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群生

 昨年の台風で倒れた杉の木を弔うように、
            白い花が群生した。
 白い花の名前は、「トキワツユクサ」
 横倒しになって枯れている木を
 優しく包んで 
     一斉に花びらを広げた
         昇天の瞬間を見た。

 三角形の小さな白い花弁が3枚。
雄しべは6本あって、羽毛のようなふんわりとした毛が生えている。
 葉は露草と同じ、丸長で先が尖って、向かい合って生える(対生)だ。
 花の後にできる実はさく果(熟すると下部が裂け、種子が散布される果実)だそうだ。
この属名の Tradescantia はイギリスの庭師「トラデスカントさん(J.Tradescant)」の名にちなむと言う。
 「紫陽花」を鳴滝塾のシーボルト先生が、愛する日本人の奥さんの名前「小滝さん」にちなんで「オタクサ」として、ヨーロッパに紹介したように、庭師との恋があったのかな?
なんて、妄想をして3本ほど頂いてきた。
 種小名の fluminensis は「リオ・デ・ジャネイロの」という意味だそうだ。南米からの外来種なのでそうつけたのかな?(面倒くさかったのかな?)
 日本へは昭和初期に園芸植物として渡来した後、現在では野生化しているという。
 名前のように常緑である。 茎は横に這い1メートルくらいに伸び、節から根を出す露草(真愛は、蛍が飛んでいる様に見えたので蛍草と呼んでいた。)と同じだ。
 別名は野博多唐草(ノハカタカラクサ)だ。野原に咲き、外来種なので唐草というのも分かるが、博多が付いたのはどうしてだろう?
 真愛の妄想は広がる。
 我が家の地名・大字は、「福岡」だ。
 ちなみに字は、花ヶ谷。
(この地名が気に入っている。)  
 「福岡」=「博多」
 この地で博多唐草が群生したのには、何かがある!
 お話のネタになりそうだった。
 
 露草(ツユクサ)や紫露草(ムラサキツユクサ)と同じ仲間なのでよく似ている。
生育地は、庭や人里近く
植物のタイプは、多年草だというが、
昨年も一昨年も見ていない。
ここに越してきてから、こんなに群生しているのは初めてだ。

 白い花を描くことが大好きな真愛にとっては、夢のような世界が広がっていた。
 白い花の中に分け入って、この杉林の奥に行ったら「亡くなった厚洋さん」に会えるかもしれないと、ふっと思った。

 大きな美しい花も嫌いではない。
 泰山木の花も牡丹や芍薬も、百合の花も好きだ。しかし、大きな花がたくさん咲いていても可愛くは無い。 (凄いとは思うが)
 小さな花が一輪咲いていると可憐だし、かわと思う。
 真愛は、小さな花が群れなして咲いていることに心奪われる。泣きたい程にその中の一輪が愛おしく思う。
 「一生懸命」という姿が愛しいのかもしれない。「皆んな、頑張ってる」ことに自己投影するのかもしれない。

 人間だって群れて生きているんだ。
   可憐で愛しいはずなのだが
        なぜそう思えないのだろう。

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります