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地域の伝統行事 どんど焼き

 立春。
 一日遅れだが、地域の伝統行事
    【節分会とどんど焼き】が行われた。
 以前、どんど焼きのお宮造りの様子を書いた。
 今夜の「男の浪漫」のかっこいいお宮の前には、手作りの門松がズラッと並べてあった。
 お宮は、TV番組の取材が来ても良いほど素晴らしくなっていた。(見出しの写真)

地域の伝統行事 お宮造り|maa @tcEyUurrkqx4y0c #note

 日が暮れると明日は満月と思わせる月が登り始めた。
 薄暗闇を長靴を履いて、懐中電灯をつけて地域の人が集まって来る。
 お正月に飾った「お飾り」や「お札」を持ってお焚き上げに来るのだ。

お飾りを置いていく

 この一年が良い年になりますように。
 去年は悲しいことばかり、
      今年は一から出直します。
 黄昏時の逢魔時。
 間違えれば、彼方に連れて行かれそうな
       そんな時に集まって来る。
 真愛は、受付にいた。
 まるで、宮沢賢治の「雪渡り」の中に出て来る受付の狐みたいな気がした。
「よくおいでくださいました。」
「有難うございます。」
 確か、四郎とかん子は、お餅を持って行ったのだ。そして、受付を通されて案内された先に、コン三郎さんがいて、頂き物の紙が貼られるのだ。
「お餅たくさん  人間の四郎とかん子様」
だっただろうか。
 雪は積もっていないが、「雪渡り」のように、人も獣もみんな生き物。
 いつもなら川や畑で境がある道を歩くのだが、この「雪渡り」の日だけは、みんな平等な世界にいる。
 宮沢賢治の思いがわかるような「逢魔時」であった。

逢魔時にやって来る

 コロナ禍だったり、高齢化だったりで滅多に会わない地域の人が顔を合わせる。
 隣に住んでる人の顔さえわからない都会では聞けない会話が聞こえてくる。
「おう!元気だったか?
 いい月だねぇ。」
「暫くぶりのどんど焼き
 お月さんが見に来てるよ。」
「月が美しいですね。」は、夏目漱石曰く
「I love you」だそうだ。

 厚洋さんが、なぜどんど焼きが好きだったかが分かる気がした。
「うちのお宮が一番だな!」
「あっちでもやってだけど、
 ちーぼっけぇ。
 今年しゃ、えれー綺麗だしな。」
 厚洋さんが真愛に言っていた事と全く同じことを話している。
 こんな小ちゃな事でいい。
 地域のことを自慢できる人がいる事が素晴らしいと思った。
「〇〇祭開催!」なんてTVで5秒ぐらい流れるのを見るが、TVに映らない人の中でどんな話が生まれているのか?
 我が地域の伝統行事の素晴らしさを感じたし、この行事を残さなければいけないと言う気持ちにもなった。

豆まき

 年男・年女の人が撒いてくれる。
 紅白持ちと炒り豆の袋と宝銭だ。
 今回の参加者は41名。
 成田山の豆まきには及ばないが、拾える確率は高い。
 受付をやりながらでも、結構拾えた。
 コロナ前は、100人近く集まった。
 地域の婦人会や青年団・役員の人たちが、
「焼きそば」「フランクフルト」「焼き餅」
「おでん」「お汁粉」「豚汁」「アタリメ」「竹酒」「甘酒」(まだあった気がする)が食べ放題飲み放題であった。

点火

 白山神社から灯火を頂き、点火する。
 一瞬にして燃え上がり、夜空をも焼き尽くす勢いである。
 お宮の中に仕込んでおいた孟宗竹が闇を劈く
爆裂音をあげる。
 力強いが美しい音である。
「生きてる事が辛い」なんて考えていた心が、
昇華していく。

達磨に火がつく

 不思議なことに、点火した時は大きな響めきが起こるのだが、数秒すると見ているものを黙らせる。
 さっきまで、豆まきでキャーキャー行っていた人たちが、無言で焔を追いかける。
 自分の願いが、天に届いている感じがするのだろう。

もう一つの達磨が頑張っていた

 あんなに美しく作ったお宮を数分で燃やしてしまうのだ。
 人の業を一瞬にして消し去る炎の力である。
 まさに、浄化である。

抽選会を待つ

 その後、飲食ができないので、抽選会をしてお土産を渡してお開きである。
 役員だった真愛は、最後までお付き合いしたが、その後も地域の消防団の青年が後始末を見てくれた。
「悪なあ。
 ちょっとカッコよくしすぎたので、
 中心に孟宗を入れすぎたんだ。」
 会長さんが、消防団に謝っていた。

我が家の桜の間から

 月明かりの中を歩いて帰った。
「祭り」とは、その日までが最高に楽しいのだ。
 疲れることや気苦労があるが、来てくれた人の「笑顔」が見られるように、
「ああでもない。
    こうでもない。」
と悩みながら準備する。
 あっという間の1時間だった。
 ただ嬉しかったことは、
「やっぱりどんど焼きいいなあ!」
「残さんといけねぇな!」
と言う声をたくさん聞いたことだった。
 どこの地区も継承者がいないので、やめていく。数えただけで四箇所も聞いた。

時期会長候補とどんど焼き前のお宮

「来年もやりたいですね。
 お手伝いになるだけの力はないですが、
 気持ちだけはいっぱいあります。
 来年もカッコいい社殿作りましょうね。」
 言っても口だけで何もできない真愛だが、
来年は、ちゃんと柔らかくなったお汁粉を差し入れすることを決意した。
 厚洋さんが、
「よく言った!」
と褒めてくれた気がした。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります