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#1 こうなること分かってた

15(金)夜、恋人からのLINE。


こうなること分かってた。
とうとう来ちゃったか。

自分の人生から恋人がいなくなる。
恋人は僕の心にすっと入り込んで、
なんの違和感もなく居座っていた。
一緒にいていつも落ち着いていられた。
本当に気を遣わずにいられた。
優しくて可愛くてスタイルがよくて、
僕にはもったいないくらい素敵な人だった。

こんな素敵な人がこの先の人生に現れるだろうか。
僕は今後の人生の大変さにうんざりした。


昔使っていたマッチングアプリを入れてみたが、見知らぬ女性の顔をいくつか見て、早々にやる気をなくした。
アプリにはいい思い出がない。アプリで過去2回女性と付き合ったが、どちらも大して好きになれずつらい経験に終わった。

僕はベッドに身を放り投げた。
ああ、そう簡単に見つかるはずがないのだ。
そう簡単に見つかってたまるか。


明日僕はフラれる。
それを分かって片道3時間の道を行く。
最後までいい男でいたい。
だからちゃんと寝て明日に備えなくては。

そう思ったけど全然眠れなかった。
意識が飛んだのはほんの30分程度だった。

とうとう3時になってしまった。
僕は諦めて支度をして出発することにした。

新しく買ったばかりの服と靴を着る。
君が好きそうな服。
この服もっと君に見せたかった。


午前4時過ぎ、静かな住宅地でエンジンがかかる。曇りだから朝焼けはなく辺りは暗い。

ガガガSPとWeezerを聴きながら走る。
僕は今までいろんなことを考えて、想って、何度もこの道を走ってきたけど、今日はすっからかんだった。ただただ終わりを感じるだけだった。

1時間ほど下道を走って高速に乗った。
back numberを流し始めた。
歌詞が心に冷たく溜まっていく。
途中君がバイトをしていたSAに寄った。
なんとなくそこから見える景色を眺めた。
なんとなく、なんて嘘ばっかり。
もう見られないかもしれない。


続く。

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