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結婚記念日

 4月29日は、結婚記念日であった。
 2017年4月28日。
“厚洋さんが《むらこし》に行こうって、連れて行ってくれた。明日が結婚記念日って覚えていてくれたんだ。”
 翌、29日
 “厚洋さんがスイカを買ってきてくれた。
 一年目と同じだねと言って笑った。”
と、彼が買ってくれた3年日記に書かれている。
 2018年の記念日には、その年の9月に最愛の旦那様が亡くなるとも知らずに祝っている。
 2019年の記念日には、
“一人でスイカを食べます。
 厚洋さんのお嫁さんにしてもらって
 本当に幸せでした。
 ちゃんと伝わっているのかな。
 病院でいっぱい言ったから、伝わってるね。
 だから、〇〇〇したのだものね。
 今、真愛そのものが厚洋さんみたいになって
 いるのかな。
 もっと文才もくれると良いのに…。”
と日記に書いてある。
 2020年の4月29日には、新型コロナウィルスのための緊急事態宣言下でひとり。
 昨年の2021年は、教え子のMちゃんからのサプライズ結婚式をしてもらって、オイオイと泣いた。
 結婚してからずっと欠かすことなく、結婚記念日をお祝いをしてきた。
 始まりは、このnoteにも書いたが、結婚式の日の事だ。
 花嫁さんの真愛のために
「マコちゃん。喉乾いたでしょ?
 大好きなスイカを控え室に持って行っとくから
 お色直しの時に食べてね。」
と、小学校の同級生が置いてくれた。
 お色直しをして、[さあ、食べましょう。」と控え室に行くと、スイカ🍉は皮だけになり、真っ白いお皿の上にのっていた。
「あっ!スイカ?」
と言うと、
「美味かったよ。
 喉乾いててから…。
   気が効く人がいるんだね。」
「それ。郁子ちゃんが、私のために持って来てくれたスイカ🍉なのに…。」
 花嫁さんは、大好きなスイカを食べられずに泣いた。
 花嫁さんの泣く理由には相応しくないが、食べられなくて悔しくて泣いた。
 厚洋さんは、困った顔をしたが、
「そんなこと知らなかった。
 今度買ってやるよ。」
と言った。
 その後、夏に向かって、西瓜を見るたびに
「食べられなかった。」
と、ぐちぐち不貞腐れた。
 その度に、大好きなスイカを買ってもらった。
 真愛は、地球最後の日に食べる物はスイカと決めているほど好きだった。

 教員時代、職員室で誰かがスイカを食べたら、数時間後でも「誰かスイカ食べた?」「残って無いの?」「食べたかった?」とぐちぐち言うほどだった。
 だから、新婚の夏の終わりまで、厚洋さんは
(まずいことをしたな?)
と思い続けたのだろう。
 そして、1976年の4月29日。
 初めての結婚記念日。
 2人でお祝いをした。
 その時のプレゼントがリボンのついた顔が描かれたスイカだった。
(他にも花や装飾品をもらったし、真愛も厚洋さんにプレゼントを贈った。)
 それからは、毎年の結婚記念日にはスイカ🍉が食卓を飾った。

結婚式のふたり

 結婚記念日と言うと、必ずスイカの話をしたが、去年、久しぶりにマーガレットのブーケについて考えた。
 教え子のMちゃんが写真をみて自分の花壇からマーガレットの花束を作ってくれたのがきっかけだ。
 その当時1975年にはめずらしい「生のマーガレットの花」のブーケだ。
 一般的には、薔薇の花束や百合が流行っていた頃なのに、友達の郁子ちゃんに「マーガレット」が欲しいと言ったのだ。
 郁ちゃんと厚洋さんとが同じ学校に勤務していたことから、真愛の小学校の時からの同級生として参列してくれた。
 聞いてはいないが、手が掛かっていたのできっと高価であったと思う。
 なんで、マーガレットにしたのだろう。
 厚洋さんが、言ったのだろうか。
 真愛が持ちたかったのは、「ライラック・リラ」の花束だ。
🎶花嫁は夜汽車に乗って嫁いで行くの🎶
 厚洋さんが歌ってくれていたので、そちらの方が好きだったはずだ。
 しかし、ライラックは、当時には花木であって、ブーケに出来なかったのかもしれない。

マーガレット

 マーガレットのブーケにしたのは、厚洋さんだと思う。郁ちゃんたちに「結婚のプレゼントは何がいい?」と聞かれて答えたのかもしれない。
 もう、彼には聞けないので、いろいろと考えて見た。
 マーガレットと言えば、花占いに使われた花。
 花びらを使って、
「好き…嫌い…好き…嫌い……」と恋の花占いをした思い出を持っている。
「恋占い」という花言葉がつけられているが、結婚式で「占う」もないだろう。
「愛している…少し愛している…とっても愛している…全然愛していない」と不安だったのだろうか。

 この花は、女神アルテミスに捧げられた花と言われている。
 アルテミスは異母姉妹である処女神アテナに憧れて自身も処女神になったため花言葉は=「貞節」
 その名に恥じぬよう、永遠に処女であることを誓い、従者にも同様の誓いを
求めたことから=「真実の友情」
 しかし、この従者たちが心から愛する者と結ばれたときは快く送り出したことから=「信頼・誠実・真実の愛」

 アルテミス自身もオリオンと恋に落ち、その関係は周りの神々が皆認める程。なので=「秘めた愛」
 ただ彼女の弟であるアポロンだけは大反対だったと言う。乱暴な性格のオリオンが原因で、アルテミスがたてた誓いが破られることを危惧していた。
 そこでアポロンはオリオンを海上に呼び出し、アルテミスにそれを弓で射るように言う。
 男並みの弓の腕を持つ彼女は、自分の力を疑われているのだと勘違いし、遠く離れた海上の的が愛するオリオンだとは知らずに放ってしまう。
【真愛がなんでも頑張って男並みにやっていた
 から…アルテミス⁈】
 アルテミスは死者を蘇らせることができるアスクレピオスに助けを求めるが、オリオンが生きて帰ってくることはなかった。=「優しい思い出・私を忘れないで。」
 彼女の父ゼウスは、オリオンを宇宙に輝くオリオン座に変えて傷ついたアルテミスの心を慰めたといわれている。
 花言葉からは、厚洋さんが選びそうなものはなかった。

白い花

 和名は「木春菊」。
 匂いがキツイので、厚洋さんが選ぶことはない。
 しかし、マーガレットをブーケにしたかったのではなく、「白い花」をブーケにしたかったのだ。
 厚洋さんは真愛の「真っ直ぐなところ」が好きだったと言ってくれた。
 見栄も体裁も考えず、ただひたすらに「厚洋さんが好き」という女の子だった。
 真っ白な無垢な真愛に真っ白な花だったのだ。
 百合の大きさでもなく、薔薇の豪華さでもなく
「マーガレットの白」だったのかもしれない。

 今になっては分からない「結婚式のブーケ」の話だ。
 結婚記念日には、真愛の大好きなスイカと厚洋さんの好きなさくらんぼをお供えした。
 あの日と同じ、29日は、大雨だった。

 今日は、そちらも大雨ですか?
 大粒の雨が涙のように
      冷たく長く降っていました。

ピンクのマーガレット

 なんと、ちょっと頬を赤らめた可愛いマーガレットもありました。
「ねぇ。厚ちゃん。
 どっちも真愛みたいで、
      可愛かったんでしょう?」

マーガレットのブーケとコサージュ

と、下書きをしておいたnote「結婚記念日」
 前日に、尿酸値が高いとお医者様に言われ、息子と相談して、
「甘い物を控えて、減塩して、水をいっぱい飲みましょう。」
と決めた。までは良かったが、真愛はやり過ぎをする。
 水の飲み過ぎで、気持ちが悪くなり記念のお祝いに食べた大好きなスイカとまで吐いてしまった。
「今夜も生でさだまさし」にハガキ投稿をしている。
 それも、結婚記念日に「生さだ」なんて嬉しいので、「お祝いメッセージをください。」と書いた。
 ひょっとしたら読んでくれるかもなんて思っていたが、それどころではない。
 11時45分 嘔吐開始
 0時15分 便器から離れて、シャワーを浴びて
       パジャマを取り替える。
 0時30分  2回目嘔吐。
       トイレに間に合わず、2階で
       ビニル袋の中に…。
               一人暮らしの切なさは、具合の悪い時
 0時50分  もう一度の着替え。
     3回目の嘔吐があったら、セコムを呼ぼうと思った。が、枕を外してO S 1を2口飲んで大の字になってベットにいたら、眠くなった。
 寝たらしい。
「生さだ」の投稿ハガキは読まれなかった。
 録画を見た結果である。

笑ってるよね。

 2022年4月29日の結婚記念日は、吐きまくった。水も飲み過ぎない事。
と30日の日記の欄に書いた。
 笑ってるよね。厚洋さん❣️

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります