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プレゼントは、ペルセウス流星群

 真愛の誕生日に厚洋さんが空からのプレゼントをしてくれる様です。
 8月13日 午前3時頃。
 カシオペアが北東に傾いた頃。ペルセウス座の近くにある「放射点」から、涙の様に星が降る。
 残念ながら今年は月明かりがあるので見にくいかもしれないが、真愛への空からのプレゼントだと思う。 
 
 毎年、真愛の誕生日には必ず花束と装飾品(指輪・ブレス・ピアス・ネックレス)をプレゼントしてくれた。
「釣った魚にゃ餌はやらない。」と言ってた厚洋さんだったので、真愛は、いつまでも釣り上げてはいなかったのだ。 
 考えてみれば、いつも伸びやかに、厚洋さんの掌の上で餌付けされていたのかもしれない。

 真っ赤な薔薇が好きでビックリするほど大きな花束だった。真愛の好きな薔薇はピンクの香りの良いのが一番なのだが、「真っ赤が似合う」と言うのが彼から見た真愛の感じだったのだ。 
 「薔薇の花束」をチャーちゃんのそばに持っていき
「良いでしょ?
 お誕生日のプレゼント。 
 お花が似合うのよ。」
って写真を撮っていると、
「食い物やったら、デブになるだろう?」
って笑ってた厚洋さん。
 亡くなる1ヶ月前の真愛の誕生日。介護疲れもあって、真愛は、駄々を捏ねた。
「今年のお誕生日は、どこにも行かないし、
 何にも無い。」
今考えると、本当に我儘な女である。
 何本ものチューブで縛りつけられている厚洋さんはとても困った顔をした。真愛は、己の我儘に気づき、言い直した。
「お誕生日。プレゼント頂戴。
 抱っこして、いい子いい子してくれる?」
「おいで。」
と、ベットに来いと手招きしてくれた。
 真愛は、上半身だけをペットの厚洋さんの上に預けて抱っこしてもらいながら、暫く髪の毛を撫でてもらった。
「真愛の家は貧乏だったから、お誕生日なんか 
 してもらったことはなかったの。
 そんな時、母は、
 『プレゼント無くてごめんね。抱っこしかで 
 きなくて!』
 としっかり抱いてくれたの。
 真愛は、それが嬉しかった。
 プレゼントなんかなくてもいい。
 厚洋さんが抱いてくれるのが一番嬉しい。
 ずっとずっと、来年もこれで良いから…。」

 我儘を言った日に北海道の妹に電話で
「こっちに来る時、真愛に薔薇の花束を買って 
 来て、誕生日のプレゼントにするんだ。」
と頼んだと言う。
 意識のあるうちに合わせたかった義妹弟がお見舞いに来てくれた8月22日。
「ごめんな。遅くなったけど、
 誕生日おめでとう。来年は分からんぞ。」
と渡してくれた。
 息子も孫も義妹も義弟も真愛も作り笑顔で
写真を撮った。厚洋さんだけが笑わなかった。
 この25日後にひとりで空に逝ってしまたのですもの。

 去年は真愛の本を読んで
「誕生日の赤い薔薇の話」を知った御近所さんが「真っ赤なバラの花束」をプレゼントしてくれた。息子たちが来てワイワイ楽しませてくれた。息子の嫁がハグしてくれた。孫を抱っこした。

 今年はコロナ禍で、誰も来ない。
それを知って、厚洋さんが贈ってくれたのだ。
ペルセウス流星群。
「泣くな。触れられないけど、
 いつも、お前のそばにいるよ。
 いい子いい子は風に
 抱っこ抱っこは、いっぱいの光に
        俺の代わりにやらせるよ。」
って聞こえた。
「うん。泣かない。
 でも、やっぱりあなたがいいな。」

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります