愛しい人の誕生日
今日は、愛しい人の誕生日。でも、彼は2年前に一人で逝ってしまった。
「竹鶴の17年物」も「山崎の12年物」もプレゼント出来ない。
「丸缶のピース」も「刻たばこ」も渡せない。
「和装・門」のスーツも着てもらえない。
真愛の作った「イクラの醤油漬」も
厚洋さんの喜ぶ顔が見られない。
「ありがとう。」って、抱いてくれる厚洋さんがいない。
亡くなったその年は、二人目の孫が生まれるので、息子の家に行き、上の子の子守りをしていた。優しい嫁なので、真愛と厚洋さんの話をたくさん聞いてくれた。
息子は、「お父んの代わりに」って、飲めないお酒を飲んでくれた。
そして、彼の誕生日に嫁は産気付き、翌朝、二人目の孫が生まれた。
「死と生」を目まぐるしく体験して、「死ぬ事とは、生きる事」と見つけた。
去年は、ホームスティするマレーシアの子を迎え入れるために、バタバタと部屋の模様替えをしていた。
みねこ先生に本を作ってあげたいと思いつき「紅の想ひ」のイラスト描きと短歌への書評も書いていた。(みねこ先生は、この2ヶ月後に永眠)
昨年は出版したり、ジャズコン開いたりと厚洋さんに対する思いが走っていた。
日記には、
「厚ちゃんのお誕生日。この日は真愛の幸せが始まる日だったので、これからも毎年、「幸せスタートの日」としてお祝いする事にする。
生きて来ることの凄さ。「産まれ・育ち・出会い・看取る。」こんなに凄い時空を貴方と過ごした稀有な事に感謝です。
他の誰でもなく「真愛」なのです。他の誰でもなく厚洋さんを愛して子を産ませてもらったのです。彼の子が拓だけと言う事が凄いことです。愛しい人の子が子を育てています。
厚洋さん。誕生してくれてありがとう。
産まれて来てくれてありがとう。」と。
泣きながら書いだのだろう。今年もこのnoteを書きながら、ポロポロ涙は止まらない。
で、今年は何をしたかって?
「お墓掃除をしました。」
厚洋さんの実家のお墓は、北海道岩内。真愛の実家のお墓は、東京永代。どちらも遠くてお参りに行き辛い。そこで、毎日いけるように、我が家の近くに作った。(厚洋さんは「墓は、いらない。散骨だ」って言ってたけど…。)
真愛の願いで建てた。
建墓してから一年半、半年は毎日通った。
一周忌が済んでも毎日行った。しかし、「彼がやりたかった事を真愛がやる」と決めてから、真愛の活動が活発になり、週に、2、3回になった。
今年の夏に「お墓の壁に緑の苔が生えてる」のを確認したが、蚊が酷くてゴシゴシ擦る掃除はしなかった。
このコロナ禍の中、3回忌はお寺で、一人だけの法要だった。
お墓参りに行くたびに(嗚呼!苔取りの掃除をしなくちゃ。)と思いながら、今日まで来てしまった。
今月の予定を書き出す時に、「何があってもお墓掃除」と書いていた。今日やろうと決めたのは、先週の事だ。
「厚洋さんのお誕生日に何もしてあげられない。でも、お洋服の代わりにお墓の掃除はできる。」「お墓屋さんも言ってたこと。亡き方の身体を拭くようにタオルでお水で拭いてください。」
病院で、厚洋さんの身体を良い香りの清拭剤で吹いてあげたように「お身拭い」をしよう。
「雨が降っても、彼の誕生日にやる。」と決めた。
本日は晴天なり、厚洋さんが待っていてくれたのかもしれない。
掃除スタート。「優しく!」なんて拭いていたら苔は落ちない。
鏡面仕上げのところはタオルで拭いて直ぐに綺麗になるが、荒削りのままのところは、「痛っ!オイオイ、もっと優しく出来ないの?」って厚洋さんの声が聞こえそうなほど、力一杯、何回もゴシゴシ、シュシュと擦った。
2時間半。
苔と大格闘の末、建墓仕立ての時のようになった。
今日は亡き夫の誕生日。
ケーキを買ったら真愛本人が太るので、彼が真愛に作ってくれたフレンチトーストを焼いて可愛くトッピングしよう。
家に帰って来るとプレゼントが届いていた。
厚洋さんと従兄弟同士になる北海道のyasuyukiさんから「後志(しりべし)の四季」というカレンダーが届いた。
Yさんは、水彩画を描く。厚洋さんが亡くなってからのご挨拶の中に「彼の北海道の絵」が数枚入っていた。厚洋さんが好きだった積丹の絵もあった。(今でも、厚洋さんのコーナーに飾ってある。)
その彼の絵がカレンダーになって送られて来たのだ。
最高のプレゼントだった。
何気ない日々の中で、沢山の幸せに包まれて生かされている気がする。
私の人生なんて、宇宙の営みの中では「瞬き」にすらならない。でも、その瞬きの中で沢山の幸せを感じて生きる事が出来る。
真愛は、幸せに包まれている。
去年の日記と一緒だ。
この日は、厚洋さんの誕生日。
真愛の幸せが始まる記念日。
厚洋さんに初めて教えてもらった、そして、いつも作ってくれた「甘いフレンチトースト」に蝋燭一本立ててお祝いをした。
「ありがとう。
生まれてきてくれて、
ありがとう。
真愛を選んでくれて、
真愛の幸せのスタートの日。
おめでとう。」
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります