた。
 当然、母は、
「あなたには、ちゃんとした結婚をしてほし
 い。私のようになってはいけない。
 あなたのお父さんのことは大好きな人で、
 あなた達を産んだことは幸せなことだった。
 今でも、あの人を愛している。
 でも、あなた達がそのことで、
 どんなに苦労しているかわかる。
 身勝手な私を許して欲しい。
 決して私のようになってはいけない。」
 いじめを受けている当時は母の事を恨んだこともある。
 しかし、母の父に対する思いを素晴らしいとも感じた。87歳で亡くなるまで、帰って来ない父を愛していた。素晴らしい女性だと思う。

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 真愛が厚洋さんと付き合っていると知った母は、厚洋さんの「女関係の噂」を耳にし泣きながら反対した。
 そして、さまざまな手を使い、「付き合い阻止」を試みた。
 真愛は、学年主任に呼ばれて「あの人は、変わった人だから、辞めなさい。」と言われ、
 教育課長さん(母の知人で真愛の恩師)には「お母さんが心配している。」 
と付き合う事を考えろと遠回しに言われた。
 真愛は、反対されると余計に「真っ直ぐ進みたくなる」性格だ。
 火に油を注いだ。
 それを知って、厚洋さんは、
「付き合うのはやめよう。
 俺みたいな奴と付き合っていると
 お前のためにならない。
 子供ができたら困るだろう。」
 真愛を思い遣っての言葉と分かるから、尚更
厚洋さんが好きになった。
「私の母も、祖母も、
 世の中からは軽蔑される生き方をした人かも
 しれません。(厚洋さんには真愛の全てを話
 していたので…。)
 でも、一人の人を愛して、その愛を貫いた
 生き方を誇らしいと思っています。
 子どもができたら、私もひとりで育てます。
 私はあなたが好きです。
 さよなら。なんてできません。」
 国語で使うプリント(百人一首の解説)のガリ板の音が止まって、しばらく真愛を見つめてくれた。
「人の目を見て話さない。 
       目つきの悪い人だ。」
と、母の印象を悪くした彼の目は、真っ直ぐ真愛を見てくれた。
 答えは、真愛を抱いてくれたことだ。
 そして、
「俺の嫁さんになるか?」
と尋ねられた。
 真愛は、なんといったのだろう。
「うん。」と頷いたのは覚えているが、
「嬉しい!」と抱きつき…。
もう一度⁈っていうのも覚えているが、
 その後の言葉を思い出せない。
 1月7日の夜のことだった。

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 1月15日に結納。
 4月29日に結婚式を挙げた。
 明日が結婚記念日である。

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 45年間。
 厚洋さんが一人で逝ってしまってから、
            955日が過ぎた。
 人からは「不思議ちゃん」と言われるが、
未だに厚洋さんが恋しいし、事あるごとに思い出しては泣く。
 お寺や神社に行ってお願いすることは、
「厚洋さんに合わせてください。
    夢でいいです。会いたいです。」
考えずに口を突いて出る。
 厚洋さんが元気だった頃は、「宝くじがあたりますように!」だった。(笑える。)
 亡くなってから、見えなくても私のそばにいるという感覚はある。
 更に、彼の私に伝えたい言葉は、誰かの言葉になって語られている気がしている。
 人の言葉だけではなく、音楽やドラマの中からも、風や花や鳥からも、全てのものから語られていると捉えている。
 21日にさださんの新しいアルバム(さだ丼)が届いた。
 その中に「あなたが好きです。」っていう歌が入っていた。ファン歴の浅い真愛には、初めて聞く曲だった。

 厚洋さんも真愛を見てそう思ってくれたのだろうか。
 直接彼に言葉で褒めてもらったことはないが、「あいつはすごい奴なんだ。」と義妹に話してくれていたらしい。
 亡くなって時が経つうちに、沢山の人から「旦那があんたのことを
    愛してたのがよく分かる。」
「一生懸命な貴女が、
    可愛くて仕方がなかったのだね。」
と言ってもらえるようになった。
 猜疑心の強い嫉妬深い真愛に
「君のことが今でも好きだ。」
なんて言ったら、「美しい嘘」どころか、
「あら?
 なんか疾しいことがあるのかな?」
なんて、大騒ぎになってしまう。
 だから、誤解を恐れず言うなんてことはできなかったのだと気づいた。言わなかったのだ。
 昭和の「関白宣言」そのものだった厚洋さんだもの。
 真愛は、言ってたのになあ。
「あなたが好きです。」って。

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「まだ、こんなに好きです。」
「厚洋さんのことが好きです。」
と言えることに「幸せ」を感じている真愛は、
やっぱり不思議ちゃんなのかもしれない。
 明日は、結婚記念日。
 お墓掃除に行きます。





ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります