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#1 旦那様って呼ばれた

5/13(土)

玄関のドアを開けて中に入ると、すぐに恋人が抱き締めてくれた。

「可愛いよ」
僕はすぐに恋人を甘やかしてしまう。

部屋に入って会話をする。
恋人が一緒に食べたがっていたお好み焼きをお昼に食べるか夜に食べるか相談して、夜に食べることになった。

お昼はつけ麺屋に行くことにした。
恋人が一緒に行きたいと言っていたお店。
僕は車の荷物を部屋に運び入れた。


車で20分。つけ麺屋に着いた。
人気店だから駐車場はほぼ埋まっていた。
お店の前には三人掛けの長椅子が一つ。
家族連れとご婦人二人が順番待ちをしていた。

鼻の短い庇の下に僕らも並んだ。
家族連れが店内に入ったので長椅子が空いた。
ご婦人一人が座り、恋人も座った。
座るスペースが一人分空いている状態だ。

すると、座らなかったご婦人が
「旦那様もどうぞ〜」
と席を譲ってくれた。

一瞬、間があった。
恋人は「まだなんです笑」と笑い、
ご婦人も「一番いい時ね〜」「確かに若く見えますね〜」と笑ってくれた。
僕は「大丈夫ですよ」と譲り返し、ご婦人が椅子に座った。

僕は椅子の横にしゃがんで、恋人と目線を合わせた。

はたから見たら夫婦に見えるんだね。

この前は学生に間違われたのに振れ幅が凄いですね。

恋人

ほどなくして順番が回ってきた。
僕はつけ麺を、恋人はラーメンを食べた。
美味しかった。




食べ終わった後はイオンに向かった。
向かう途中、

●●さん、さっき「旦那様」って呼ばれてきっとニヨニヨしてる。

恋人

もちろん嬉しかったけど、どちらかと言うと緊張してた。〇〇ちゃんがどう答えるのか、どう思ってるのか分からなかったから。

私はニヨニヨしてましたよ。

恋人

それを聞いて俺も今ニヨニヨした。

恋人はニヤニヤじゃなくてニヨニヨと言う。
ニヨニヨ。




ニヨニヨした二人はイオンに着いた。
映画「銀河鉄道の父」を観た。

宮澤賢治の父、宮澤政次郎のお話。
宮澤政次郎は岩手生まれの質屋。

僕は青森の中でもほぼほぼ岩手寄りの地域出身なので、宮澤賢治はゆかりのある人物だった。劇中の訛りも懐かしい気持ちで聞いていた。

父の喜助が痴呆になって亡くなり、
長女のトシが結核で亡くなり、
長男の賢治も結核で亡くなる。

恋人も僕も涙を流しながら観た。


観終わった後は、僕の夏の寝巻のズボンを探した。いいのが見つからなかったので見送り。

帰ろっか。

出口に向かう途中で恋人が言った。

エスカレーター降りる時いつも前にいて、
上る時は後ろにいるの気づいてましたよっ

恋人

こういうのに気づいてくれるって嬉しい。
あたりまえって思わずに感謝を言葉にできるのが素敵。


二人ともお腹があまり空いてなかったので
お好み焼きは翌日の夜に行くことにした。
スーパーで食材を買って帰った。


続く。

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