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節分の夜

 平安の政治は季節の行事を行うことが主であったと聞いた記憶がある。
 それが歴史的に正しい話だったかどうかは覚えていないが、「神頼み」でしか世を変えられなくなっている真愛にとっては、大いに納得できることことだ。

 コロナ禍でガソリンの高騰・輸入料の減少で食材の値上げ。輸入が減ったので作り始めた野菜の売れ残り。
 遠い国の災害を心配しても何もできず、傷つけられている極寒の悲しみを思うだけで何もできない愚かで小さな78億7500万人分の1の私がいる。
 せめて、願わくば、このこの祈りを持って普く我らと皆と共に幸せを成ぜんことを…。
と祈ることしか無くなるというものだ。

「鬼は外」を書き終わった節分の前の晩から、(明日の恵方巻きには何を入れよう。)
と考えて丑三過ぎまで寝られなかった。
(鬼退治をしないと春は来ないのか?のnoteを遅くまで書いていたので、ブルーライトを浴びて寝られなくなったのだが…。)
 恵方巻きが七福神さまに願いをかける事から、7種の縁起物を巻き込むと良いことを知ったし、去年の日記を見ると[恵方巻き700円]と書いてあったので、無駄遣いをせず家に有る物で作ろう考えたのだ。
 安く祈って多くを得ようとするから、悩むのだと思うが、平安の貴族政治もより良い「安寧の世の中」のために、当時で最善の策を考えたのだろう。
 災害・日照り・疫病・・・。
 科学も医学も発達していない時代だから、愛しい人の命が失われていくのを何もできず、ただただ祈るしかなす術が無かったのだ。
 なんだか今の真愛に似ている。

で、恵方巻きに入れる具材を決めて寝た。
⓵卵焼き…玉(ぎょく)である。勾玉。
⓶昆布…喜ぶ 昆布と生姜のつくだ煮。
⓷人参・椎茸・蓮根の甘煮…煮しめの具だから吉
⓺三つ葉…縁結の縁起物
     夢や願いと努力を、三つ葉が結び付け    
     てくれるという。
⓻梅干し…皺が出来るまで元気に過ごせる。

 何故か我が家では、豆まきを夕方に行う。
 豆まきをしてから、鰯を焼きながら、豚汁を啜り、厚洋さんは晩酌をし、真愛は恵方巻きやら、おにぎり・焼き餅を食べていた。
 どうしてそうなったかは分からない。
 何十年も前に、地域の青年会に入った厚洋さんが役員になり「どんどん焼き」のリーダーになった頃のことだろう。
 母が年女だった年だったかもしれない。

地域のどんどん焼き 左義長

 厚洋さんは表舞台で会がうまくいくように頑張るのだから、無口で恥ずかしがり屋な彼には大変な仕事だったと思う。
 真愛は、その青年会の人たちや婦人会の人たち、会を支えてくれた方々の慰労をする仕事だった。
 学校給食を作るような大鍋で「豚汁」を作り、漬け物・おにぎり・お酒・おつまみを用意した。
 学校から年休をもらい一日をかけて厚洋さんの妻をやった。
 人付き合いのできない厚洋さんが、地域のために何か出来たことも嬉しかった事だし、夫婦で地域のために力を合わせて「成功」出来た思い出を毎年、その時の食べ物で思い出し楽しんだのだと思う。
 もちろん、その後も厚洋さんはどんどん焼きにご祝儀を持って行ったが、真愛は恥ずかしくて地域の催しに彼と参加したことはなかった。
 恥ずかしがり屋は真愛だったのかもしれない。

 厚洋さんが逝った翌年のどんどん焼きには、彼の代わりにそれまでのお礼も含めて、ご祝儀を持って伺った。
 その後は、コロナ禍でずっと中止だ。
 だから、静かな「節分の夜」である。
 恵方巻きの準備をしていたら、息子のお嫁さんからLINEが入った。

今年の鬼のお面

 孫と作った鬼のお面だ。
 去年も作った様子を送ってくれた。
 毎年コロナ禍の中での「節分」であったことを思い出させられた。

去年は赤鬼

 可愛い鬼のお面は赤鬼・青鬼。
 どちらも心優しい鬼である。

柊の枝に鰯の頭を刺して
予定通りの恵方巻き

 なかなか太い恵方巻きが巻き上がった。
 誤嚥しないようにお吸い物も用意したがお餅は入れなかった。
 炭水化物の摂りすぎで「健康」なんて願っても叶わない気がした。
 テレビを消して豆まきをしたので、そのまま静かな中で、北北西を向いて、食べ始めた。
(願い事を唱える?考えるんだよね。
 息子家族が健康で健やかに過ごせますように
 いや、
 コロナ禍が収まって皆んなが安心して過ごせま
 すように。
 ウーン。偉そうな願いだよね。
 真愛が息子夫婦に迷惑をかけないで生きられま
 すように。
 いや、やっぱり
 大きな災害が来ませんように。)

5回も休んでまだ残る恵方巻き

 まん丸く巻けた恵方巻きも、握っているうちに、潰されて楕円になってしまった。
(5回も休んじゃ、願いは叶わないかしら?
 こんなに何度も願い事を変えたら、
 神様も困って聞いてくれないかしら?
 真愛は、今のままで、十分に幸せ。
 何があっても、全ての人が真愛のように
 今が、幸せと思える世の中であってほしい。)
 願いを唱えたのか、今の幸せを噛み締めたのかどちらとも言えないが、恵方巻きは食べ終えた。

 季節の行事をする事で、厚洋さんのことや母のことを思い出し、今を生きていられる幸せを噛み締められる。
 今生きている自分に繋がる多くの人への感謝の思いを持つことができる。
 全ての季節の行事に沢山の思い出があり、沢山の未来への願いが詰まっている。

梅一輪 一輪ほどの あたたかさ

 立春の前日の夜。
 節分の夜は静かで、寂しくもあり、
           嬉しくもあり…。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります