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玄同人 おおくぼまさみ

 前略、
 噎せ返る森の我が家で「こもれび」拝読。
3章送られ人が最高!
 言葉足らずの私には、この楽しさをどう表現して良いか分からず…。
 感じたままを綴ります。

 前章の不揃いの言葉・無いがいい・欠片・焼き直し・片思い・子や孫…も分かるなあと共感しながら読みました。
 が、「柩」から一変!!
 共感ではなく、見方の発見と驚きと笑いで小噺を聞いているようでした。
(さだまさしのファンなのでトークを
 聴いているようで)

 今年は愛しい人の七回忌です。
 後追いまで考えたのに今日まで生きてしまいました。
 彼を思ってその切なさに悶え詩にも本にも綴りました。
 しかし、送られた彼になってあの日の事を思ったことはありませんでした。
「送られ人」は、あの日の彼の思いと私の思いが交錯し泣き笑いで読みました。
 感動です。
「最後の姿」「中には」「お迎え」「人間の形で」「できればでいい」(嫌なものは嫌)全部良かったです。
 3章の詩の話を友達にしてやりました。
 年寄りに「死」の話なんてタブーなのかもしれませんが、こうやって考えたら「楽」になります。
 友曰く
「いいねぇ。
 この人にこの続きを書いてもらって
【アノヨ】とかね!
 読みたいな。」
と言っていました。
 その通りです。
 次回作期待しています。

 前略から入って、期待してます。で締めた変な葉書でしたが、おおくぼまさみ氏に送りました。

 ね?
「柩」とか読みたいでしょ?
 本当は買って読んで欲しのですが、玄同人仲間ということで許して頂き、転用いたします。

 ー 柩 ー
柩は質素なものでいい
煌びやかな装飾はいらない
段ボール製でもベニヤ製でもいい
見てくれが良くなければ
柩全体に白い紙を貼ればいい

 今から自作するのもいいか
 身長170センチ弱
 横幅80センチ強
 高さは50センチあればいいか
 ベニヤ板よりちょっと良い杉板を使うか
 竹釘を作ろう
息苦しくならないように
 空気穴もつけよう

 白い紙は 和紙がいい
 和紙を貼る糊も作ろう
 自然農法の新米を使って作ろう
 きっと柩の中に
 良い香りが充満するだろう

 柩の内側は朱色の和紙を
 隙間なく貼り付けよう
 朱色は魔除けになると言うから
 閻魔大王も入れないだろうから
 今から作り出せばまだ間に合う
 最後の仕上げは任せる
 白く貼った和紙に
 メッセージや絵を描いて欲しい
 クレパスや色鉛筆を使って
 自由に手描きをしてくれれば嬉しい
 そうすれば立派な柩になる
 世界にたったひとつの
 誰も真似のできない
幸せの棺が完成する

柩を閉じる封印は
経文を書いたものは嫌だ
私を閉じ込め
出られなくする呪文だから
やっぱり温かく優しい言葉で
閉じて欲しい
私はその中で
快眠するのだから

ー 最後の姿 ー
仰向けで横たわっている
両手は胸の上で
しっかり握り合っている
足は右と左がくっついて
まっすぐに伸びている
目は閉じ 口は閉じ
少々白くなっている
死んだのだ
遺体と言う名になったのだ

本当は横向きが 楽なのだ
 両の手はダラリ伸ばしていたい
 足は「くの字」に曲げた方が
 落ち着ける
 目は閉じてていい
 口はかるく開いて
 息ができる方がいい

 そして
火葬の時は
 うつ伏せにしてほしい
 顔の正面から
 炎がかかるのは嫌だ
 怖いのだ
 真っ赤な火は見えない方がいい

死んでいるのだ
もうすでに安置状態なのだ
遺体の顔は天を向き
頭は北枕
そして 炎の中へは
頭から突っ込んでいく
それが
送られ人の
この世の
最後の姿なのだ

ー 中には ー
柩の中に
何もかにも入れないでくれ
淋しがるだろうと思って
たくさんの物を詰め込まないでくれ
  原稿用紙は二十枚程でいい
  万年筆は 一本でいい
  インクのスペアーは一個でいい
  あちらの様子を少しだけ
  メモにするぐらいだけだから

  スーツは入れなくていい
  勤めに行くのではないのだから
  お母さん手作りの
  作務衣は入れなくていい

  古い作務衣一着でいい
  GパンにTシャツがあればいい
  靴は一足でいい

必要なものがあれば
  取りに来ればいいのだ

柩に入れたものがなくなれば
  すぐに戻ってくるのだから

  アノヨという所に
  永住するつもりで行くのではない
  季節別荘のつもりでいるのだから
  気まぐれ気ままな時間滞在だから

 まだまだ面白い作品が沢山載っている
「こもれび」

表紙

 宜しければ買って読んでください。

 看取る側の死、送り人の思いの作品はたくさんある。
「死」って、悲しみだと思っていた。
 しかし、送られ人になって考えたことがない。
 真愛は厚洋さんを送ったが、その時の厚洋さんの思いなんて考えなかった。
 彼は極度の閉所恐怖症であった。
 車の運転中でも、遠回りをしてトンネルを避けたルートを通った。
 エスカレータは乗れるがエレベーターは乗れない。
 そんな彼が「柩」の中でどんなに喚いていたのだろうか。
〈おい!
 やめろ!
 閉めるな!
 石なんかで叩いてコノヤロー!〉

 御免なさい。
 葬儀屋さんに
「まず奥様から、お願いします…。」
なんて言われて、
「厚洋さん。愛してる!」
って、最後の一言付け加えて叩いた気がするぞ
「ごめんです。
 貴方が閉所恐怖症の事を忘れていました。」

 厚洋さんの柩の中に入れたのは、印伝の頭陀袋の中にタバコ・マッチ・真愛からのラブレター・真愛の写真とチャーちゃんの写真、結婚式の写真も入れました。
 少しのお札も入れました。
 死装束は「真愛の手作りの和装スーツ」羽織紐は翡翠と水晶の真愛のブレスレット。
 一番上等な皮の雪駄を履かせました。

 ライターを入れようとしたら、『爆発するので止めてください。』というので、マッチを探して入れたのだ。
 葬儀屋さんはあまり入れさせたがらない。
 特に、金属は嫌がりますね。

 大久保さんのように、メモ用紙とペンを入れてあげれば良かったと後悔しています。
 真愛よりずっと物書きで、印税や原稿料だってもらっていた人だったのに…。
「認知症が始まる前だったから良かったものの
 メモが無いと困る。」
 そうかぁ。
 筆記用具を入れなかったから、手紙をくれないのかな?
 大久保さんがいうように足らなかったら取りに来ればいいのに…。
 でも、「あの世」とやらは居心地の良い所らしく、誰も戻って来ないという。

 は真愛が逝く時には、息子が気づいてくれれば、エンバミングノートに書いてある通りにして欲しい。
 しかし、大久保さんのようにちゃんと細かく理由を書いていないので、書き直さなければと思った。

ー 仏と墓地は 嫌 ー
仏にしないでほしい
念仏など唱えたことがない
悟りを開けるような人間ではない
説教をするなどという
おこがましいことはできない
仏になれるほどの優れた身ではない
ましてや「様」をつけて
「仏様」などもと呼ばれるのは
とんでもないことだ

墓地は 嫌だ。
隣りに見知らぬ死人が眠っている
熱をもたぬ寒々しい石が
行列をなして無言で立っている
その一墓のなかに自分がいる
思っただけで 身の毛がよだつ
ましてや 人気の無い暗い夜など
恐ろしくて嫌だ
いくら骨になったといっても
いくら灰になったといっても
嫌なものは嫌。 

 厚洋さんも
「狭い!
 狭い所は嫌だ! 
 暑い!寒い!
 酒!タバコ!本がないぞ!」
といっているのだろうか。 

ケーキをお供え

 次のお墓参りの時に、ちゃんと謝っておこう。
 でもな、厚洋さんはいつも真愛の側にいてくれているような気がまだするのです。
 このnoteを書いている時も、ちょっと右肩の上から見ているような…。
   

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります