見出し画像

MAAちゃんパニック詐欺

 爽やかな秋晴れの朝であった。
 早めに予約してあった歯医者さんに行って、月一回の「歯のお掃除」をしてもらった。
 いつもより早めに起きたので少々眠い。
 そのままプールに行って泳ぐ事も考えたが、睡眠不足・朝食も摂らずで運動したら、かえって身体に悪そうだったので、家に戻りnoteを書き始めた。
 昨日は冷たい秋雨の一日で、咲き始めた金木犀もあまり香らなかったが、今日は気温が7度も上がり、金木犀の香りは咽せ返るほどに流れてきた。

ひと枝

 この金木犀の花が咲き終わったら、道にはみ出ている枝を切り落とす予定なので少々寂しい。
 長く延びた下の枝をひと枝切り取った。
 芳香というのは、気持ちを高揚させたり、落ち着かせたりと不思議な力があるらしい。
 たった一枝の金木犀の花だったが、部屋中に広がり秋になった角度の日差しを背に受けて、その香りの中でnoteを書いた。
 タイトルだけしかついていなかったnoteに本文を書き始めた。
 書き始めて1時間ほどたった頃だったろう。
 留守電になっているガラケーに着信の知らせが入った。
 知らない番号であり+181なので、海外からの着信である。
 国際交流協会でのボランティア活動をしているので、日本語教室に来ている外国籍の方かな?と思った。
 厚洋さんが逝ってからは、家の固定電話も、携帯も留守番電話の設定にしていることが多い。
 厚洋さんがいてもかかってきた詐欺まがいの電話に出ないためのものだ。
 本当に必要に迫られてかけて来たなら、留守番電話にメッセージを残すはずである。
 もちろん、非通知の電話には出ない。

裏側に花がつく

 今日の留守番電話には、電話番号も表示されて、メッセージも残されていた。
「知らない電話には出ない。」
が、基本だったが、学習者さんかもと思って留守番電話のメッセージを聞いた。
【NTTのオペレーターです。
 未納金額があるので、
 次の方法で内容を確かめてください。」
というものだった。
詐欺である!
 最近、この町でも電話による詐欺が横行していて、よく防災無線で注意喚起をしてくれる。
 NTT docomoのSNSにも妙なメッセージがはいる。
 払ってない事はないのに「未納」という。
 おばあさんの真愛であるが、厚洋さんがいる時にも怖い思いをしたので、そんなものには反応しない。
 その時は、オレオレ詐欺が流行ってるいた頃で、
「あっ。俺!俺!」
「あら?!(息子の名前)?」
「そう。(息子の名前)だよ。」
というので、
「あんた誰?
 そんな子知らない!」
というと急いで切られてしまった。
(詐欺撃退!)と勇んで厚洋さんにその事を話すと、
「何やったんだ。
 ちゃんと話聞いてやって、
 電話番号聞いてやれよ。
 それから、警察に電話するんだよ。」
と、自分なら捕まえられたのにって顔をされた。
 厚洋さんが居れば落ち着いて対応する事も出来るが、やはり怖くなってしまったので、すぐに留守番電話を消去してしまった。
「しまった!」である。
 そのままnoteを書いたが、どうも落ち着かない。
「詐欺まがいのことがあったら、
 警察署に連絡をください。」
と後方無線は呼びかけている。
 我が街の警察署に電話をした。
 やはり動揺している自分がいた。
 警察署のオペレーターに繋がるのだが、そこですぐに話を始めてしまった。
「すみません。
 ここはオペレーターなので、
 係の者にお繋ぎします。」
 警察署も詐欺も《オペレーター?》なんだと思いながら、数秒待つと
「生活安全課です。」
という。
 そうだよね。
「交通課」「警務課」「地域課」「刑事課」なんて色々あるのだから、オペレーターが必要だと思いながら、担当の人に話をした。
 海外からの不信電話が留守電に入っていたこと)気持ち悪いので警察に通報したことなどを話した。
 丁寧にしっかりと話を聞いてくれてちょっと小太りのような声の方だった。
そして、最後
「電話をかけてくださり、ありがとう
 ございます。
 お近くの方にも、注意喚起のために
 お話ししてくださいね。
 あっ、で宜しければ
 携帯電話の番号教えてください。」
「へっ!
 携帯電話の番号ですか?
 言うんですか?」
「あっ!
 いや、気持ち悪かったらいいですよ。」
 警察官の名を騙って騙す詐欺もあると聞いていたので、つい言ってしまった。
 真愛がムッとした言い方だったので、相手もムッとした対応だった。
 はたと気付いた真愛。
「ありゃ!御免なさい。
 私からかけた警察だから
 間違い無いんですよね。笑笑!」
 停滞電話の番号や住所を伝えた。
「ありがとうございます。
 でも、良いんですよ。
 僕、よく間違わられるんです。
 実行犯に!
 身分証明書見せても、
 なかなか分かってもらえなくてね。
 人相悪いんですかね?」
と、言われても見えないので、否定できない。
「でも、そのくらいで良いんです。
 警察官も弁護士も市役所職員も
 みんな疑ってかかってください。
 詐欺に遭わないことが大切なんです。」
 なんだか、切ない話になってしまった。
「でも、ここに電話して良かった。
 不安なことがちょっと楽になりましたもの
 ありがとうございました。」
 電話の向こうの警察官の方も嬉しそうに
「こちらこそ、ありがとうございました。」
と言ってくれた。

甘い香り

 その日の午後3時。
 プールに行くためにクルマに乗ろうとすると
防災無線から放送があった。
【こちらは、防災君津君津警察署です。
 当地域にNTTを騙る不信な電話が
 かかってきています。
 不信な電話があった時には、
 君津警察にご連絡ください。】
 ー 真愛の事だ! ー

 夕方息子にこの話をLINEで送った。
《お母ん。偉い!》と褒められた。 

 詐欺なんてなんでやるんだろう。
 心が痛まないのかな?
 引っかかる人がいるから、面白くて辞められないのかな?
 お金がなくて苦労しているのかな?
 人が手放して人を信じられる世の中って、あったのかな?
 これから来るのかな?

ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります