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見せたかった庭

 外に出られなくなった夫のために、彼の部屋からも見える花木や花の苗を植えました。
 その花たちが立派に咲くようになった時には、見せたかった夫が逝ってから1373日も過ぎていました。
 私には、はっきりと夫の声が聞こえます。
「俺が見たい庭は、お前に見せたい庭だから、
 この庭、ちゃんと見てくれよ。」と。
 季節ごとに咲いてくれる花々が、今は彼の遺影の前を飾ります。
「今朝、真っ白なクチナシの花が咲きました。」

これは出せなかった野薔薇

3枚の写真に絞りきれませんでした。
ということは、沢山の花々が咲く庭になっていたということ。
 厚洋さんがきっと褒めてくれていると思う。
「頑張ってるな!」って

アイリスは良い香り
塀を越えて山吹が降る
彼が部屋からも見られるさくらんぼ
野薔薇のアーチに
素晴らしい香りと蜂がいっぱい
土手のホタルブクロは刈られて
彼の部屋からベッドから見えるように
春は桜で、今は梅雨
緑があってこその花
彼が座っていた椅子から
玄関までのアプローチ
今年一番の大活躍 沢山の人にあげました。
花木は剪定がだいじ
シャクヤクは肥料食い
どんどん痩せ細る
ラベンダー
ニワゼキショ
10年ものの勿忘草
いっぱいの桜桃、食べられたのは3つ
みんな実が落ちるの。
卯の花
都忘れ、日焼けをしてしまった。
アザレア!
初めて咲いた鈴蘭
藤に風
芝桜、エノコログサに負けそう。
躑躅
白い勿忘草 必ず一本は咲く。
厚洋さんが植えた片栗
星のようなニラバナ
白と橙のぼかしのボケ
夕月と桜
沈丁花、沢山咲きました。
夕月
ラッパ水仙
ミモザの木が大きくなりました。
教え子にもらったクリスマスローズ


2021年春 札幌ライラックが花盛り
このライラック翌年には鉄砲虫に枯らされた。

みんなみんな、厚洋さんに見てもらいたい花たちです。

「ああ。ちゃんと見てるよ!
 俺の部屋から、
 俺の席から、
 お前のでっかい目を通してな!」

 声は聞こえます。
 でも!会いたいです。
 どんなに小さな花が咲いても、あなたを思い出します。
 絶対に言うことは分かっています。

「ああ。可愛いな!
 綺麗だね。」

 そして、俳句を一捻りするのでしょう。

 今年は、「合歓の木」が芽を出しました。
 10年経ったら花が咲くそうです。
 この家に来た年の夏に
ー あら、あんな。あんな所に合歓の花 
                 満望 ー
と、厚洋さんが詠んだように、花が咲くのは
10年後。
 真愛は、その年までこの庭を守れるのでしょうか。
 合歓の花は生きてみられるのでしょうか。

真夏の庭

左の枝垂れ桜の前クリスマスローズの間に
「合歓の木」が30cmほどになりました。

木下闇が美しい

 ちょっと虎狩になってしまった芝生ですが、
木下闇が美しく、ひまわりも咲いています。
 来月には、遅咲きの朝顔が数輪咲くと思います。
「厚洋さん!
 あなたに見せたかった庭です。
 でも、この茹だるような暑さの中で
 辛い身体を起こして見るのだったとしたら
 真愛の目を通して
 貴方に見てもらった方がいいかもね。」

 連日熱中症警戒アラートが発令されている
2022年7月30日です。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります