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Happy birthday
JUN、潤じゅんちゃん
W e LOVE You 。
プレートに書かれたハッピーバースデーのコメントだ。
三絃のお師匠さんのお誕生日。
本当は6月18日だけれど、お祝い事は早いほうがいい。
君津国際交流協会でお習字を教えている先生と真愛は同じお師匠さんに習っている。
彼女はお琴、真愛は三絃。
国際交流協会での仲間と言うこともあり、潤子先生の弟子(真愛は不肖の弟子)と言うこともあり、仲良くさせてもらっている。
4月に潤子先生の門下生が集まって、お勉強会を開催した。
容子ちゃんも真愛も一生懸命お稽古した。
真愛は、運良く檜垣先生に『声が良い』と褒められ舞い上がった。潤子先生にも『練習よりもお勉強会の日の方が1番出来が良かったわね』と褒められた。
困った事に褒められると浮かれる真愛は良くない。サボってしまうのだ。
しかし、お稽古に行くとサボったことを見抜かれてしっかりと叱られる。
叱られるから目標を確認する。
そこまで行きたいと言う気持ちがあれば毎日お稽古ができる。
どんなに遅くても山の中だから、30分は必ず三味線に触ることができるようになった。
一人でお稽古するから勘所を外して気持ち悪い音も出る。
でも毎日お稽古が続けられるのは、先生の一言があったからだ。
「あなたは何がやりたいの?
あなたはどうなりたいの?」
「はて?」と考えさせられた。
真愛の三絃に対する取り組みについて考えさせられた。
厚洋さんが好きだったし、やってみたいと言っていた。厚洋さんの代わりにできるものならちょっとやってみたい。
体験学習程度のちょろい考え方だったんだ。
一年目に発表会が当たり、一年目で初舞台になった。
「始めたら出来るよね。
お前は母さんやおばあちゃんの血を引いてる
んだ。
もっときれいな音色で
もっと艶っぽくだったり
もっとかっこよく弾けるはずだぞ。」
初舞台が終わった時には、ちゃんと厚洋さんの声が聞こえた。
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しかし、お勉強会の後は、褒められて浮かれ上がってしまった。
そうやって言ってくれる人がいない叱ってくれる人がいない。
目標を見つめ直させてくれる人がいない。
みんな他力本願なんだ。
最近の真愛は違う良い音でこの曲を弾きたい。
この曲が終わったら、次は煮三下がりの曲も弾いてみたい。
もっともっといっぱい練習して死ぬまでに
「笹の露」なんか弾けたらどんなに嬉しいだろう。
目標はちっちゃなステップであげる。
まず、今習っている曲を響く綺麗な音で歌うように弾いてみたい。
力んで鉢を持つ。
手が痛くなったり、小指にタコができてしまったりする。
しゃんと背筋が伸びて、首がすっと持ち上がって前を向いて美しく引いてみたい。
さて、そうやって真愛をしっかりと指導してくださる先生の誕生日だ。
(ここで漸く本題!)
お勉強会で大変お世話になったこともあって、容子ちゃんと2人で誕生会の計画を立てた。
ケーキは何にしようかな?
お琴の形にしてもらおうかなぁ。
ちょっと端を細めにすれば、お琴だってできるよなぁ。
三味線の形にしてもらおうかなぁ。
竿はチョコレートで何とかなる。
しかしどちらも食べるときに糸を切ることになる。
「糸を切る」ってことは、箏や三味線の世界ではあまり良い言葉では無いような気がする。
だから、大好きな先生の大好きなにゃんこのケーキを頼んだ。
もちろん教え子の娘さんがパティシエをやっているケーキ屋さん(プチフルール》だ。
今までプチフルールでは「くまちゃん」「しろくまちゃん」を作ったことがあるが、
「にゃんこちゃん」のケーキは初めてだというが無理にお願いした。
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それがこれだ。
当日、受け取りに行った時に
「このにゃんこのお陰で『猫のケーキ』もでき
ますと言えました。
でも、『注文されている方がまだ見ていない
ので、品物は見せられない。』
とお断りしたんですよ。」
と断ったと言う。
彼女の作った「にゃんこのケーキ」は私たちの前で初めて披露された。
何でも初めてはいい。
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3人でさてどこから来て食べようかと悩みまくった。
先生がにゃんこの後ろの方を切ってくれた。
そして、第二イベントは「にゃんこの靴下の争奪戦」をやった。
安く手に入ったにゃんこの靴下達を、三人の前に全部並べて、指を立てて、「はい!」で指差す!
最初はバラバラで、それなりに楽しめた。
2回目「せーのっ!」
早い早い先生が早い。
いつもしっとりと落ち着いた先生である。
可愛くて優しい先生なのに…。
なんとも早!びっくりする位の速さで、
その猫を指差した真愛は呆れ返って指すのを忘れた。
いろんな話をしながらポツリと先生が言った。
「こうやって、家族以外の人に誕生日をしても
らうなんて、初めてのことかもしれない。」
その言葉が最大で最強の喜びとなった。
そして思った。
こんなに素敵な先生に教わっているんだ。
先生を困らせちゃいけない。
「頑張らなくちゃ!」そう思いながら帰っている間にふと思いがよぎった。
何十年も前の教え子たち。
20歳そこそこで先生になった真愛にみんな子ども達はついてきてくれた。
「さよなら」するときに泣きながら別れた。
真愛は嬉しかった記憶がたくさん残っている。
彼らはきっと私と同じように「この先生のために頑張らなくちゃ!」と思ってくれた子が何人もいるのだ。
子どもにも親御さんたちにも感謝されたが、あの時、真愛は彼らに感謝することをしていなかったのではないだろうか。
彼らがいてこその私だったのに…。
真愛もたくさんの誕生日を過ごしてきた。
厚洋さんがいてくれたおかげで、とか、
父や母がいてくれたおかげでとか、肉親への感謝の情は持ったが、【今の真愛があるのは、真愛と接してくれたすべての人のおかげなんだ。その体験の上に成り立っているんだ。】
60年も過ぎてしまって、教員でもなくなってようやくこんなことを思う。
いつも通り教え子たちに申し訳ないと思った日だった。
Happy birthday❣️
and Thank you‼️
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります