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金盞花咲く

 暦の七十二候は、金盞香(きんせんかぐわし)を迎える。金盞(きんせん)は水仙のことで、「咲く」とはいわず「香(かぐわ)し」と表現されている。
 気品のある芳香と、清楚なその姿は室町時代から珍重され、生け花の世界でも松竹梅に匹敵する、格調の高い花として愛されだそうだ。
 一昨夜は、久々の強風と雨音で眠れなかった。
 しかし、今日は風も穏やかになり、洗濯を干すために窓を開けていると、心地よい冷たい空気が部屋に入って来る。
 体の奥にある汚れを吐き出すように深呼吸する。立冬を過ぎ、冬の嵐も過ぎた頃の深く落ちそうな蒼空は、広く澄み渡っている。
 我が家の水仙の花が少しずつ香るようになった。
 愛しい人の墓前には、我が家の水仙花が手向けられる。
 七十二候「金盞香(きんせんかさく)」は、立冬の最後の七十二候。
 この季節が過ぎれば、二十四節気は「小雪(しょうせつ)」になる。
 年々時間が過ぎるのを早いと感じるようになったが、コロナ禍3年目に入り、今年は特に早かった気がする。

 七十二候「金盞香(きんせんかさく)」は、キク科のキンセンカではなく、スイセンのこと。
 なんでスイセンなのかと言うと、スイセンの別名が関係しているのだ。
 昔、中国では、スイセンの花の真ん中にある黄色い部分を黄金の杯(金盞)に、白い花弁を銀台にたとえて、「金盞銀台 きんせん、ぎんだい」と呼んでいた。
 そのため、金盞とはスイセンのことをさし、冬を彩る七十二候に数えらたという。

 また、スイセンは雪の中でも咲くことから、「雪中花(せっちゅうか)」とも呼ばれ、日本ではお正月の花としても重宝される。
 香り高く、その別名からも、昔から多くの人に愛されてきた。
 凛としてとても美しい花だ。

真愛の詩画集にも載せ、厚洋さんにも褒められた「金盞・銀台」である。
 初めて描いた日本画も水仙であった。
 72侯もある中の最後が「水仙花」で締め括られていると知り、なんとも言えず嬉しかった。

 水仙は、実は強い毒性がある。
 毒は水仙の葉や球根など全ての部位に含まれ、球根には毒がもっも多く含まれていて、球根の致死量は10gと言う。
 我が家を侵略してくるイノシシ君たちが、水仙近くの畑を荒らさないのはそのせいかも。
 そういえば、近年、水仙とニラを間違えて食べてしまったと言うニュースもよく聞く。
 水仙の葉や球根の部分を食べてしまうことで、嘔吐や頭痛、発汗などの症状が現れ、30分以内で、症状がひどくなると昏睡状態になることもあるそうだ。
 水仙にはシュウ酸カルシウムが含まれていることから接触性皮膚炎を起こす場合があるという、平気で庭の水仙を切ってお仏壇に…。
なんてやってたが、怖い事だったんだと思うと同時に、己の無知さを痛感。
 美しいものには毒も棘もあるのだと言う事だ。
「う〜〜ん❣️
     良い香り。」


ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります