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秋の日
こんな穏やかな秋の日は、1ヶ月ぶりである。
見慣れた隣の家が、知らない国の可愛い家に見えるのは、秋の穏やかな日差しのせいだと思う。
ホトトギスも咲いた。
柊の花芽がまん丸く青い。
雨の日だって音がないのだが、晴れた日の音のないのは優しい。
延びてきた日差しが部屋の中を暖かくしてくれる。
「秋桜」という歌があるが、まさにこんな日だったのではないかと思ってしまう。
こんな穏やかな日は、もう少し…。
そう思う。このひだまりの中で、一拍一拍衰えていく真愛の心臓に
「もう少しだけこの世に留まりたい。」
人間とは本当に自分勝手生き物で、秋の長雨が続いた時には、晴れが欲しいと言い、
夏の旱が続いた時には、雨が降ればいいのにと思う。
こんな勝手なものがたくさんだから、神様が面倒くさくなって
「1ヶ月分も降らせればいいのか?」
「めんどくせぇなあ。
今度は晴らせろって?
自動切り替え!晴れ!」
って押して、そのまま忘れて日照りになっちゃうんだな。
人間が身勝手すぎるんだ。
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🎶いい日度たち 羊雲を探しに
父が教えてくれた歌を道連れに…♫
プールで背泳ぎをしていると、青空の鱗雲が一緒に動いて来た。
ワンストロークでグンと進む雲。
面白い様に泳げる。
魚は空が見えないが、ラッコなんかはきっといい鱗雲を見ながら爽やかに泳げるのだろうなあ。
(あんな鱗の魚がいたっけな?
いつ会ったかな?
今日は厚洋さんが好きだった鯖の一夜干し
を食べよう。)
以前、真愛が背泳ぎが上手になった事を厚洋さんにいうと
「おう!
お前似てるよな。ラッコに!」
って言うから、(わっ!可愛いってこと?)と思っていると、
「ラッコってさ。寒い所にいるだろう。
だから、脂肪を蓄えないといけないんだって
凄い大食いなんだそうだ。
大好きな牡蠣なんかをお腹の脂肪をポケット
代わりに折りたたんで、溜めてるんだ。
食うためには賢いな。
まさにお前だろう?」
「いいんです。
可愛いから何をやっても
許せます❣️」
と言うのが精一杯の抵抗だったが、今日、ラッコが見ていた空を見た。
可愛いラッコ。
実は陸で暮らすイタチの仲間。顔や体型がどことなく似ているが、厚洋さんが言うように脂肪がついてポッチャリ体型。
仰向けになって水に浮かぶ陸上の生き物の仲間。
毛づくろいをしたり、バスケットをしたり、お腹の上の石で餌の貝殻を割って食べる愛らしい仕草は、厚洋さんも好きだった。
水族館にラッコを見に行ったこともあった。
ラッコは1日に体重の20~30%の量の餌を食べる大食漢。それでも皮下脂肪が不足するのは体温維持にエネルギーを消費しているということ。
好物はウニ、エビ、アワビなど。
泳ぎが苦手なラッコは、素早い動きをする魚などを捕ることができないので、あまり動かずにすむ貝類などを好むという。
厚洋さんが言ったのか記憶は曖昧なのだが、「ラッコっていいよな。
俺の好きなウニ・ボタンエビ・アワビ、牡蠣
毎日、贅沢なつまみだよなぁ。」
やっぱり厚洋さんが言ったのだ。
その翌日。これ見よがしに、
「ラッコの餌」
と言って、おつまみに結構なお金をかけて並べた気がする。
なんだかんだいいながら、二人で戯れていたんだと思い出した。
長いこと一緒にいられたのは、厚洋さんのちょっとした真愛の言葉に対する反応が面白かったからかもしれない。
秋の日にラッコになった気分で泳ぎ、厚洋さんを思い、帰りに鯖ではなく秋味(紅鮭)を買って帰ってきた。
また、明日から寒くなるという。
女心と秋の空。
男心も秋の空。
ラッコの様にクルクル回って、定まらない
秋の日である。
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります