流れたる 柚子の香静か 長い夜
冬至の夜です。
雑学博士の厚洋さんは,「話のネタ」本に四季折々の日本の行事(風習)を書いた。
結婚する前から、真愛は母から「母の育った所の風習・言い伝え」教えてもらい、実際にやっていた。
貧乏でお金がないにも関わらず、「菖蒲湯です。」「柚子湯です。」と季節のお風呂を沸かしてくれた。
他にも「蓬湯」「桜湯」「大根の葉湯」「桃の葉湯」「ドクダミ湯」「菊湯」があった。
真愛の皮膚が弱かったので、
「汗疹避けの桃の葉湯」
「モグサの効能があるから蓬湯」
「色が白くなるからドクダミ湯」
「入浴は七病を除き七福を得る」と言って、お風呂に入ることを大事にしていた。
厚洋さんもお金もないのに、「小原庄助さん」だった。
♫小原庄助(おはらしょうすけさん)さん
なんで身上(しんしょう)つぶした
朝寝(あさね) 朝酒 朝湯(あさゆ)が
大好きで❤️
それで身上つぶした
ああ。もっともだ もっともだ♪
「会津磐梯山」と言う民謡だ。
朝寝は真愛の得意技。
朝風呂は厚洋さんから教わった。
厚洋さんは、朝シャンが流行る前から「朝湯」「朝シャン」だった。(50年前)
そんな二人だったから、季節のお風呂は大好きで写真まで撮ってある。
ただ、柚子湯の時は
「男は滲みるんだなあ。
真愛には分からないだろう?」
と言いながら、真愛のそこら中に柚子の汁をつけてきた。
真愛だって、ヒビやちょっとした擦り傷には
飛び上がるほど痛い。
だから、やり返した。まだ、拓が生まれる前の事だ。
お風呂の湯気と一緒に噎せ返るような柚子の香りと笑い声。
冬至の長い夜も長く感じなかった。
今夜は冬至の長い夜。
まずは、カボチャのスープと卵ウインナー焼き・胡瓜の麹サラダ・抹茶ジュース。
おひとりさまディナー!
厚洋さんが元気な時には、柚子湯に入る前には、「カボチャ尽くし」のディナーだった。
カボチャのコロッケ・カボチャのスープ・パンプキンパイ(他にも大好きなイクラの醤油漬け・キャベツと鮭の切り漬け・メフン・・)
「お前は、限度ってものを知らない。
冬至だからって、カボチャだらけじゃ
ハロウィンと同じだろう?」
と言うから、翌日も
カボチャの煮付け・ほうとう鍋・カボチャの天ぷらを作ってあげたのを思い出す。
「イジメか?
カロテンで目まで真っ黄色になる。」
って怒っている厚洋さんを見るのが好きだった。
厚洋さんも真愛を結構いじめたけど、真愛も彼をいじめていたんだなあと思った。
本当は、布袋に柚子を入れて湯船に入れるのだが、おひとりさまだから、
「そのまま入れちゃえ!」
柚子って、そのまま何もしなかったら香らない。割っても香って来ないが、
柚子に触った指が、キラキラした香りを放ってくる。柚子の皮の表面を触れば触るほど、思い出と一緒に柚子の香りに包まれる。
思い出が触って欲しいと言ってるようだった。
やっぱり、夜が長い。
ー長い夜 静かに柚子の香 流れたりー
ありがとうございます。 愛しい亡き夫厚洋さんに育てられた妻「真愛」として、読み手が安らぐものが書ける様頑張ります