見出し画像

#13 惚れてんだから仕方ないよね

前回の続き。


今を大切にします、と言った恋人。

「〇〇ちゃんがそう思うなら…そうしよう」

「ブロックします」

「本当に大丈夫?」

恋人が元彼とのLINEの画面を見せてくる。
僕は画面をスクロールする。
さっきの言葉に嘘はなかった。


恋人が元彼に送る言葉を見せてきた。

「これでいいですか」

「うん、大丈夫」

「これでブロックすればいいですね」

ここで僕の変な情が出てしまった。

「あの……返事気にならない??」

「まあ、それはそうですけど…
 たぶん『そうなんだ、よかったね』
 くらいしか返って来ませんよ」

「じゃあ返信来たらにしようか」

これで恋人がちゃんとブロックするか、
トーク履歴を消すかは恋人のみぞ知る状態になった。
今ここでブロックして削除してくれたほうが安心なんだけど、僕が変に優しくするから。
まあ、いっか。


「元彼は美化されがちなんですよ」

そう言う恋人。
僕にはどうしようもできないんだ。
元彼がくれたプレゼントも部屋に残っている。
それを捨てればいい?
そんなことをしたら僕が醜化するだけだ。
決めるのは君なんだ。
捨てる辛さは僕も知っている。


「自分でもなんでなんだろうって思うよ
 なんで許しちゃうんだろうって
 馬鹿なのかなって」

なんでなんだろうな。
こんな不安を天秤にかけても君を離したくない。
答えは自ずと出てきた。

「まあ……惚れてんだから仕方ないよね」

「急に口説かないでください笑」

「読んでる漫画にいい言葉があってね
 なんだっけな」

「忘れてるじゃないですか笑」

「『惚れたら全部"負け戦"だ
  情熱しか武器はない』  これだ」

「だから俺はずっと負け戦なんだよ」


「俺にも悪いところはあってさ」

「趣味に干渉しても何もいいことはない
 そう分かってるんだけど
 なかなか割り切れないこともあって」

「おやすみって返信が返ってこなくても
 夜遅くまでゲームしてるんだろうなって」

「すぐに返信が来なくても、ゲームの人とは頻繁にやりとりしてるんだろうなって」

「そう思ってもやもやしてしまった」



「確かに遅くまでゲームはしてます、
 1時半とか」

知ってる。

「だから俺も大人になれるようにするよ」


時刻はもう4時半。
ベッドに戻る。

「ゆっくり寝な。
 俺は座椅子で寝るからさ」

僕は恋人の頭を撫でて座椅子へ向かった。

少し胸が楽になった。
言いたいことを言えた。
でも、これからなんだ。
まだ何も終わっていない。
何もかも、これからなんだ。
君の気持ちはここにない。


続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?