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幸せ 思い出は美化される

 亡くなってもう745日にもなるのに、「まだ好きで好きで堪らず、夜な夜な泣いてしまう。こんなに好きな人と結婚していたんだ。」と思うと、私はなんて幸せな人なのだろうと思う。

 彼が亡くなって、20Kgも痩せたのに心が安定してきたのだろう。ちゃんと寝られるようになった。(薬は飲んでいるが…。)
 プール友達は、
「真愛さんを見ていて、人間って不思議だなあと思うよ。いや、心って凄いね。一度にあんなに痩せちゃうくらいのストレスだったのよね。それが、話せるようになり、微笑めるようになり、体力を取り戻し『太ったあ。』なんて言えるようになるんだから…。ね。  愛し方が変わって来たのだね。きっと、現実を受け入れて、いない旦那様をちゃんと愛せてるんだね。」
と言ってくれる。
 確かに、愛し方が違って来たと思う。
 厚洋さんに抱いてもらったり、真愛が抱きついたりする事はもう出来ないが、優しかった思い出をいっぱい思い出す。
先日来た教え子(トットさん)に
「先生達はエロいんだよ。普通の人以上に。俺、ショックだったんだから、あんなエロ本書くなよ。もうー!」
と笑われたが、大正解だと思う。
 厚洋さんに抱かれた時のこと。たくさん愛された時のことを思い出すようになった。思い出して一人笑ってしまうこともある。
 何かにつけて厚洋さんを思い出す。しかし、不思議なことに笑顔の厚洋さんが多い。優しい面白い厚洋さんが多い。

「そろそろ、思い出が美化し始めている。」
 彼が亡くなってから、知り得た知識は、必ず厚洋さんに知らせたいと思う。そして、知らせたら喜ぶだろうなあと思う。
 明日は、お月見だ。
 我が家のお月見は、ススキとワレモコウを飾り、三宝にお団子を積み上げて、お月様が見えるところに飾った。厚洋さんはそれを眺めながら、月を見上げながらウイスキーを飲んだ。
 ところが今年、国際交流協会の掲示物を作るために色々と調べて行くうちに、
「観月の良さは、月そのものを見るのではなく、映った月を愛でるのが風流とか…。
 知らせてあげたかったなあと思うし、一緒にやりたかったなあと思う。
 芭蕉のように
「名月や池を巡りて夜もすがら」
 池に映った月の美しさを二人で愛でるのも良いだろう。どちらかといえば、水溜りに映った月を傘で壊す方が好きだった二人なので、池の水を掻き回してしまうかもしれない。池の水面の静かさと漆黒の闇も素敵だろう。
 我が家で飲んだとしても、その日ぐらいは、日本酒に戻して、お盃に映った月を飲み干すなんてことをさせてあげたかったと思う。残念ながら真愛は、下戸なので代わりに飲むことができない。
 そういえば、結婚した最初のお月見の夜に、「ムーンライトセレナーデ」っていうカクテルを作ってくれたことがある。
 バイオレットフィーズにレモンを絞って流し込むカクテルだった。
 お酒の飲めない真愛は、舐めるぐらいしか飲めないが、シェイカーを振ってる厚洋さんが格好良く見えた。
 人からは「変わってる」とか「協調性がない」とか言われた厚洋さんだったが、真愛の前では、恰好つけて何でもやってくれた。
 また、学生の頃に沢山のアルバイトをしていた。大学に行くのは、奨学金をもらいに行く日だけで、後はアルバイト。釧路にいたので通訳もやったし、荷揚げもやった。喫茶店の雇われマスターもやり、夜はバーテンダーもしたと言う。新聞社の見習いもしたし、凄いところは、「ひも」もやったとか。
 真愛は、全てを信じたので、今となっては、どこまでが本当だかわからない。しかし、博学であり学校に行かなくても「学生運動」はしていた。(新聞の切り抜きには、彼がヘルメットを被ってジグザグデモをしている写真があった。)
 勉強をしなくても留年せず単位も取っているから不思議だ。「大学側が俺を置いときたくなかったんだな!」と勝ち誇ったように話す厚洋さんも好きだった。
 だから、バーテンダーのようにシェイカーを振る姿やカクテルの能書きを話す厚洋さんも好きだった。
 本当に馬鹿なほど「厚洋さんが好きだったのだ。」(すみません。このnoteのほとんどが惚気話です。)
 もし、私が先に逝ったとしても、厚洋さんが真愛の事をこんなには、思い出さないだろう。
「ああ。今日は月見か!真愛は、団子を作ってたな。毎年、ススキを取って来てたから、仏壇に飾ってやろうか。」ぐらいなんだと思う。
と考えると、「真愛は、幸せである。」
 彼よりも沢山思い出せる自信があるからだ。いや、厚洋さんが幸せなのかな?女房にこんなに思われる旦那もいないだろう。
 寂しくないと言ったら嘘になるが、少しだけ寂しさに慣れて来た。寂しさを思い出で紛らわせることができるようになって来た。
 暫くぶりで、飲めないけれどカクテルでも作ってみるか?
 明日は、会議の帰りに市場によって、二年ぶりにお酒を買って来よう。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります