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MAAちゃんパニック 黒髪
ヘアードネーションをしてから九ヶ月が経つ。冬に向かってバッサリ切り、寒い風の中マフラーを巻いて「時期を間違えたか?」と思いながら過ごした。
2回ほどパーマをかけてもらい、手塚治虫さんの「メルモちゃん」になっていた。
年寄りも若く見えたり、可愛いと言ってもらえてので気に入っていたのだが、顔の周りに髪の毛がフワフワし、目に入るのが嫌だったので早く一つに束ねたかった。
元来「移気」な真愛は、髪の毛もコロコロ変わる。
小さい頃は、ちびまるこちゃんのようなおかっぱ頭。
色気付いた小六頃には、お団子にしたり、ポニーテールにしたり、三つ編みにしたりと鏡の前で頑張った。
初めて、美容院でショートカットにしてもらったのは、修学旅行前だった。(髪が長いと朝の身支度が遅くなるから…。)
中学校は部活もあったからか、おさげ髪が多く、セーラームーンの振り分け髪でリボンに凝っていた。
長く伸びてくると切るが、必ず「市松人形」の髪型だった。ちょっとでっかめな真愛の目と太い眉には似つかわしかったようだ。
教育実習で厚洋さんにあった時は、2つに結んでいた。隣の席から、真愛を呼ぶときには、髪の毛を引っ張られた記憶がある。
小学校の先生として着任した時もおさげ髪だったので、6年生の子供に馬鹿にされた。
「おい!ひよっこ先生!」
と呼ばれ悔しかったので、初給料でショートカットにしてパーマをかけた。
髪質も硬く、毛量も多かったので、大爆発した頭だった。
先輩に恋をし失恋(彼女がいた)
腹癒せに恋狂いを見せつける相手に選んだ人に恋をして、失恋(名家の彼には許嫁がいた。どこの馬の骨かわからん真愛は捨てられた。)
世を恨んで泣きついた彼に恋をした。
お互いが失恋していたので、「恋愛」ではなく「馴れ合い」と笑ったが、彼好みの女になりたかった。
だから、ストレートのボブorロング。
教育実習の時の髪型が好きだと言ってくれた。
結婚しても、子供が産まれても、彼の好きな髪型だった。
途中で、ロングのままソバージュにして「ライオン丸」になったこともあるが、不評だったのでやめた。
それからは、ずっとストレートロングだった。
美容院から帰って
「ねぇ。撫でて,撫でて!」
と頭を突き出し、無理矢理
「ああ。綺麗だね。
いい子。いい子。」
と撫でてもらうのも20年ほど続いた。
彼が入院してからは、毎日のように撫でてもらった。
彼が逝った後も「彼が撫でてくれた髪」は、きれなかった。
去年の秋に決めた。
厚洋さんに撫でられた髪を切って、ヘアードネーションをしよう。
で、バッサリ「メルモちゃん」になったのだ。
しかし、久々のショートで嬉しいのは束の間。
手入れが大変なのだ。
カットして2週間も経てば、ヘアスタイルは顔に馴染んでくるが、1ヶ月後には耳横の髪を上手にアップできなくなった。
いつもショートのフォルムを保てているのは、お金持ちだ。
だから、ショートのヘアースタイルをずっと保っている人は、「素晴らしい美への追求者」でお金持ちだと思う。
真愛は、結局そのまま伸ばして今になった。
コロナ禍・手術で髪のお手入れもいい加減になった先週の事だ。
「お誕生日のプレゼント!」と言って、美容室の美樹ちゃんに
ドライヤーと櫛と?を頂いた。
「??は何?」
「これね。クリップ大きいやつね。
ドライヤーをかける時に、
このクリップで止めて、部分部分で乾かして。
ブロックで乾かさないと髪痛めちゃうから。」
そうなんだ。
昔、「髪は長ーいお友達。」って漢字の覚え方のような宣伝があった。
その通りだ。何十年も長〜く付き合って来た髪なのに、友達のままで親身になってなかった。
おりしも、フラコラ化粧品に付いてきた小冊子に「頭皮マッサージで肌もイキイキ」シャンプー時でもやってみようとイラストも載っていた。
息を吸いながら肩を思い切り上げ、同時に手の指の関節で頭を押す。
これを3回繰り返すとどうしても、次は首を回したくなる。肩回しもしたくなる。背筋も伸ばして上半身のストレッチにもなりそうだ。
次は、手全体特に「手根部」で、頭皮をグイッと押し上げ、縁を描きながら頭皮全体をマッサージ。
この「手根部」を使うマッサージは、不思議な触感だった。頭皮は、「指の腹」でと覚えていたので…。
最後は、やっぱり指。
額の生え際中央に、人差し指から薬指の3本を置き、左右の手を交互に当てながら、頭頂に向けて頭皮を押していく。
頭頂まで行ったら両手指でグッと押しながら時計回りに3回ほど回して…。
これだけ腕を上げると肩より上の地の巡りが良くなる。
シャンプーした後のもうひと頑張りをする。
ブロック事にドライヤーをかける。
更に、hotで終わらせず、coolで艶を出す。
なんと、美樹ちゃんからのプレゼントの櫛は、シリコーンで出来ていて、
フワッフワッのサラサラ髪になった。
美容師さんにやってもらう手入れも大切だが、
日々の「お手入れ」が大切。
おばあさんになって、一人になって、たっぷりの時間があるのだから、時間をかけて「黒髪」を保たなくちゃ。
「おやおや、女は大変だね。
でも、偉いぞ。
綺麗でいようと思う事が、
歳に抗う方法なのかもしれないな。
放っておいたら、畑の草とおんなじ!」
と厚洋さんの笑い声がした。
「ねぇ。綺麗な髪になったから、
撫でて、撫でてよう。」
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります