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#11 どうしたら安心させてあげられますか…?

前回の続き。


恋人が元彼とLINEをしていた。
ああ、僕の真の相手はゲームのフレンドさんじゃなくて元彼だったんだね。

『半透明人間』は元彼であり、君だったんだ。
きちんと姿を消せないのは元彼であり、君だったんだ。


君がシャワーから戻ってきた。
君はベッドに横たわる。

僕はベッドに腰掛けている。

「どうしたんですか?笑」

「自分を落ち着かせてた」

「落ち着かせてあげますか?笑」

恋人は僕を骨抜きにしてくれそうな言葉を発していた。
通常ならとても嬉しい言葉なのだが、正直そんな状況ではなかった。そんなことで今の僕の気持ちが誤魔化されては困るのだ。

「いろいろ考えてた。自分の幸せのこととか。
 俺って何も考えてないように見える?」

「そうは見えないです」

「ちょっと休んでから寝るね」

僕は居間へ行き、座椅子に座った。


恋人と仲直りできたことはとても嬉しいことだ。

恋人は元彼と連絡を取っている。
僕がこのまま知らないふりをすれば、
僕と恋人の関係は続いていく。

でも元彼との関係も続いていく。
このまま正気でいられるか?

いや、それさえも飲み込んでしまえばいい。
でも、それさえも言えない僕は本当に幸せなのか?


こんな堂々巡りをして、
ふーーっと溜息が何度か出る。

見かねた恋人がベッドから起き上がってこちらに来た。

「どした?座椅子座りな」

僕は座椅子から降りて恋人に譲った。
恋人は言った。

「この度はっ、ご迷惑おかけして、
 大変、申し訳ありませんでした」

恋人が可愛げを混ぜながら謝ってきた。

「ほんとだよ笑」

僕は思わず苦笑する。
今僕が悩んでいるのはそれじゃない。
ああ、君はまだ何も分かっていない。


「〇〇ちゃん、今落ち着いてる?」

「はい、落ち着いてます」

それなら多少は理性的に判断ができそうだ。
僕は恋人に元彼のことを切り出すか否か迷いながらも、他愛のない話をし始めた。


「会うことで伝わるものってあるんだね。
 言葉と文字だけじゃ伝わらないものが」

「言葉なんていくらでも嘘つけますからね」

はあ、なんて怖い言葉。
君が嘘をつかれたからこう言うのか、
それとも君が嘘をついてきたからこう言うのか。
恋人の言葉が何も分からなくなる。

僕はいろんな話をしながら、外濠から徐々に攻めていった。恋人が僕の言葉に気づいて、そちらから打ち明けてくれないだろうか。でもそんなことはなかった。


やがて恋人が言った。

「どうしたら安心させてあげられますか…?」

言ったな…??
どうしたらって……
そんなことを言う君は悪いやつだ。
君は本当のことを黙っている。

「今は頑張りたいなって思ってますよっ」

そう思ってるんだ…
君はこれから僕が言う言葉に耐えられるのだろうか。


続く。

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