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正月飾り

 12月28日。我が家ではお正月飾りをする。
 母は、貧しいながらも季節行事をしっかり行い、その由来も毎年話しながらやってくれた。
 また、雑学博士の厚洋さんと一緒になった事で、尚更「行事の蘊蓄」を話せるようになった。
「末広がりの28日に飾る事が良い。」と刷り込まれた真愛は、だった一人であってもその日に合わせて大掃除を済ませて、お正月飾りをする。
 これがやれているうちは、「無病息災」だと思う。
 また、誰も見ないのに毎年飾るものを変える。
 その年の気分なのだろう。
 今回は、お玄関ドアの飾りは、注連飾りから花が目立つ玄関リースにした。

お飾り

 玄関リースと言っても、「お正月バージョン」なので、ちゃんとおめでたい物やお決まりの品が入っている。
 邪気が家に入らないように注連縄
(円満の丸になっている)

 松・竹(おめでたい品)
 南天(難を転ずる)
 水引き(おめでたい時の蝶結び
     何度も有る事を願うのだそうだ。
     因みに仏事は、結び切り。
     おっ、結婚祝いも結び切り。
     結婚は何度もない方が良いとか?
     今じゃ3回も4回も
     蝶結びだったのかもね。
 薬玉(繭玉かもしれない。薬玉ならば無病息災
    繭玉ならば、お餅の代わりなので
    五穀豊穣を願うのだ。)
 謹賀新年と書かれた凧
   (凧は舞い上がるので縁起がいい。)
 ただ梅ではなく、紅白の椿だ。
 椿は首から落ちるという事で「縁起が悪い」と教えてもらった。武士の切腹打首を想像するからだろう。武士階級の言葉から忌み嫌うことは他にもある。「切る」は切腹なので「割る」「開く」を使う。鰻の背開き・腹開きなんて違いも面白い。
 我が家は武士階級に近かったのだ。何たって「奧平美作の子孫?」「水戸の苗字帯刀を許された下級武士。安政の大獄の時に提灯を持って行ったとか?」厚洋さんと真愛の妄想はいつも楽しかった。
 しかし、近年は武士社会ではなく「平安貴族社会」も綯交ぜになっている。
 元々椿は、最高の吉祥木として、平安時代の貴族の間で「高貴な花」「聖なる花」として扱われていたそうだ。
 実は、椿には「厄除け」の意味もあり、源氏物語の若菜の巻で、蹴鞠の穢れを祓うため、椿餅を食する場面があるほど。
 花の持つ意味は「永遠の美」「気取らない美しさ」「申し分のない魅力」というもので佳人が身につけるもの。
 中国の牡丹・芍薬が高貴な花であるのと同じである。
 平安の前は奈良・天平文化で中国の風習を学んだのだから、いくら日本独特の文化「平安」になったとしても、宮中催事は以前のものが残っているのは変わりない。
 文化とは、引継いで来たものと新しいものの融合なのだから、「椿」で良いのだ。
 今年は、平安・江戸・令和混合お飾りとなった。

お玄関の生け花

 お玄関の生け花なのだが、生け花ではなく
「一部造花」になったのは、真愛が退職してからだ。お正月の若松がお高い。
「山から取って来ればいい。」
って厚洋さんに言われたが、山の松も少なくなったし、手が届かない高い位置にある。
 百均で金粉が振りかけられている松を買った。
 その他の水仙や南天は我が家の庭から手折ってくる。賑やかしに「鳳凰」や「凧」「招き猫」なんかも差し込んで飾る。
 横には「打出の小槌」を持った童人形を置く。
 この人形は、息子の初節句の時の贈り物だ。43年も経っていると誰から頂いたものかも分からない。だが、確実に我が家に年金を届けてくれる。

玄関

 ウエルカムオーナメントというか、靴箱の上のスペースに季節の何かを飾るのは、厚洋さんと結婚してからずっと続けている。
 厚洋さんもそれを楽しみにしていたので、自分でも真愛の好きそうなものを買って来てくれた。「小さくて可愛い物」だった。
 右にある獅子頭がそうだ。
 母は、
「東京の家にいた時は、
 毎年獅子舞がお店の前に来てくれて、
 頭を噛んで厄祓いをしてくれたものよ。」
と話してくれた。
 千葉の秘境には獅子舞は来ない。そこで、厚洋さんが買って来てくれたのだ。
 羽根があるが、本当は大きな羽子板もあった。 
 羽子板市に行って買って来てくれたものだが、学校のお正月飾りに持って行って壊してしまった。
 今年は、この獅子頭に「金の稲穂」を咥えさせた。(ちょっとだけ、大きく宝くじが当たることを願って。)
 左側には「干支」の飾り物だ。
 厚洋さんがいる時は、いつも「一対物」「夫婦虎」だった。今は、ひとりになったので「一対物」は購入しない。
 可愛い虎が1匹。
 千里も走れなそうな小さな虎君が沢山の願い事を背中に背負って座っている。
 その横には、もっと小さいお供え餅。
 お餅よりも大きい末広がりを冠っている。
 ここに大晦日の夜から出かけて、初詣に行き、「破魔矢」を買って立て掛ければ、完成!
だったが、最近は夜が寒くて、コロナ禍で初詣は暖かくなった昼間に行く。

玄関脇

 本当は門柱に飾るのだが、我が家は盆栽の松竹梅。盆栽といっても真愛が作るのだから、高が知れている。
 梅は切らないので蕾をつけないし、松も作りを間違えたので形が八方に散っている。
 竹に至っては、小さな鉢に入れてあるので、根が外にはみ出している。
 仕方がないから、繭玉を入れたり、賀正のオーナメントを足したりと工夫をする。
「青年の木だよ。」
って、厚洋さんが買ってきたユッカの木が増えて3鉢もある。
「青年の木」という別名があるほど、新芽を次々に吹かせ、勢いよく上に伸びる成長力がある。
 風水的にも、「金運・仕事・勉強運の上昇につながる」と言われている。
 また、尖った葉先から連想するのか、ユッカ(青年の木)は「邪気を払う」魔除けの効果が期待できるそうだ。
 風水的に悪い気が入ってきやすい玄関などにおくと、悪い気を流してくれて、運気が向上する。
 確かに悪い奴が来たら、あの玄関から忍び込むのは難しい。家主が帰って来てもあの葉先で「チクリッ」と刺す。
 しかし、大掃除の時に葉先をちょっと切らせてもらった。(こんなに痛くちゃ、年神様も追い返しそうだったからだ。

お供え餅


 お供え餅は、ピアノの上。
 この家になってからは、ここが定席。
 さらに、チャーちゃんがいた時は、この横にチャーちゃんが座る。今年は彼女もいないので、そのスペースが空いた。
だから、お元日だけ使う「お屠蘇セット」も飾りの一つに…。
 当然、真愛の初日本画の金盞花(水仙の花)もお祝いの花として飾った。

トイレも

 今年はトイレも「椿の花」
 金の招き猫は、なかなか宝くじの高額当選を招いてくれない。きっとメッキだからダメなのかも?
 韓国で買った「純金の豚」はどこを探しても出てこない。
 厚洋さんが売っちゃったのかもしれない。
(高かったのに…。)

 今年は、初めて洗面台にも松と椿を飾った。
 常盤に若い緑の松。
 美しさのシンボル椿の花。
 年をとってくると、
「溺れるもの藁をも掴む。」
で、なんでも良さそうなものを取り入れる。

 結局のところ、我が家のお正月飾りは、
真愛の「縁起担ぎ」と「ストレス解消」の行事である。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります